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編集長ムラカミに物申す! モノ作りのあり方とステートメントの多様性

 「WWD Japan.com」が5月にスタートした登録制のメールマガジン「エディターズレター」をご存知でしょうか?「まだ」という方は、ぜひ今すぐ申し込みを。本紙とウェブの2人の編集長と副編集長が執筆を担当し、今後続々と書き手が増える予定です。このエディターズレター、実は“内部(編集部内や社内)”に向けたメッセージ性が強いのでは?と感じており、毎朝の僕の楽しみともなっています。

 以下は、ニューヨーク・コレクション取材中の「WWD Japan.com」編集長ムラカミが発信した9月12日付のエディターズレターからの一節です。タイトルは「クオリティーよりステートメント」で、「『日本に数台の、現存する織機で』とか『吊り編み機でゆっくりと』なんて話は正直、もう以前ほど魅力的に聞こえません。『で?』と聞き返してしまう自分がいます」とつづり、続けて「それを追うあまり没個性的になるくらいなら、違う何かを見つけた方が賢明だと思うのです」とムラカミは書いています。

そのうえで、工場取材好きを自負するデニム担当の僕からも一言――「ステートメントよりクオリティー」だってあってしかるべき!

 確かに“古い機械で作ったからエラい(スゴい)”は極めて限定的なエリアでしか認められない価値でしょうが、認める人がいることは事実なわけで、そこにはれっきとした商業活動があります。そういう機械を稼働させ続けるために現場ごとにチューンアップがなされ、足りない部品は自作しています。古い機械を調達し、それをメンテナンスする専門職もいます。1999年にスタートした「リーバイス(LEVI'S)」のセルフリバイバルライン“リーバイス ビンテージ クロージング(LEVI'S VINTAGE CLOTHING)”の立ち上げ時、当時のディレクターは「往年の糸やミシンはもちろん、買えるものなら空気だって買いたい」と話しました。そのときはクレージーだと思いましたが、今では気持ちが理解できます。

 8月に発売したデニム特集では、本澤裕治ドクターデニムホンザワ社長に話を聞きました。本澤さんはジーンズブランド「レッドカード(RED CARD)」のプロデューサーも務めており、同ブランドは2009年のデビュー以来10年連続で2ケタ成長を続けています。ダウントレンド真っただ中の国内ジーンズ業界において独り勝ち状態。そんな本澤さんの話で印象的だったのは、「日本のモノ作りを今一度見直し、あらためて体系化しなくてはいけない」というものでした。“メード・イン・ジャパン”や“岡山(児島)ジーンズ”といった言葉が独り歩きし、無策な量産の結果生まれた粗悪品が市場に流通しています。昨今流行りの“サステイナブル”のように言葉だけが先行して、実たる部分は形骸化しているんです。ついでに言わせていただけば、サステイナブルの分野でも“錬金術化”を図る輩がおり、そのあたりは11月25日発売のサステイナブル特集で、現在ロンドン取材中のサステイナブル担当が一刀両断にしてくれると信じています。

 閑話休題。「リーバイス」と「エドウイン(EDWIN)」、国内外2大ジーンズブランドを渡り歩き、業界をリードし続ける本澤さんが憂えて放ったのが前述の言葉でした。真摯にモノ作りを行う工場をしっかりと認め、そこで働く人も幸せになれるよう前進しようというもので、それこそサステイナブルだと思います。

 もう一つ心に響いたのは「ジャスト・ジーンズ」という表現。たかがジーンズ、されどジーンズ。名称だけが異なる、似たような素材や加工が多過ぎないか?そもそもこんなにたくさんのジーンズブランドが必要なのか?大量生産されたジーンズは、当然大量廃棄の対象になります。「オリジンたる『リーバイス』よ、もっとがんばってくれ!」といった声は、デニム特集を通じて各方面から聞こえました。ひとしきり憂えた本澤さんが、「これ見てよ」と笑顔で大きなバッグから取り出したのは自身がプロデュースするアイテムではなく、「リーバイス」の“501”でした。それも「アメリカの量販店で普通に売っている」59ドル50セント(約6420円)の“501”。「皆、頭でっかちになり過ぎ。だから今は、こういうシンプルなものをはきたいんです」と本澤さん。「ずっとはけるように」と、バッグの中にはサイズ違いの「普通の“501”」が何本も入っていました。

 大量廃棄させないためには、“的確に”モノ作りを行う必要があります。「ジーンズは『リーバイス』だけが作ればいいし、Tシャツは『ヘインズ(HANES)』に任せておけばいい」と極論を唱える人もおり、あながち間違ってもいないなと思います。一方で、それはファッションとは真逆の考え方でもあります。答えは一つではないし、僕らは賢者ではないので、たくさん間違いを犯しながら答え(もしくは答えらしきもの)に近づかなければなりません。それがメディアの役割であり、現場としての面白みでもあります。ムラカミはこう思うし、ミサワはこう思う――そういう多様性も必要でしょう。本当は吊り編み機についても触れたかったんですが、ますます長くなるのでこのへんで筆を置きます。言いたかったのは、エディターズレターをよろしくってことです(笑)。