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「ユニクロ」のファストリが全ての人にジーンズを届けるために捨てたもの

 「WWDジャパン」8月5&12日合併号は、デニム特集だ。今年はジーンズの生まれ故郷であり、作業着からファッションへ生まれ変わった地でもあるアメリカ西海岸を取材した。取れ高満点ゆえアウトプット時に大いなる生みの苦しみを感じたのだが、印象的な取材について編集後記として紹介したい。

 10~20代に「好きなジーンズブランドは?」と聞くと、返ってくる答えの筆頭は「ユニクロ(UNIQLO)」だ。同ブランドはいまやSPAの枠組みを飛び越え、いちジーンズブランドとして認知されている。

 今回のデニム特集では、そんな「ユニクロ」の“生まれるところ”であるロサンゼルスの研究・開発施設「ジーンズイノベーションセンター(以下、JIC)」を取材した。JICの責任者である松原正明最高執行責任者に同施設の特徴を聞くと、以下の3つを挙げた。

1.手こすりの廃止
2.ブリーチ剤など薬品スプレーの廃止
3.天然石を使ったウオッシュの廃止

 いずれも従来のデニム加工には欠かせないものだ。「1」には重労働が欠かせず、「2」は環境負荷が大きく、「3」については「天然石は削れて粉状になり、それを廃棄物として捨てなくてはならない。当然、新たな石も買わねばならず、そこでJICでは人工石を使うことにした。これなら半永久的に使える。実際、ここにある石はJICがスタートした2016年から使っているものだが、いまだ現役だ」と教えてくれた。

 「1」について、レーザー加工だけではのっぺりとした仕上がりになってしまうという声もあるが?と聞くと、「われわれがレーザーを使うのは、単に時間短縮や経費削減のためではない。JICでは日々レーザーのテストを行っており、リアルな経年変化感や濃淡による3D感を出すにはレーザーが最も適していると判断した。もちろん価値観の違いがあるので、われわれの答えだけが正解であるとは考えていない」とした。

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 訪米前、最も聞きたかったのは驚きの低価格を実現するための秘訣だが、「当然コスト意識は高い。『ユニクロ』の場合、店頭に3990円で並ぶことから逆算して利益を出さなければ研究・開発は続けられない。SPAだからできるとも言えるし、このような施設と機会を与えてくれた柳井(正ファーストリテイリング)会長兼社長にも感謝している」と述べた。

 JICの今後については、「環境や労働者にとって“悪い”と感じつつも前進せざるをえなかったのがジーンズ作りの歴史だ。今考えれば褒められたことではないし、かつて僕もそちら側にいた。しかし、それがあったからジーンズには強いこだわりが生まれたとも言える。とはいえ、時代は変わった。いいことはいいし、悪いことは悪い。JICとしてできることはやるし、できるのにやらないということはない。もちろん、やらなくていいことはやらない。全ての人にわれわれの作ったジーンズをはいてもらうため、“ライフウエア”としての可能性を模索したい」と結んだ。