ファッション

お金持ちは百貨店でこんな商品を買っている! 2019年春夏、百貨店で売れたもの Vol.1

 「WWDジャパン」8月26日号は、毎シーズン恒例の“百貨店で売れたもの”特集です。2019年春夏シーズンは、全国で計50の百貨店にアンケートに協力いただき、特集を製作しました。さらに、これまで定期購読者特典だった「ビジネスリポート」(アンケート回答の詳細をまとめたデータ集)が、今回から単独購入できるようになりました!同特集では、百貨店の各カテゴリーの商況を報道していますが、ウェブでは特集担当記者による取材こぼれ話を座談会形式でお送りします!

座談会参加者
三浦彰:「WWDジャパン」編集顧問
益成恭子:ジュエリーやインテリア、インナーウエアの担当記者
三澤和也:時計やデニムの担当記者
五十君花実:百貨店ビジネスリポート特集の担当デスク

五十君:さて、座談会記事1本目は、時計、ジュエリーという高額品担当の記者に集まってもらいました。百貨店の近年の稼ぎ頭は、高額品、化粧品、食品なので、まずはこのカテゴリーがいいかなと思いまして。では三浦さん、19年春夏の市場の振り返りをお願いします。訪日外国人による免税売り上げが減速して、一方で国内富裕層による高額品消費は好調というシーズンでしたが。

三浦:富裕層の売り上げが好調なのは百貨店側の営業努力がすごいんだと思うよ。通常の外商営業と、あとはラグジュアリーブランドが行っている催事(注:近年、歴史的建造物などを借り切ってラグジュアリーブランドが大掛かりな顧客向けイベントを行うケースが激増している)に百貨店顧客を連れていくといった取り組みにすごく注力している。もっとしゃかりきに努力すれば、まだまだ売れるとも思うけど。

三澤:毎年前年をクリアしていくために、あえてしゃかりきにはなっていない、まだまだやれるってことですか?(笑)

三浦:今百貨店で売れているのは高額品と化粧品で、1月の中国の電子商務法施行の影響で、化粧品は打撃を受けたっていうじゃない(注:転売に制限をかける同法によって、それ以前のような大量買いが減った)。化粧品はこの5~6年絶好調だったわけだけど、天井が見えてきたのかな、という感じはする。だからやはり百貨店は時計やジュエリーみたいな高額品を売らなきゃいけないんですよ。

五十君:では具体的に、それぞれの分野ではどんな傾向があって、何が売れたんでしょう。まず時計からお願いします。

三澤:時計も絶好調を脱して、踊り場に達した印象です。販売価格、伸長率共にケタ外れだった「リシャール・ミル(RICHARD MILLE)」(注:平均単価2000万円強の超高級時計ブランド)や、高級時計ブームをけん引した「フランク ミュラー(FRANCK MULLER)」のような分りやすくてエッジの効いたトレンドは鳴りを潜めて、「ロレックス(ROLEX)」や「オメガ(OMEGA)」など憧れの定番ブランドが売れたシーズンでした。一方で、それ以外は売れないというメリハリが際立った。そして、それらの勝てるブランドを維持もしくは獲得するために、各百貨店は“売り場の増床リニューアル”や“直営店(ブティック)化”という“甘い水”を差し出す構図。つまりはブランドの超売り手市場なんです。今回は地方の百貨店も取材したけど、都市部を離れれば離れただけその傾向が強まる印象。

五十君:確か「オメガ」はアニバーサリーイヤーでしたよね?

三澤:うん、今年がアポロ11号の月面着陸50周年(注:「オメガ」の“スピードマスター プロフェッショナル”は、NASAに採用されて史上初めて月面で時を刻んだ“ムーンウォッチ”として有名)で、来年が東京五輪(注:「オメガ」は東京オリンピック・パラリンピックの公式タイムキーパーを務める)と大きな山を続けて迎えるんだけど、こういう売らなきゃいけないタイミングでしっかり結果を残しているって当然といえば当然なんだろうけど、あらためてすごいな!って思いました。

五十君:確かに「ロレックス」は今若い男の子も買うようになっていますよね。これって、キムタク効果で「ロレックス」“エクスプローラーⅠ”が売れた1990年代以来?

三澤:時間はスマホで見ればいいという時期が長かったけど、時計を身に着けるという当たり前がもう一度戻ってきていると思う。トレンドもストリートからクラシックに回帰しているから、その流れもあるんだろうね。様式美としての服装というか。今まで時計を買っていた人たちとは違う層が市場に入ってきているのは確かだと思う。その分、伸長ブランドには低〜中価格帯のものが目立ちました。

五十君:ジュエリーは19年春夏を振り返るとどんなシーズンでしたか?

益成:10月の消費増税を前にしての駆け込み購入があったことと、本物志向が強まっているという点が注目ポイントでした。好調なブランドは、30万~100万円の商品と、1000万円以上のハイジュエリーの二軸が売れています。10万円台などのエントリー商品よりも、30万円以上の商品の方が動きがいい。

三浦:増税前の駆け込みって、あるかねぇ?あんまり感じないけど。ブライダルリングとかはあるだろうけど。

益成:ブライダルは間違いなく駆け込み需要があります。あと、“令和婚”効果でブライダルリングの売り上げがよかったという声も聞きました。それ以外にも、「ミキモト(MIKIMOTO)」のパールなど、“いつか買おうと思っていた定番アイテム”は増税前に必ず売れるみたいですよ。

三澤:高級時計については、増税前の駆け込み需要って聞かないんだよね。14年の5%から8%への増税の時は“何でも売れる”ってバブル状態だったけど、その時に背伸びしていい時計を買った層は、5年後にまた高級時計を買おうとはならないのかも。

益成:外商顧客みたいなお金持ちには、2%の増税とかあんまり関係ないですしね。あと、ジュエリーの今シーズンの話題は、竹内結子さんをはじめとした女優陣がドラマなど着用したアイテムが売れたという点ですね。竹内結子さんが出演したドラマ「スキャンダル専門弁護士QUEEN」で「ブシュロン(BOUCHERON)」の“キャトル”や“セルパンボエム”が売れたという声が多かった。

五十君:ドラマを見て女優が着ている服を買うっていう流れ、最近よくありますけど、30万円台のジュエリーがドラマ効果や女優効果で売れるってスゴイですね。

益成:「メルカリ(MERCARI)」が広がったことで、リセールの市場があるっていうことを消費者が今は認識しています。それで、どうせ買うなら本物となっているのはあると思います。本当に「メルカリ」で売るかどうかは別にしても。

三澤:時計の世界に30代を中心とした国内新客が参入したように、高額ジュエリーも今まで買っていた人以外にも広がっているんじゃない?

五十君:ジュエリーのアンケートでは、令和改元記念小判や東京五輪記念小判など、そういう金製品も売れ筋にあがっていましたよね。

三浦:金製品を買おうっていう富裕層の気持ちは分かるよね。今は株が上がるか下がるか分からない状況で買えない、為替相場も変化があり過ぎて怖くて手が出せない。となると投資の対象は金でしょう。高級時計やハイジュエリー買うのも、そういう投資モチベーションでしょう。

益成:希少性の高いカラーダイヤモンドが売れているのも、それに通じるモチベーションだと思います。アーガイル鉱山が閉山する(注:オーストラリアのダイヤモンド鉱山で、希少なピンク色のダイヤモンドの産出で有名。閉山するという話がある)ということで、百貨店が頑張ってピンクダイヤモンドをはじめとするカラーダイヤモンドを売っているんだと思いますよ。

五十君:希少なものを求めるお金持ちの欲望は尽きるところがないのですね……。百貨店はまだまだアプローチ次第で富裕層の消費をいくらでも深耕できそうですね。

益成:まさにそういった狙いで、伊勢丹新宿本店は4階ジュエリー売り場に、“トレジャーハント”というカスタマーデスクを設けるそうですよ。富裕層が求めるものを、スタッフが世界中を飛び回って探してくるんだとか。突拍子もない、ネットで検索しても絶対出てこないようなものを求める富裕層に対応するんだそうです。たとえばマンモスの牙とか。

三澤:要望がスゴ過ぎる……。求婚者に「世にも珍しい宝物を探してきて」って言った「かぐや姫」みたい(笑)

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