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「モンクレール」初の24時間ハッカソン その中身は?体験した日本代表を直撃取材

 モンクレール(MONCLER)はこのほど、同社としては初めて、ファッション業界でも珍しい、イノベーションのためにアイデアを出し続けるイベント、ハッカソンを開催した。

モンクレールが24時間ブレスト合宿開催 その中身とは?

 “モンクレール・ハッカソン”は、今年最高デジタル責任者(CDO)として同社に加わったIT出身のパオラ・ペレッティ(Paola Peretti)が必要性を説き、レモ・ルッフィーニ(Remo Ruffini)会長兼最高経営責任者(CEO)が後押しして実現。ハッカソンとはソフトウエアの世界でエンジニアリングを意味する“ハック(Hack)”と“マラソン”を掛け合わせた米IT業界の造語で、もともとはプログラマーやデザイナーで構成した複数のチームが数時間から数日間をかけて、マラソンのように集中的に作業して技術開発などを競い合うイベントを指す。レモ会長兼CEOは、「『モンクレール』の戦略はユニーク。独自性のためには、強いアイデアや、それを後押しする仕事環境が求められる。ハッカソンは異なる経験やモノの捉え方を交換することで、素晴らしいアイデアを生み出す実証実験だ」などとコメントした。

 ファッション業界では馴染みの薄いハッカソンとは、どんなイベントなのか?そして、それを開く意味と効果とは?「WWDジャパン」は、日本から同イベントに出席したモンクレール・ジャパンのスタッフを直撃し、その真相を聞いた。

WWD:まず、“モンクレール・ハッカソン”は24時間にわたって開かれたと聞いたが、本当に本当に24時間ぶっ通しで行われたのか?

モンクレール・ジャパン(以下、モンクレール):本当だ。もちろん、寝たらダメ。ウトウトすると、サイレンホーンを手に持つシニアディレクターがやってきて、耳元で大音量をかき鳴らす(笑)。しかし、本当に良く考えられたプログラムだったと思う。出席したのは、各リージョンから10人ずつくらいと、本国イタリアのスタッフで総勢約450人。10人強ずつ計37チームに分かれ、9つのテーマを話し合った。

WWD:9つのテーマとは?

モンクレール:サステイナビリティーから店舗開発、ストアイベント、デジタル施策、それに未来のダウンジャケットまで多岐にわたる。いずれも既成概念を取り払い、未来を考えようというお題だ。私たちは「ダウンジャケット4.0」と名付けられたテーマから、未来のダウンを考えた。今より機能的な未来の素材を想像しながら、「モンクレール」らしいアイデアに落とし込んでいくのがミッション。突飛なアイデアも出てくるが、最後は3カ月後に発表できるプロトタイプも考えなければならない。散々風呂敷を広げた後、眼前に迫る3カ月後の“最初の一歩”に収束させた。ただ一連のアイデアを振り返れば、いずれの分野も3年後、5年後の未来をイメージできる。ディスカッションは始まるたびにカウントダウンが始まり、残り時間がゼロになったらハンズアップ(おしまい)。スピーディーだ。

WWD:ディスカッションは、どうやって進行する?

モンクレール:まず10人くらいのチームの中から、進行役を担うリーダー、書記、リスナー(聞き役)、整理係、写真係などを決めた。これに与えられた時間は、3分だ。時間を区切られると、ディスカッションも飽きない。しかもハッカソンだから、ディスカッションだけでなく情報を操ることも重要。ブレストと同時に、わからないことは即座に調べる作業も進む。昼の12時にスタートしたハッカソンは、朝5時までに意見を集約してファイルを提出すると、とりあえずひと段落。そのあとは、太極拳が待っていた(笑)。

WWD:会場の雰囲気や、食事は?

モンクレール:会場は薄暗いとも、薄明るいとも言える「時間を忘れるような空間」。定期的にスパゲティタイムやワインタイムが訪れ、スパゲティタイムではマンマがパスタを振舞ってくれたが、少量をこまめに食べる感覚だった。太極拳のほかには、ヨガの時間もあった。

WWD:各チームのアイデアは、どうやって評価する?

モンクレール:最後の3時間は、各チームのプレゼンテーション。イベント当日、幾つかのチームにアワードが贈られたほか、全社員の投票によって決まるアワードもある。ただアワードは、参加者のモチベーションのため。経営陣にとっては、各チームのアイデアをどう結びつけるのか、が大事だ。

WWD:初のハッカソンに参加して、率直な感想は?

モンクレール:かなり面白く、意義深いものだった。確かに海外からの参加者は、可哀想なケースだと当日イタリア入りしたから24時間どころが数十時間眠れない参加者もいたが、各国のブランチ(支社)としては、これまで発言できなかったことを取りまとめて表明する大きなチャンス。「言いたかったことを伝えよう」という、チャンスを掴む感覚で望んだ。モンクレール ジャパンも、店頭スタッフを含めると300人弱の大所帯。規模が大きくなれば、社内でのメッセージの共有は難しくなる。そんな中のハッカソン。ジャパン社は店舗からもメンバーを選び、どんな発表をしようか準備を重ねて臨んだ。トップダウンのイベントにボトムアップのアイデアを持参し、それを、皆で理解することの重要性を改めて学んだ。プロセスが見えると、全員が当事者として参加できるようになる。参加したメンバーは帰国後、ハッカソンで得たものを持ち帰り、未来のリーダーシップを担うことが大事。会社としては、皆が「このブランドは、私がけん引している」と実感することが重要だ。

WWD:多様性を求めさまざまなデザイナーとコラボレーションする「モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)」含め、モンクレール社には新しいものを受け入れる、創造しようとする風土が溢れている。その理由は?

モンクレール:その原動力は、レモ会長兼CEOとしか言いようがない。ハッカソンの仕掛け人となったパオラCDO含め、さまざまな人材を引っ張っているし、大企業からの転職者も多い。今、モンクレールには「変わること」「変えること」の面白さを体感している人が集まっている。その中心にいるのは、レモ会長兼CEOだ。パオラCDOも、入社して半年でハッカソンを実現させ、当日も24時間、本人がMCを担当した。パワーとパッションの人が、また新しく加わった。