ビジネス

ヴィクトリアズ・シークレット新CEOに前トリー バーチ社長 低迷するブランドを再建できるか

 米ランジェリーブランド「ヴィクトリアズ・シークレット(VICTORIA'S SECRET)」は、ジョン・ミハス(John Mehas)前トリー バーチ(TORY BURCH)社長を最高経営責任者(CEO)に任命した。就任から2年で11月中旬に突然辞任したジャン・シンガー(Jan Singer)前CEOの後任だ。新人事は2019年初めに適用される。

 ミハス新CEOは、「ポロ ラルフ ローレン(POLO RALPH LAUREN)」に勤めた後、クラブ モナコ(CLUB MONACO)社長兼CEOに就任。その後トリー バーチの社長を2年間務めていた。

 「ヴィクトリアズ・シークレット」を擁するLブランズ(L BRANDS)のレスリー・ウェックスナー(Leslie Wexner)会長兼CEOは11月19日に発表した声明で、「ミハス新CEOは小売りの傑出したスペシャリストだ。彼が『ヴィクトリアズ・シークレット』を新たな成功に導いてくれると期待している。われわれの最優先事項は『ヴィクトリアズ・シークレット』と『ピンク(PINK)』(「ヴィクトリアズ・シークレット」のヤング向けライン)のパフォーマンスを伸ばすこと。そのために新たな視点で、マーケティングからブランドポジショニング、企業内部の才能の発掘、不動産ポートフォリオ、費用構造まで管理できる新たなリーダーを迎え入れた。彼の指揮の下、『ヴィクトリアズ・シークレット』は世界の女性の共感を呼ぶ商品や体験を届けるパワーハウスであり続けることができると確信している」と期待を寄せた。

 しかし、Lブランズの19日の株価終値は2.1%減の34.55ドル(約3869円)で、時間外取引でも4%以上減と下げが続いた。

 Lブランズは近年、アメリカンイーグル アウトフィッターズ(AMERICAN EAGLE OUTFITTERS)の「エアリー(AERIE)」の他、「リヴリー(LIVELY)」や、リアーナ(Rihanna)が手掛ける「サヴェージ×フェンティ(SAVAGE X FENTY)」といった、さまざまなサイズのランジェリーを用意し体形の多様性に応えるアンダーウエアブランドに市場シェアを奪われている。なお、Lブランズの株価は1年間でおよそ4割も落としている。

 19日に発表されたLブランズの8〜10月期決算は、純損益が4275万ドル(約47億円)の赤字という結果になった。また、「ヴィクトリアズ・シークレット」はオンラインと実店舗の合計売上高が同2%減となった。

 売上高減が続く中、PR的ミスも頻発している。同社は8日夜にニューヨークで行われたファッションショーで、多様性が注目される世の中とは合わないキャスティングをしたことからアナリストらに「空気が読めない」と酷評された。さらに同日、Lブランズのエド・ラゼック(Ed Razek)=チーフ・マーケティング・オフィサーが米「ヴォーグ(VOGUE)」の取材に「プラスサイズモデルとトランスジェンダーモデルには全く興味がない」と答えたためにSNSで炎上。インスタグラムで謝罪文を発表することになった。

 この事態に便乗し追い打ちをかけるライバルブランドも現れた。AAからGカップサイズまでをそろえるアンダーウエアブランド「サードラブ(THIRDLOVE)」だ。ハイディ・ザック(Heidi Zak)「サードラブ」創業者は「ニューヨーク・タイムズ(New York Times)」に1ページの公開書簡型の広告を打った。「君たちのショーは“ファンタジー”かもしれないが、われわれは“リアリティー”を信じている。われわれの言う“リアリティー”とは、女性たちは日々ブラジャーをつけて仕事に行き、子どもに母乳を与え、スポーツをし、病気の親を介護し、国に貢献するという現実の生活だ。女性をセクシーとする基準を流布するのはもう終わりだ。われわれが決める番だ」と、Lブランズのラゼック=チーフ・マーケティング・オフィサーのコメントを批判した。

 また、「ヴィクトリアズ・シークレット」は利益が見込めるスイムウエア事業をクローズした他、顧客から人気があったカタログも休止し、ファンを失望させた。一方、世の中のオンラインシフトが進行する中で実店舗は1店舗も閉店していない。ミハス新CEOによるブランド再建に注目が集まる。

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