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仏ファッション誌「ロフィシャル」が独自の仮想通貨発行へ 100億円相当を約50万人に配分

 仏ファッション雑誌「ロフィシャル(L’Officiel)」のベンジャミン・エイメール(Benjamin Eymere)最高経営責任者(CEO)は、同誌と広告主、読者の3者間で利用・取引ができる独自の仮想通貨、テイスト トークン(Taste Token)を発行することを発表した。

 「ロフィシャル」を1950年代から有する同族経営のメディアグループ、ジャル メディア グループ(JALOU MEDIA GROUP)のCEOも務めるエイメール「ロフィシャル」CEOは、1年以上かけて独自の仮想通貨とブロックチェーン(ブロックというデータの単位を一定時間ごとに作成し、鎖のように連結していくことでデータを保管するデータベース)技術をベースとしたプラットフォームの開発に努めてきた。「ロフィシャル」はまず、1億ドル(約114億円)相当のテイスト トークンを約50万人に配分する。

 テイスト トークンの配分対象となるのは大きく分けて3つのグループだ。1つ目は、セレブリティーやプロのインフルエンサー、大きな影響力のある人々、銀行、企業のエグゼクティブレベルの人々などで、このグループには1人あたり5万〜10万ドル(約570万〜1140万円)相当のテイスト トークンを配分する。2つ目のグループはラグジュアリーファッション業界関係者で、それぞれ2万〜5万ドル(約228万〜570万円)相当のテイスト トークンを配分する。3番目のグループは「ロフィシャル」の読者で、1つの質問に答えるごとに50ドル(約5700円)相当のテイスト トークンが配分される他、エンゲージメントや提供したデータによってさら報酬がもらえる。読者は自身のデータを「ロフィシャル」に与える代わりにテイスト トークンがもらえるという仕組みだ。

 さらに、現状セレブやインフルエンサーはブランドや広告主から商品をもらってSNSなどで紹介する際に、広告であることを明示しなければならないが、テイスト トークンならこのルールを回避することが可能だ。セレブやインフルエンサーがテイスト トークンを使って買った商品は実際に“購入”しているため、SNSなどで言及しても広告ではなく、広告と明示する必要もないことになる。

 エイメールCEOが仮想通貨に興味を抱くようになったのは数年前のこと。参加したカンファレンスで講演者が「現金は負け犬のためのお金。なぜなら現金は、人々がどのようにお金を使うのか決められないからだ」と話すのを聞いて、当時は「クレイジーだ」と思ったという。しかし、編集者が欲しくもない商品をブランドから送られて、人にあげたり、売ったりしているようなファッションメディア業界の問題を見るにつけ、ブランドは消費者が何が欲しいか分からず、一方で消費者はタダでデータを取られて広告の対象になっている現状からこのアイデアを思いついた。

 「例えば『ニューヨーク・タイムズ(New York Times)』のサイトでは、われわれ読者は記事を読むのに購読料を払わなければならないが、同時に広告のターゲットでもある。つまり『ニューヨーク・タイムズ』は読者と広告主から二重の収入を得ているように感じる。しかも読者からの注目を得ることでも稼いでいるのだから、おかしな話だ」とエイメールCEOは語る。

 エイメールCEOは独自の仮想通貨を作るにあたり、ブロックチェーンのウェブブラウザーサービス「ブレイヴ(BRAVE)」で利用できる仮想通貨BAT(Basic Attention Token)を参考にしたという。「ブレイヴ」はプログラミング言語ジャヴァスクリプト(JavaScript)の生みの親でもある起業家ブレンダン・アイク(Brendan Eich)が立ち上げたウェブブラウザーサービスで、ユーザーが広告をブロックする機能をオフにすることの報酬として、BATを配分する仕組みを採用している。だが、エイメールCEOは「われわれが報酬を与えたいのは人々の“洗練されたアテンション(注目)”に対してだ」と説明する。

 エイメールCEOがテイスト トークンで実現したいのは、広告主、読者そして「ロフィシャル」の全ての関係者がそれぞれに合った方法で利益を受け取ることだ。広告主には商品の売り上げが伸びなかったとしても、消費者の好みや習慣などについての深い分析を必ず得られる保証があり、一方で消費者は広告主からの質問に答えることで提供する自身のデータや広告へのアクセスの対価として獲得したテイスト トークンを、オンラインでの買い物に使うことができる。

 具体的には、「ロフィシャル」はテイスト トークンを1つの広告パッケージとして売る。このパッケージでは広告主となるブランドは広告費のうち10%を仮想通貨に換金して、商品を販売するかどうかを選択できる。すでに「ディオール(DIOR)」「シャネル(CHANEL)」「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」といったブランドがこの広告パッケージを購入し、それぞれジュエリー、香水、バッグを販売する予定だという。なお、商品の流通については各ブランドが担う。

 まさに他のファッションメディアが今すぐ真似したい夢のようなシステムに思えるが、エイメールCEOは、例えばハースト(HEARST)、コンデナスト(CONDENAST)、フェイスブック(FACEBOOK)といった巨大メディア企業でさえも、その複雑さゆえにコピーは難しいと考えている。そして、たとえコピーされたとしても、「起業とは流動的なもの。もし人々の考えを最初に変えたなら、永遠に変えることができる」と語る。