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高級ECの英マッチズが次世代リアル店舗 「プラダ」と協業プロジェクトも

 イギリスを拠点にECサイトを手掛けるマッチズファッション ドットコム(MATCHESFASHION.COM以下、マッチズ)が4日、ロンドンの高級地区メイフェアに実店舗をオープンした。老舗ホテルのザ・コノート(THE CONNAUGHT)の向かいで、「ロクサンダ(ROKSANDA)」「クリストファー ケイン(CHRISTOPHER KANE)」「セリーヌ(CELINE)」などのラグジュアリーブランドの店舗からも目と鼻の先だ。

 総面積約650平方メートルの5階建てのタウンハウスには、気軽に立ち寄れるショッピングフロアだけでなく、個別サービスが受けられる予約制のプライベートショッピング・スイートルームがあり、ミラノ発の老舗カフェ「マルケージ(MARCHESI)」も併設されている。またアート、ファッション、音楽などのイベントを開催し、その様子をインターネット中継する設備まで備わっており、インスタ映え間違いなしだという。ウルリック・ジェローム(Ulric Jerome)最高経営責任者(CEO)は内覧会で「われわれのショップは誰もがSNSでシェアしたくなる瞬間に溢れている」とコメントし、セルフィーを撮るのにぴったりな鏡張りのバスルームから、温かみのあるモノクロカラーで統一されたプライベートショッピング・スイートルーム、テラコッタタイルが敷かれた階段など、店舗の隅々まで選び抜かれたインテリアについて語り「この由緒ある建物にふさわしい店舗にしたい」という。

 店舗内のあらゆる場所でテクノロジーが駆使されているのも目を引く。例えば、螺旋階段の壁にランダムに飾られているアート作品は、スキャンするとビデオコンテンツが表示され、その作品のアーティストについて知ることができる。予約制のプライベートショッピング・サービスも体験でき、顧客はレセプションでバーコードをスキャンするだけでサインインが完了し、店舗の従業員に顧客の到着が通知される。顧客は店舗内のツアーを楽しんだ後、プライベートショッピング専用のスイートルームに案内される。そこには、顧客が事前にオンラインで選んだ商品、購買履歴や欲しいものリストから選ばれたアイテムがそろっている。商品が店舗で購入できない場合には、マッチズのアプリから注文すると、90分以内に同店舗か顧客の自宅に配達されるという。ジェロームCEOは「われわれはテクノロジーで人々の体験をアップグレードし、非常にパーソナルなものにする。スマートな方法でね」と語った。同社は革新的なテクノロジーの導入に力を入れており、顧客ごとのオススメ商品を割り出し、新しいアイテムやコーディネートを提案するアルゴリズムを開発した。同社のアプリを利用して、顧客の閲覧や購買履歴、購入した商品に類似したブランドから提案するという。さらに顧客のライフスタイルなどに合わせて選別されたアイテムも提示できる。現在は顧客との会話をサポートするテクノロジーを開発中だ。
 
 ブランドとのコラボレーションも、マッチズは実店舗を新たなプラットフォームにして取り組んでいく。その最初のブランドが「プラダ(PRADA)」だ。マッチズの実店舗オープンに合わせ限定カプセルコレクションのメンズ、ウィメンズのアイテム116点が「プラダ」フロアに並んだ。「プラダ」とマッチズのコラボ作品として、絵柄が施されたピンボールマシンや、「Matches x Prada」のロゴが入ったステッカーなどの自販機、ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)の言葉を映し出すスクリーンなどが設置され、フロア全体をネオンライトが照らしている。

 ブランドとのコラボレーションについて同CEOは、マッチズだからこそできるパートナーシップの在り方をブランドに理解してもらうことが重要だと語る。「マッチズの顧客はブランドの顧客層とは異なる。それがブランドにとって顧客の幅を広げる機会になる。だからマッチズの顧客にアピールする方法をブランドと一緒に作っていく」という。「プラダ」の次は、2017年のLVMHヤング ファッション デザイナー プライズのグランプリを受賞した「マリーン セル(MARINE SERRE)」とのコラボレーションが控えている。また今後の活躍が期待される若手デザイナーとのコラボレーションも予定されている。店舗で開催されるイベントでコラボするデザイナーや彼らのストーリーを紹介することで、顧客はブランドにいっそう興味を持ち、売り上げにもつながるという。

 店舗イベントへの参加は、マッチズの公式サイトからオンラインで予約するだけだ。現在予定されているイベントには、テレサ・ウェイマン(Theresa Wayman)のアコースティックライブや、フィリップス・オークション・ハウス(PHILLIPS AUCTION HOUSE)が所有する20世紀の家具オークション品の内覧会などがある。同CEOは「すべては、この場所で体験できるということに尽きる。誰にでも開かれた場所だ。先着順という縛りはあるが、オンラインで簡単に予約できる」という。

 ロンドンの店舗に来られなくてもチャンスはある。マッチズは店舗で開催するイベントを、インターネットを介してライブストリームやポッドキャストで配信する予定だ。それは、マッチズがテーマとする、全てにオープンであるということと、その場所でしか経験できないイベントをグローバルに展開することの実現になるという。同CEOは「このコンセプトの素晴らしいところは、店舗内で起こっているエキサイティングなイベントを、驚くようなコンテンツにして世界中の何百万人もの人々に配信できることだ。これは革命だ。10月末までに開催する40以上のイベントをどんどんコンテンツにして配信していく。顧客にとっても今までにない刺激になるだろう。こうしたクリエイティブなコンテンツは、われわれが目指す最高にパーソナルなショッピング体験につながっていく」と語った。

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