海外ファッション・ウイークを現地取材するWWDJAPANは毎シーズン、今後が楽しみな若手デザイナーや新進ブランドに出会う。本連載では毎回、まだベールに包まれた新たな才能1組にフォーカス。10の質問を通して、ブランド設立の背景やクリエイションに対する考えから生い立ち、ファッションに目覚めたきっかけ、現在のライフスタイルといったパーソナルな部分までを掘り下げる。
今回取り上げるのは、ニューヨーク(NY)を拠点に「ザンコフ(ZANKOV)」を手掛けるヘンリー・ザンコフ。NYのファッション工科大学(FIT)を卒業後、「ダナ キャラン ニューヨーク(DONNA KARAN NEW YORK)」のアシスタントメンズデザイナーや「ダイアン フォン ファステンバーグ(DIANE VON FURSTENBERG)」のヘッド・オブ・ニットウエアとして経験を積んだヘンリーは、2020年に自身のブランドを設立した。得意とするのは、プレイフルな感覚や鮮やかな色彩、グラフィカルな柄が際立つニットウエア。24年にアメリカファッション評議会(CDFA)によるCFDAアワードで、年間最優秀新進デザイナー賞を受賞した。
ブランドの成長を物語るように、9月のNYファッション・ウイークでは初のランウエイショーを開催。色柄のミックス&マッチという持ち味を生かしながら、ニットにとどまらないクリエイションの可能性を見せた。さらに今年は、歌手や俳優として活躍するトロイ・シヴァン(Troye Sivan)によるフレグランスブランド「ツー ラング ヨー(TSU LANGE YOR)」との協業でホームウエアを手掛けたり、「ダイアン フォン ファステンバーグ」とカプセルコレクションを制作したりと、さまざまなプロジェクトを通して活動の場を広げている。
1:出身は?どんな幼少期や学生時代を過ごしましたか?
ロシアのサンクトペテルブルク出身です。子どもの頃はとても静かなタイプでした。同年代の子どもよりも大人に興味があり、両親やその友人たちと過ごす時間が多かったですね。また観察することが好きで、年齢よりも少し大人びていたと思います。母にはボヘミアンでクリエイティブな友人が多く、彼らの家を訪れる機会もよくありました。
2:ファッションに関心をもった原体験やデザイナーを志したきっかけは?
外出時に必ずエレガントでシックな装いをしていた祖母の存在が大きかったですね。意外性のある組み合わせを楽しむ姿を見て、幼い頃からファッションやスタイルを探求したいと思うようになりました。
3:自分のブランドを立ち上げようと決めた理由は?
もともと自ら実験に取り組み、その成果を世界と共有したいという強い憧れと願望を抱いていました。ニューヨーク、そして短期間ですがヨーロッパで複数のブランドにデザイナーとして携わる中、十分な経験と自分のブランドに挑戦する自信がついたと感じたタイミングで立ち上げました。
4:学生時代から過去に働いたブランドまで、これまでの経験で一番心に残っている教えや今に生かされている学びは?
服やファッションは、人をインスパイアし、高揚させ、魅了するものであると同時に、現実に根ざし、きちんと機能する必要があるということ。それが最も大きな学びだと思います。
5:デザイナーとしての自分の強みや、クリエイションにおいて大切にしていることは?
クオリティーとクラフトマンシップ、そしてもちろん色が大切です。
6:活動拠点として、今暮らしている街は?その中でお気に入りのスポットは?
ブルックリンのキャロルガーデンズに住んでいます。美しいブラウンストーンの建物と木々が並ぶ、とても魅力的なエリアですよ。NYのお気に入りは、友人とコーヒーやマティーニを楽しむ「ザ・オデオン(The Odeon)」、最高のハンバーガーとフライドポテトを味わえるブルックリンハイツの「インガズ・バー(Inga’s Bar)」、家庭的な和食が素晴らしいブルックリンの「ヒビノ(Hibino)」、スタジオ用の花を買うフラワーディストリクト、ソーホーの「ザ・ドローイング・ルーム(The Drawing Room)」、そしてパートナーと愛犬と一緒に散歩をするプロスペクト公園(Prospect Park)。展覧会を見に行ったり、フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright)が設計したゴージャスな建物に酔いしれたりできるグッゲンハイム美術館(Guggenheim Museum)も好きです。
7:ファッション以外で興味のあることや趣味は?
フラワーアレンジメント、友人や家族のために料理をすること、そして、森の中を散歩することです。
8:理想の休日の過ごし方は?
たくさん散歩をしたり、フィアンセのためにごちそうを作ったり、家でレコードをかけたりして過ごすのが理想ですね。
9:自分にとっての1番の宝物は?
愛犬のジョージーナです。
10:これから叶えたい夢は?
NYに自分のショップを持つことです。そこがアートやカルチャー、コミュニティが交差するような空間になればいいなと考えています。