MHDモエ ヘネシー ディアジオが展開する「ヴーヴ・クリコ(VEUVE CLICQUOT) 」は11月27日、女性起業家の挑戦を讃える「ヴーヴ・クリコ ボールド ウーマン アワード 2025」を都内のホテルで開催した。同ブランドは1972年、創業者のマダム・クリコの大胆な精神を讃え、世界の女性起業家やリーダーを表彰し、支援する同賞(当時は「ヴーヴ・クリコ ビジネス ウーマン アワード」)を創設。ダイバーシティーやインクルージョンの観点から、社会でより女性が活躍できる世界を目指す活動の一環として世界27カ国450人以上の女性リーダーに光を当ててきた。日本での開催は今年で5回目で、既存の業界に変化と成長をもたらし次世代にインスピレーションを与えた人に授与される「ボールド ウーマン アワード(BWA)」をビジョンケアの高橋政代代表、新規性のある取り組みで、今後さらなる活躍が期待される人に与えられる「ボールド フューチャー アワード(BFA)」をASTRA FOOD PLANの加納千裕代表が受賞した。授賞式はヴーヴ・クリコのトーマス・ミュリエ新社長のビデオメッセージでスタート。授賞式に続き、受賞者2人と審査員である木田隆子ジャーナリスト エディトリアル ディレクターや大石佳能子メディヴァ代表取締役、タレントのRIKACOなどによるパネルディスカッションが行われた。
高橋政代ビジョンケア代表
「私が作る」モチベーションで医療にイノベーションを
今年のテーマは、挑戦の裏側にある”リアルな声“。ここでは、「BWA」を受賞した高橋代表と「BFA」を受賞した加納代表2人の起業家としての“リアルな声”を紹介する。「BWA」を受賞した高橋代表は、理化学研究所(理研)で世界初のiPS細胞由来網膜細胞の移植臨床を主導。19年に理研を退職後、眼科医、研究者の知見を活かして再生医療の社会実装を進めるビジョンケアの代表に就任した。17年には最先端の再生医療の研究施設・眼科医療施設である「神戸アイセンター」の設立にも携わった。
30年前、大学病院から理研に移ったことが彼女自身にとってのイノベーションだったという。高橋代表は、「治療から臨床実験まで携わり、『私が治療を作る』という“勘違い”が生まれた。そのモチベーションは今でも変わらない」と話す。経営者になるにあたり、ビジネス書をたくさん読んだという。一方で、「理研でも60人程度のスタッフがいたので、ある意味小さな企業のようなものだった。ただ、企業トップは、数万人の観客を満足させるエンターテナーのように、何があっても前進、スピード感を持って取り組むべきだ」と言う。
そんな彼女の座右の銘は“行き当たりばっちり”だ。「計画を立てると可能性が狭まる。余白を持ってフレキシブルにチャンスを掴んで最後は“ばっちり”できる能力がなければダメ」と同代表。眼科医、研究者、経営者として第一線を歩み続けている高橋代表だが、責任を持つことに躊躇した時もあったという。「女性自身の意識を変えるのも大切。少し勇気を出して経験してみる。そして、少しずつできるようになるとそれが楽しくなる。無理矢理チャレンジするべきだ」。“患者にとっていいことを届ける”という強い信念を持ちながら、しなやかな柔軟性を持って医療にイノベーションをもたらす高橋代表の姿は、業界問わず多くの人々へのインスピレーションとなるはずだ。
加納千裕ASTRO FOOD PLAN代表
父の思いを進化させ廃棄を利益に変えるビジネス構築に奔走
加納代表が率いるASTRA FOOD PLANは「もったいないをおいしいに!」という言葉にあるように、食品のアップサイクルを通して“かくれフードロス”を解決に挑んでいる。“かくれフードロス”とは、工場や生産地で廃棄される残渣のこと。日本では“食品ロス”に数えられないことからそう呼ばれ、日本における年間の“食品ロス”472万トンに対し“かくれフードロス”は2000万トンにも及ぶ。同社では加熱水蒸気技術を活用した食品加工機とアップサイクル粉末「ぐるりこ」の販売を通して食品業界へ変革をもたらし、社会問題解決につなげる事業を行っている。
同代表が起業を決意したのは、「父の夢を叶えたい」という思いから。大企業の役員だった父が突然退社し、「世界中の子どもに健康を届ける」と言う思いで食品加工機を開発し起業した。父の姿を側で見てきた加納社長は、「父の思いを引き継いで成功するという使命感が起業のモチベーションになった」と語る。同代表は惣菜製造販売のロック・フィールドや和菓子製造販売の榮太樓總本鋪で勤務後にASTRA FOOD PLANを設立。「起業のビジョンが明確になったら、あとは、実行するだけ。まず社外に仲間を増やすことから始めた」。年齢的に若いので「周りの人に手伝ってあげよう」と思ってもらえるような立ち振る舞いを心がけているという。
女性経営者という立場に関しては、あまり苦労する点はないそうだ。女性がさらに活躍の場を広げるためには、「やったことのないことにチャレンジすることが大事。ロールモデルを見つけて真似するのが早道。私の場合は父だった」と話す。加納代表は、父の思いをさらに進化させ、サーキュラーエコノミーが当然の世界を作るべく奔走している。「今のフード業界では、廃棄の方がコストがかからないが、再生したら利益が出るような仕組みを作りたい。フード業界もアップデートする必要がある」という強い意志で会社を率いている。「今回の受賞で、同世代のロールモデルとして期待されていると実感し、身が引き締まる思いだ。次世代に希望を与えられるような存在になりたい」。