ファッション

草間彌生や安野モヨコの作品で「ヴーヴ・クリコ」250年の歴史を体感 原宿の企画展に潜入

 シャンパーニュメゾン「ヴーヴ・クリコ(VEUVE CLICQUOT)」が、創業250周年を記念した世界巡回企画展「ヴーヴ・クリコ ソレール カルチャー(Veuve Clicquot Solaire Culture)~太陽のように輝く250年の軌跡~」を、東京・原宿ジング(Jing)で7月10日まで開催中です。同展では、「ヴーヴ・クリコ」を一大メゾンへと発展させ、“ラ・グランダム(偉大なる女性)”と称されたマダム・クリコの軌跡や、草間彌生さんと安野モヨコさんを含む10人の女性アーティストによるオリジナル作品なども展示。ブランドが築き上げた、太陽のような輝きを放つ“ソレール カルチャー”とは一体どのようなものなのか、実際に体験してきました。

時代の偏見を打ち破って生きた
マダム・クリコとは

 「ヴーヴ・クリコ」の歴史を振り返るのに欠かせない存在が、ブランド名の由来となったマダム・クリコです。彼女は27歳で夫を亡くした後、義父が創業したシャンパーニュメゾンを引き継ぎました。女性が子育て以外に職業を持つことが許されなかった19世紀初頭に、彼女はあらゆる偏見や慣習を打ち破り、その洞察力と審美眼で「ヴーヴ・クリコ」を一大メゾンへと導きました。さらに、シャンパーニュ地方のワイン生産地域全体の水準を引き上げたパイオニアとしてその功績が今なお讃えられており、今回の企画展でもそれらを見ることができます。

10人の女性アーティストが
同ブランドの伝統を現代的に再解釈

 エントランスを抜けると、マダム・クリコの肖像画セクションが私たちを出迎えてくれました。まず目に飛び込んでくるのが、草間彌生さんの作品です。こちらは、唯一残されているマダム・クリコの肖像画に草間さんのシンボルである水玉を施したもので、その存在感に思わず引き込まれます。さらに今回の企画展では、たった1枚しか残っていないマダム・クリコの肖像画を、イネス・ロンジュヴィアル(Ines Longevial)やロージー・マクギネス(Rosie McGuinness)、シシ・フィリップス(Cece Philips)が想像して描き下ろしたというユニークな作品も展示。「マダム・クリコの若い頃はこんな感じだったのかも」と、想像力を掻き立てられます。

 展示は、マダム・クリコが生み出した3つの発明を3人のクリエイターが表現した作品へと続きます。漫画家・安野モヨコさんは、「ヴィンテージ シャンパーニュの発明」を漫画で紹介。女性が一人でブランドを営むことが困難だった時代に、マダム・クリコが発揮した知性と勇気に心を打たれて制作したそうです。ほかにも、イラストレーターのペネロープ・バジュー(Penelope Bagieu)が「ブレンド法によるロゼ シャンパーニュの発明」を、オリンピア・ザニョーリ(Olimpia Zagnoli)は、澱を瓶口に集めて取り除くことを可能にした「動瓶台の発明」をアーティスティックに描き下ろしています。このように漫画やイラストで紹介してくれると分かりやすいですね。

 会場には、250年の歴史をたどる貴重な資料も多く展示されていました。中でも思わず見入ってしまったのが、2010年にバルト海の海底から引き上げられた、1840年代初頭の“ヴーヴ・クリコ”のボトルです。その47本のうちの1本が日本で見られるなんて。約150年も海底に眠っていたにもかかわらず、その大半が当時のシャンパーニュの品質を保ったままだったそうです。

 ほかにも“イエロー ラベル”の変遷や、インテリアデザイナーのカリム・ラシッド(Karim Rashid)やパブロ・レイノソ(Pablo Reinoso)をはじめとする、歴代のコラボレーション作品も見ることができます。草間さんが「ヴーヴ・クリコ」のために制作したオブジェ“ヴーヴ・クリコ ラ・グランダム 2012 草間彌生 スペシャルオブジェ 〜夜の闇の中に咲いた私の心~”を、高さ約2メートルのサイズにした立体彫刻は圧巻でした!

2階は体験型インスタレーション

 2階へ上がると、“ヴーヴ・クリコ”が登場する文学作品のディスプレーが登場。アガサ・クリスティー(Agatha Christie)の小説で、ボトルが殺人の道具に使われた『忘られぬ死(原題:Sparkling Cyanide)』の初版も展示されています。ほかにも、“ソレール カルチャー”にまつわるインスタレーションがたくさん。シェイラ・ヒックス(Sheila Hicks)は、“ヴーヴ・クリコ”を象徴するイエローを生かした、“ジョイフル・インターリュード・アンサンブル”を制作。モニック・フリードマン(Monique Frydman)による、天然顔料で染めた布と竹で作られたパビリオンは中に入ることができ、布から透ける太陽の光が織り成すイエローの世界を堪能できます。タシタ・ディーン(Tacita Dean)は、米ユタ州の砂漠で同時刻・同場所で日の出と日の入りを6日間連続で撮影して“ソレール”を表現していて、多種多様な表現を通じて、私も“ソレール カルチャー”を肌で感じることができました。

 見応えたっぷりの企画展を鑑賞し終えたら、併設のブティックとレストランでひと休み。“ヴーヴ・クリコ”のシャンパーニュはもちろん、フードとのペアリングも楽しめます。フードメニューは、東京・外苑前にある注目のジャパニーズフレンチレストラン「ジュリア(JULIA)」のnaoシェフが考案。1964年に雑誌「ザ・ニューヨーカー」に掲載されたハンバーガー広告「オペラの後」から着想を得たスライダーは注目です!

キュレーターと空間デザイナーの
二人に直撃

 「ヴーヴ・クリコ」への理解をさらに深めるため、来日していた同展キュレーターのカミーユ・モリノー(Camille Morineau)さんに話を聞きました。モリノーさんは、ディレクションの出発点として「ヴーヴ・クリコ」のブランドカラーである“クリコ イエロー”に着目したそうです。「1877年にこの色を使ったイエローラベルが誕生して以来、この色は『ヴーヴ・クリコ』の伝統カラーです。同時に、マダム・クリコの人となりを表す色でもあります」と説明してくれました。さらに、「彼女は楽観主義で強い個性を持ち、喜びや楽しさを常に求めていた人。イエローカラーとマダム・クリコの人柄が“ソレール カルチャー”を構成していると解釈しました」と続けます。

 今回の見どころの一つでもある、10人の女性アーティストについても聞かないわけにはいきません。このアイデアは、モリノーさんの提案で実現したそう。「ブランドについてリサーチを進めるうちに、改めてマダム・クリコの偉大さを実感しました。こんな素晴らしい女性が築いたブランドなのだから、今回は女性アーティストに焦点を当てた展示にしたいと考えたんです。世代やジャンルが多岐にわたるよう意識して依頼しました」。

 モリノーさんが特に印象に残っているのが、砂漠の日の出と日の入りを6日間連続で撮影したタシタ・ディーンとのユニークなエピソード。「タシタから、頑張る代わりに『ヴーヴ・クリコ』のシャンパーニュを送ってもらえる?シャンパーニュはきっと私を強くしてくれるはずだから。と相談されたんです」と、笑いながら振り返ります。すぐに6本のシャンパーニュを送り、彼女は6日間の過酷な撮影を6本のシャンパーニュと共に終えたのだとか。

 展示空間のこだわりも、空間デザイナーのコンスタンス・ギセ(Constance Guisset)さんに聞きました。「アーカイブからコンテンポラリーアート、シャンパーニュにまつわる日々のアイテムまでバラエティーに富んでいるので、来場者が旅をするように鑑賞できる場にしたいと考えました」と、ギセさん。さらに、マダム・クリコらしさは空間でも表現しています。「マダム・クリコがどんな女性で、どれだけ大胆な人であったかを証明するアートや歴史的アーカイブを最初に紹介し、そこから続く作品を通じて、太陽のように明るく、楽しく、そして大胆な『ヴーヴ・クリコ』の世界観を、空間全体で感じてもらおうと考えました」と教えてくれました。

 同企画展は、東京を皮切りに今後アメリカ・オーストラリア・南アフリカ・イギリスと巡回予定。女性起業家の先駆け的存在であるマダム・クリコの偉大な功績や、250年という壮大なブランドの歴史を垣間見れる貴重な機会にぜひ足を運んでみてください!

■Veuve Clicquot Solaire Culture ~太陽のように輝く250年の軌跡~
日程:〜7月10日
時間:11:00~21:00(最終入場 20:00) レストラン 11:00~21:00(20:30LO)
場所:ジング
住所:東京都渋谷区神宮前6-35-6
無休(入場は20歳以上可能)
※事前予約制(ヴーヴ・クリコ公式LINEアカウントからアクセス)

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