「アシックス(ASICS)」は10月29日、ミラノ・コルティナ 2026オリンピック・パラリンピック冬季競技大会(以下、ミラノ冬季五輪)で日本代表選手団が着用する公式スポーツウエアを都内で発表した。
“パフォーマンスとサステナビリティの両立”
「アシックス」が冬季五輪のウエアを手掛けるのは、今大会が8年ぶりだ。コンセプトは、パリ2024オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、パリ五輪)に引き続き“パフォーマンスとサステナビリティの両立”で、夏季大会から冬季大会にかけて“感動”や“熱狂”がつなげることをイメージし、コンディショニングとサステナビリティ、ダイバーシティという3つのテーマで開発した。また、メインカラーは前回大会と同じく“チームジャパン レッド”と“サンライズレッド”を組み合わせたグラデーションで、日本の伝統的な流水文様をベースに選手の芯の強さを表現したオリジナルグラフィック“RYUSUI”を落とし込んでいる。
コンディショニング面は、選手のパフォーマンスを最大化することを最優先し、開催地が室内外の寒暖差と環境の変化が大きいことから、アウトドア用とインドア用の2種類のコーディネートパターンを用意。サステナビリティ面は、国際的な環境認証であるGRS(GLOBAL RECYCLE STANDARD)を受けたリサイクルダウンや廃材を再利用したファスナーの引き手パーツを使用し、一部のアイテムには製品ライフサイクルで排出される温室効果ガス排出量をプリントしているという。そして、ダイバーシティ面は大会と競技の枠を越えたひとつのチームであることを意識し、“RYUSUI”を落とし込んだ1枚の生地から複数の型取りを行うことで一つひとつの見え方が異なり、アスリートの個性を表現できるデザインに仕上げた。さらに、冬季環境下でも操作しやすく扱いやすい構造に加え、車いすアスリートのニーズに合わせたアームカバーなども用意している。
公式スポーツウエアは全14型
メインアイテムのアウトドア用ポディウムジャケットは、防水・透湿素材を採用しながら縫い目内側にシームテープ加工も施すことで防水機能を高め、内側にはアシックススポーツ工学研究所の“アシックスボディサーモマッピング”をもとにバッフル構造を取り入れることで、動きの妨げやオーバーヒートを抑制して衣服内を快適に保つ設計に。また、フードと裾部分は一体型の調整システムとすることで、引っ掛かりやぶらつきを軽減し、グローブを着用したままでも優れた操作性を提供する。一方インドア用ポディウムジャケットは、適度な保温性と通気性を実現するマルチレイヤー仕様で、過去大会の製品から生地を厚くしつつ通気性を改善。また、開催地であるアルプス山脈東部地域の民族衣装に施されるチロルテープに着想し、“RYUSUI”のグラフィックテープをあしらうことでミラノ・コルティナへの道のりを表現したそうだ。
公式スポーツウエアは全14型をそろえ、10月30日から11月12日まで「アシックス」の公式オンラインストアと原宿店で先行販売後、1月上旬から一般発売する。価格は、アウトドア用ポディウムジャケットが13万4200円、インドア用ポディウムジャケットが7万7000円など。
会見に登壇した甲田知子アシックス常務執行役員は、「ミラノ冬季五輪の開幕100日前のタイミングで、この発表ができることを非常に嬉しく思う。厳しい環境下でのコンディショニングを求められるアスリートに、適切な機能性を提供しながら統一されたユニバーサルなデザインで、地球環境への配慮にも取り組んだウエアを開発した。夢の舞台への盛り上がりに貢献できれば」と語った。
また、スピードスケートの森重航選手をはじめ、アイスホッケーの浮田留衣選手と細山田茜選手、パラクロスカントリースキーの森宏明選手、パラアルペンスキーの鈴木猛史選手ら、ミラノ冬季五輪に挑む選手たちが公式ウエアを着用して登場した。森選手は、「しっかり暖かく、イベント前から着ているが着心地が良すぎて、そのまま着て帰りそうなくらい。また冬は荷物が多いが、バッグの必要がないくらいポケットの機能性が高い」と絶賛。続けて鈴木選手は、「車椅子ユーザーは、袖を気にしながら移動をしているため、お気に入りの洋服やポディウムジャケットのような正装の場合、汚さないようにしないといけない緊張感の中で動いている。だが、今回はアームカバーのおかげで気にせず、急いで選手村の食堂に行けます(笑)」とコメントした。
さらに、スペシャルゲストとしてパリ五輪に出場したフェンシング・サーブルの江村美咲選手とゴールボールの宮食行次選手が、応援メッセージと共に登壇。江村選手は、「大きな大会が近づくにつれて心が敏感になっていき、自分のやり方が正しいかどうかなど、いろいろなことを考えてしまうが、正解はないと思う。それぞれにそれぞれの強みがあるはずなので、自分らしさを信じて最高の舞台で一番輝いてほしい」とコメント。また、宮食選手はお笑い芸人・ゆってぃのギャグを引用し、「“チッチャイことは気にするな! それ、ワカチコ! ワカチコ!”の精神でがんばってほしい。これはゴールボール男子チームのキーフレーズで、国際大会では思いがけないトラブルがたくさん起きるが、そういうものにメンタルが左右されてしまうと結果がついてこない。何かトラブルが起きても、みんなで“ワカチコ! ワカチコ!”としたらチームが笑顔になり、それが金メダルにつながったと思っている。なので、みなさんもトラブルが起きたときは、芸人さんの顔を思い出しながら乗り越えてほしい」とエールを送った。