「ユニクロ(UNIQLO)」「ジーユー(GU)」を擁するファーストリテイリングは2024年9月〜25年2月期の業績が大幅増収増益となり、業績予想を上回るとともに、通期業績も上方修正した。日本、東南アジア・インド・オーストラリア地区、北米、欧州のユニクロ事業が大幅な増収増益と好調で、グループ全体で過去最高の業績を達成。「グローバルでユニクロのコア商品に対するお客さまからの支持が高まっていることに加え、戦略的にマーケティングの打ち出しを行ったことと、シーズン末まで冬物在庫を十分に持って商売したことが奏功した。北米、欧州を中心に新規出店が大成功し、店舗での販売が好調なだけでなく、店舗がメディアとなりECも大幅な増収となるなど、顧客層拡大の好循環が生まれている」と岡﨑健グループ上席執行役員CFO。一方、中国本土のユニクロ事業や、ジーユー事業は減益となった。「次のステージに進むための変革期にある。課題は明確で、解決に向けて着実に事業構造改革を実行している」という。
売上高に相当する売上収益が前年同期比12%増の1兆7901億円、営業利益が同18.3%増の3042億円、親会社の所有者に帰属する中間利益は同19.2%増の2335億円だった。海外ユニクロ事業が1301億円増収の売上収益1兆141億円(同14.7%増)、営業利益1685億円(同11.7%増)、国内ユニクロ事業が564億円増の売上収益5415億円(同11.6%増)、営業利益976億円(同26.4%増)となったことが寄与した。ジーユーは売上収益1658億円(同3.9%増)、営業利益139億円(同9.3%減)、「セオリー(THEORY)」「プラステ(PLST)」などグローバルブランド事業は売上収益677億円(同2.3%減)、営業利益は9億円の黒字(前年同期は17億円の赤字)だった。売上総利益率は53.3%と0.4ポイント改善。売上高販管費比率は36.5%と0.7ポイント改善した。為替差益は319億円発生した。
とくに国内ユニクロ事業が好調。24年12月から25年2月まで気温が低く推移する中で、戦略的に防寒衣料の在庫を準備したことが奏功した。マーケティングも強化し、客のニーズにマッチした商売を展開でき、大幅な増収となった。訪日客による売り上げも好調。24年9月〜25年2月のEC売上高は824億円(同10.9%増)で、売上高構成比は15.2%となった。既存店の客数は5.3%増、客単価は4.3%増で、既存店売上高は9.8%増となった。
報酬の引き上げを行ってきたが、増収となったことで人件費比率や賃借料比率が改善。継続的な店舗作業の効率化や、繁忙期に計画的に店舗に在庫を投入してより効率的な店舗運営を行ったことなどにより、人時生産性も向上している。
2ケタの増収増益となった海外ユニクロ事業では、北米が約25%の大幅増収増益、欧州では約3割の大幅増収、約2割の大幅増益となった。グレーターチャイナは現地通貨ベースで3%の減収、9%の減益、円ベースで0.3%増収、6%の減益となった。中でも中国本土事業が4%の減収、11%の減益で足を引っ張った。市場全体で消費意欲が低下し、過去に比べて地域間の気温差が激しく、各地のニーズに合った商品構成への対応が不十分だったという。
25年8月期末に向けては、「個店経営」「SKU管理」「グローバルワン・全員経営」を強化し、期初に設定した5つの重点課題「人材への投資の強化」「情報製造小売業の進化」「グローバル化の加速」「グループブランドの拡大」「事業拡大がサステナビリティにつながるビジネスモデルの構築」を推進。「経営者自身が課題解決によりコミットすると同時に、経営者の視点を持って実行できる人材の育成を強化する。ユニクロ事業、ジーユー事業ともに商売の基本の徹底と、情報製造小売業のさらなる進化を図ることで、『お客さまを起点とした商売』の実践と、『価値を売る商売』の強化を行う」と岡﨑CFO。
10日に行われた決算説明会には、柳井正会長兼社長と岡﨑CFOに加えて、「お客さま中心の経営を実現する業務変革」をけん引する、若林隆広グループ上席執行役員ユニクログローバルCOOと、「現場と一体になったデジタル業務変革」をけん引する丹原崇宏グループ執行役員CIO、「世界を変えていく人材を育てる」として人事を統括する寺師靖之グループ執行役員が登壇。ファーストリテイリングの業務変革のビジョンと実践について言及した。
上期の好調や世界情勢を受け、25年8月期通期業績を修正する。売上収益は前期比9.5%増の3兆4000億円と据え置くが、営業利益は同8.8%増の5450億円(修正前は5300億円)、親会社の所有者に帰属する当期利益は同10.2%増の4100億円(同3850億円)とし、過去最高業績を見込む。下期だけを見ると、売上収益、事業利益は増収増益ながらも、営業利益は減額修正し、若干の減益を見込む。上期に売上収益が約150億円、事業利益が約200億円上振れたものの、下期には米国政府が発表した相互関税や追加関税の影響の試算を加味したため。4月2日に発表された税率がすべて適用され、下期は商品価格の値上げを行わないと仮定し、グループの下期事業利益に約2~3%マイナスの影響があるとしている。ただし、すでに相当量の商品が米国国内に入庫し、関税の影響は限定的と見込む。来年度以降については情勢を見極め、適切に対応するとしている。