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ZOZOが英Lyst買収、「悲願の海外進出」と「最初のステップ」

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ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」を運営するZOZOが、念願の海外進出に向けて本格的に動き出した。4月9日、同業の英ファッションEC「リスト(Lyst)」を1億5400万ドル(約231億円)で買収すると発表した。国内市場で圧倒的なプレゼンスを持つZOZOだが、これまで海外展開には苦戦してきた過去がある。中国進出を試みるも撤退を余儀なくされるなど、「グローバル戦略」は長らく同社の課題だった。それだけに今回のリスト買収は、待望の海外市場への再挑戦を象徴する一手となる。

ZOZOとLyst
それぞれの強みを補完

「リスト」は2010年に英国で創業した。自らは在庫や倉庫を保有せず、ブランドやECモールの在庫を顧客とマッチングさせる、いわゆる「アフィリエイト型」のビジネスモデルだ。取り扱いブランドは2.7万、SKU(最小管理単位)は9700万を超え、年間220万人が利用する。平均注文単価(AOV)は約6万3000円と高額で、欧米の高感度層を中心に厚い支持を得ている。

一方のZOZOは、国内では倉庫からシステムまでを内製化し、精緻なユーザー体型データやAIによる接客機能を活用して、成長してきた。2025年3月期(見通し)のGMV(商品取扱高)は前期比6.1%増の6092億円と、引き続き堅調な成長を見せているが、国内市場の飽和感は否めず、次なる成長の柱として海外展開は喫緊の課題となっていた。ZOZOの強みであるテクノロジーとリストの高感度な欧州市場でのプレゼンスは、確かに補完し合う関係にある。

欧州EC市場の「混乱期」に現れた好機

今回の買収には、欧州ファッションEC市場を巡る地殻変動も影を落としている。ラグジュアリーEC最大手のファーフェッチは過剰投資の末、経営危機に陥り韓国グループの支援を受けた。ユークス・ネッタポルテとの統合も頓挫し、市場全体が構造調整局面にある。

こうした混迷の中でもリストは堅実な成長を維持し、2024年3月期には営業利益ベースで黒字化を達成した。大株主にはLVMHのアルノー一族の投資会社「フィナンシエール・アガシュ」も名を連ねる。欧州におけるEC市場の信頼性という点でも、リストは理想のパートナーに見える。欧州圏ではGDPR(一般データ保護規則)により、個人情報活用に厳しい制限がある。域外企業にとっては参入障壁となるが、逆に言えば、すでに現地で認知されているリストの買収は、そのハードルを飛び越える“ショートカット”にもなる。

ZOZOのノウハウで
英リストを高収益化!?

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