英アウトドアブランド「カリマー(KARRIMOR)」の日本事業を担うカリマーインターナショナルは、直営店事業に乗り出す。2027年に路面の直営店を出すのを皮切りに主要都市に5年内に5店舗の体制を目指す。現状ではアウトドア専門店への卸売りが8割以上を占めるが、これを卸売り4割、直営店3割、オンライン3割の構成に移行していく。売上高は5年後に現在の5倍規模に持っていく考えだ。
今年3月31日付でアンドエスティHD(当時アダストリア)と伊藤忠商事が、カリマーインターナショナルの株式を共同取得した。栄木雅人社長をはじめアンドエスティHDから人材が送り込まれ、成長基盤を整えている最中だ。栄木社長は「『カリマー』は伸び代が大きい。現在はバックパックが売り上げの7割だが、直営店の展開を前提にアパレルや雑貨のトータル化を進める」と話す。80年の歴史を持ち、登山家に愛されてきた機能的なバックパックを軸にしながらライフスタイルにも事業領域を広げる。
親会社のアンドエスティHDは、旧体制では十分な投資ができなかった店舗開発やマーケティングを支援する。アンドエスティHDが運営する会員数2070万人(9月末時点)のECプラットフォーム「アンドエスティ」も活用する。
新体制での初コレクションとなる26-27年秋冬物では、アパレルの品番数を1.5倍にした。「アンドエスティHD傘下になったことで、ファッション化が進むと考える向きもあるようだが全く違う。あくまでコアなアウトドアファンに向けたモノ作りを推進する」と栄木社長は話す。「カリマー」のアパレルはバックパックとの相性を前提に企画されており、背負った際の引っ掛かりや通気性など細部まで配慮している。現在バックパックとアパレルその他の割合は7対3だが、トータル化によっていずれは4対6へと逆転させる。
カリマーインターナショナルでは、米シアトル生まれでボトルやタンブラーを主力とする「ミアー」の販売を26年春から始める。保温・保冷機能のあるボトルは、アウトドアとの親和性が良いと考えた。エコ意識の高まりによって普段からボトルを持ち歩く人が増えている。デザイン性にも優れたボトルは、幅広い人々にアプローチできる。「ミアー」はブルーボトルコーヒーをはじめ、さまざまな企業とのコラボレーションでも引っ張りだこだ。26年中にアパレルコレクションを出す計画もある。
これまでアンドエスティHDは、「グローバルワーク」「ニコアンド」「ローリーズファーム」をはじめとしたファッション領域で成長していた。ブランドのポートフォリオでは、スポーツやアウトドア領域は空白だった。「カリマー」のような本格的なアウトドアブランドを取り入れ、接点のなかった顧客の獲得を狙う。アンドエスティHDはスポーツやアウトドア領域を成長市場と見定め、今後もブランド獲得に動く。