1993年から上海在住のライターでメイクアップアーティストのヒキタミワさんの「上海日記」をスタートします。ファッションやビューティの最新トレンドや人気のグルメ&ライフスタイル情報を、ベテランの業界人目線でお届けします。1回目に取り上げるのは、イタリアで生まれ、米国LAで人気が爆発したカジュアルウエアブランド「ブランディーメルビル(BRANDY MELVILLE)」。感度の高さと全身コーデで1万円以下、というコスパの高さで人気のブランドです。

プラタナス並木や欧州様式の建物が並ぶ旧フランス租界に位置する全長たった862mの「安福路」には、スタイリッシュなカフェや海外ブランドのブティック、小さなギャラリーや劇場まで、人を魅了する内容がぎっしりと詰まっている。東京の南青山というとイメージが伝わりやすいかもしれない。週末ともなれば、祭りのネリのようにごった返してしまうこの小さなストリートだが、その中でも特に注目を浴びているのが「ブランディーメルビル」という2009年にスタートしたイタリア発祥のファッションブランドだ。
ブランド名は「ブランディというアメリカ人女性とメルヴィルというイタリア人男性がローマで恋に落ちた」という物語に由来し、ロゴの中心に♡マークが描かれているのがその背景を象徴している。
「シンプルでありながらトレンド感を感じさせるスタイル」をブランドコンセプトに、カジュアルさの中にヴィンテージライクなエッセンスを取り入れ、ヨーロッパのフェミニンな要素とアメリカ西海岸のリラックスしたライフスタイルを融合させたスタイルを提案している。 店舗は3階建てで、総面積は約1000㎡、2~3階が売り場となっている。かなりの広さを白とナチュラルな木目を基調にし、ギターやレトロ調の絵画などを効果的に配置した店内のインテリアもまさにそのコンセプト通りだ。
取り扱っているアイテムはキャミソールやスウェット、セーター、ワンピース、アクセサリー、アンダーウェアなど多岐にわたり、淡いカラーリングを基調にゆったりとしたデザインからフィット感のあるものまで豊富にラインナップされており、どれもシンプルで着回しがしやすく、さまざまなコーディネートに対応できるのも魅力的だ。
主にZ世代をターゲットにした価格帯は比較的お手頃で、夏のコーディネートならば全身を1万円ほどで揃えられる設定になっている。そして特筆すべきは、展開されているのがなんと1サイズのみ(しかもほぼ「S」または「XS」に近い)ということ。服が自分に合わせるのではなく、自分が服にフィットしないといけないというハードルがそこに存在する。
ファッションアイコンのケンダル・ジェンナーやポップスターのアリアナ・グランデ、モデルで起業家のヘイリー・ビーバーなど、SNSなどで数多のセレブリティたちも日常のスタイルとして取り入れている。セレブ御用達なのにリーズナブルとくれば、「私も着てみたい」と思う女子が大量発生するのも頷ける。
現在はヨーロッパ、アメリカ、アジア、カナダ、オーストラリアなど複数の国と地域で展開しており、店舗数も100軒を超えている。2019年上海進出に続き、東京では2023年原宿に旗艦店をオープンした。こちらも賑わっているものの、上海店ほど大きくなく、上海店を知っている身としては少しがっかりしてしまう⋯⋯。
上海店は平日にも関わらず多くの来店者で賑わい様子が見られる。人気は衰えを知らず、今後も世界中で「ブランディガール」が増え続けるだろう。年齢にとらわれず、誰もが気軽に楽しめるこのブランドの可能性はまだまだ広がりそうだ。私が内緒で14歳の娘のブランディを拝借していることはここだけの秘密に!