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特集 東コレ2025年春夏

東京デザイナー12の物語 自身に向き合いストーリーを紡ぐ

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東京デザイナー12の物語 自身に向き合いストーリーを紡ぐ

東京のデザイナーズブランドの面白さは、私たちが日本人であるがゆえに、デザイナーが服に込めたストーリーや思いを理解しやすい点にある。彼らは服作りの過程で自身の内面を掘り下げていると、明るい感情だけでなく、暗い感情にもぶつかることがあるだろう。それらを着想源に変え、服として昇華するクリエイションには、人の共感を呼ぶパワーがある。(この記事は「WWDJAPAN」2024年9月16日号からの抜粋で、無料会員登録で最後まで読めます。会員でない方は下の「0円」のボタンを押してください)

シンヤコヅカ(SHINYAKOZUKA)

10周年の節目に、小塚信哉デザイナーが20代のころに制作した絵本をリマスターし、コレクションで再現した。絵本は小塚デザイナーの実体験に基づいたストーリーで、友人との出会いと別離を描いた。揺れ動く心情を、モノトーンのワークウエアと、カラフルなペイントを施したフーディーや、デザイナー自身によるドローイングをプリントした「土屋鞄」とのコラボバッグなどの対比で表現した。チュールレースを用いたアイテムや、絵本の絵柄をプリントしたセカンドスキンは、ブランドのメルヘンな世界観を後押ししつつ、ジェンダーの垣根も越える提案だ。

ヴィヴィアーノ(VIVIANO)

タイトルに “My Garden”を掲げ、コレクションの至る部分にバラのモチーフを散らした。ヴィヴィアーノ・スー(Viviano Sue)=デザイナーは「洋服も花も、愛を注ぐと応えてくれる」と話す。アイコンのラッフルとチュールをたっぷり使い、カスケード状に重ねるなどして華やかに仕上げた。透明なスパンコールを一面に挟んだり、白地の生地にジャカードで金のバラを織ったり、生地に多彩なアプローチを加える。ビジネスを意識し、テーラードやベストなどの売りやすいアイテムも増やしたほか、7月に立ち上げたメンズラインのウエアと同素材を使ったルックも登場した。

ケイスケヨシダ(KEISUKEYOSHIDA)

女性教師や学生のような、ユニホームスタイルが連続。テーラードジャケットやチェスターコートに加え、細身のパンツやタイトスカート、ボウタイでエレガントに仕上げたブラウスなどをラインアップ。トップスは、ジャケットの裏地を延長させて仕立てたもの。「新たにデザインをするつもりがなかった」という吉田圭佑デザイナーはジャケットの裏地に美しさを見いだし、表地と裏地の間に体を通せるようにハサミを入れた。体に布が張り付く苦しさと美しさを起点にしたといい、思春期のフラストレーションを凝縮したようなムード。

ピリングス(PILLINGS)

村上亮太デザイナーの幼少期の経験を元に、内向的な人が、勇気を出して外出する様子を服で描いた。レースカーテンで内と外の境界線を引きながらも、外界との関係も断ちたくないという思いを表現したのは、編んだレースを樹脂コーティングで固め、揺れるカーテンを閉じ込めたようなドレス。さらに、日常のささやかな場面をくっきりと折りじわがついたカーディガンや、「病院などの公共施設の色」をイメージしたカラーパレットに落とし込んだ。ハンドニット主体のクリエイションから変化し、春夏らしい薄手のニットトップスや、布帛のアイテムも加えた。

カミヤ(KAMIYA)

前身ブランドから「カミヤ」に改名後、神谷康司デザイナーの“男らしさ”の濃度が高まる。今季は自身が考える“憧れの男”を探求し、未熟な少年の自由さをストリートウエアに投影した。得意の加工デニムはバリエーションを増やし、オーバーダイの色味やトロンプルイユのユーモアで軽やかに。売れ筋のニットはダメージ加工でグランジ風に、スニーカーはファイヤーパターンでバイカー風に、さらにスケーターやラッパーなどあらゆるカルチャーをDJのようにごった煮ミックス。それでも軸がブレないのは、デザイナー自身の感覚を投影できている証拠だろう。

アンリアレイジ オム(ANREALAGE HOMME)

アンリアレイジ(ANREALAGE)」が未来を志向するなら、引き続き「アンリアレイジ オム」は過去、そして森永邦彦デザイナーの内なる情熱を顧みる。2000年前後の原宿が原風景というノスタルジックなスタイルは、愛がゆえのハンドワークと、情熱がゆえの過剰な装飾でインパクトを備えた。子どもっぽいスタイルや、カラフルな色使い、そして手の温もりを押し出したディテールは個性的だが、端正なシルエットの洋服を加えれば、その愛や情熱はなおさら引き立つだろうし大勢に共感されるのではないだろうか?

ミューラル(MURRAL)

「花はなぜ美しいのか?」を再考し、“アク”の要素を抽出してエレガントなウエアになじませた。植物学者のカール・ブロスフェルト(Karl Blossfeldt)による白黒の植物図鑑にヒントを得て、美しさと奇妙さを備えた花の構造に着目。ドレスのフラワーモチーフをハンドプリントしたり、石川の機屋によるコード刺しゅうで花の輪郭を描いたり、バルーンシルエットで花の丸いフォームを模したり。ミニ丈のスカートやショートパンツの提案も増やして、ドレスをアイコンとする最近のブランドイメージに幅を持たせたほか、ブラックのアイテムでシックなムードを演出した。

「マーカスコビントン(MARCUS COVINGTON)」

市川マーカス知利デザイナーが4月に始動した新ブランド。デビューショーのテーマは“SMASH!!!!”で、デザイナーが日常で対峙する、さまざまな“激情”に着想を得て、「全ルック“一撃必殺”になるようなスタイル」を目指したという。メッシュなどの異素材を組み合わせたオーバーサイズブルゾンや、無数のひもが垂れ下がるボンバージャケットなど、インパクトあるルックが並び、ラフなストリート感ときれいで品のあるスタイルの融合を表現した。

ハルノブムラタ(HARUNOBUMURATA)

東コレ前に独自でショーを開催し、よりエレガンスに振り切った鋭いスタイルを披露。銀箔を硫化させた焼箔加工の数点以外は全て無地に徹し、素材感の美しさを強調する。柄を排した分、アシンメトリーなコクーンやオーバーサイズ、ドレープ、大きなスリットなど、フォームのバリエーションは多彩にそろえた。彫刻家コンスタンティン・ブランクーシ(Constantin Brancusi)の思想と、デザイナーの美学との接点を探りながら、身にまとうラグジュアリーを提唱する。

「ユェチ・チ(YUEQI QI)」

毎シーズン抽象的なテーマを設ける「ユェチ・チ」は、装飾性を持つ鍛鉄と機能的な鉄格子がモチーフ。デザイナーの手仕事への愛がにじみ出したように、全てのルックにビーズ刺しゅうをふんだんに施した。過剰な装飾が鍛鉄だとすれば、機能的なウエアは鉄格子だろう。「アグ(UGG)」や「アディダス(ADIDAS)」とのコラボアイテムはY2K感のあるスポーティーカジュアルで、“ギャルかわいい”ブランドの世界観を後押しした。

サポートサーフェス(SUPPORT SURFACE)

テーマは“未完の完成品”。ゆとりのあるシルエットのブラウスや、シアー素材を使用したワンピース、ドレープの効いたワイドパンツなど、流動的なシルエットのアイテムの“余白”で、未完成を表現した。こだわりの滑らかな素材使いや、水彩画風のストライプなど意匠性の高い柄は、“完成”の象徴。コレクション全体に未完成性と完成性の両側面をしのばせた。“着る人を美しく見せる”という衣服の本質的な価値を、研壁宣男デザイナーらしいミニマルなデザインで追求した。

「オー・ゼロ・ユー(O0U)」

アダストリア(ADASTRIA)によるサステナビリティを強く意識したブランドが、ランウエイショーを開催した。円形の会場で、このブランドに欠かせない循環を表現。ブランド設立当初から向上してきたデザイン性を発揮し、十分にエモーショナルなラインアップを披露。シアーな素材、たっぷりのドレープ、オーバーサイズのシルエット、フリンジなどで、流れたり揺れたりの様を表現し、日常生活に彩りや美しさを添える姿勢を打ち出した。サステナブルだからナチュラルカラー、デイリーウエアだからシンプルと決めつけず、境界線を設けないクリエイションだ。

PHOTO : DAISUKE TAKEDA(MURRAL BACKSTAGE, PILLINGS BACKSTAGE), KAITO CHIBA(YOSHIOKUBO), KO TSUCHIYA(ANREALAGE HOMME BACKSTAGE, KAMIYA BACKSTAGE, TELMA BACKSTAGE, VIVIANO BACKSTAGE), KOJI HIRANO(FETICO BACKSTAGE), RYAN CHAN(SHINYAKOZUKA BACKSTAGE, SULVAM BACKSTAGE), SEIGO ISHIZAKA(ANREALAGE HOMME, FETICO, KAMIYA, MURRAL, PILLINGS, SHINYAKOZUKA, SULVAM, TELMA, VIVIANO)

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