ファッション
特集 東コレ2025年春夏

東京デザイナーは“らしさ”を拡張する【前編】 ムードの変容

有料会員限定記事

東京デザイナーは“らしさ”を拡張する【前編】 ムードの変容

これまで“強さ”や技を武器にしていたブランドは、柔らかさや温かみを手に入れたり、強さをより鋭く進化させたりした。デザイナーは、ブランドのアイデンティティーに立ち返りながら、今の気分をコレクションに反映し、“らしさ”を拡張している。(この記事は「WWDJAPAN」2024年9月16日号からの抜粋です)

フェティコ(FETICO)

“強さ”の先で獲得した愛らしさ

今季はこれまでの強いスタイルから一転し、曖昧さや愛らしさが浮かび上がった。テーマは“The Secrets”で、秘密を持つ女性のミステリアスな雰囲気を落とし込んだ。細かくギャザーを寄せたライラックカラーのボディースーツや、パステルグリーンのニットドレスなど、ニュアンスカラーが印象的。1980年代に活躍したモデルのヴェロニカ・ウェブ(Veronica Webb)をミューズにしており、肌見せが控えめで、淑女のムード。舟山瑛美デザイナーは自身の変化にについて「何でも白黒はっきりつけるのではなく、曖昧であることを許容できるようになったのかも」と語った。

チカ キサダ(CHIKA KISADA)

差し色は情熱の赤、
バレエへの情熱はさらに鮮明に

陶酔を意味する“intoxication”をテーマに、根幹にあるバレエとパンクへの情熱を強めた。アイコンのビスチエやクリノリンに加え、デニムやナイロンなどのカジュアル素材で、エレガンスと日常感を融合。幾左田千佳デザイナーは「感情を揺さぶる色」の赤をアクセントとし、赤い口紅を塗ったモデルに赤色のチュールドレスをまとわせ、官能的なムードも演出した。デニムのレオタードにチュールパンツやバムフラップを合わせるなど、レイヤードスタイルから生じる服の動きは、気迫溢れるバレエダンサーの残像をほうふつとさせた。

サルバム(SULVAM)

学生と協業して母校でショー、
若者ならではの自由を発信

「楽天 ファッション ウィーク東京」における日本のファッションシーンを支援するプロジェクト「バイアール(by R)」として、母校の文化服装学院でランウエイショーを開催した。学生と共に作り上げたコレクションから感じるのは自由さ。正直意外に思えるアロハシャツ、無数のカットアウトで肌をあらわにするボーダーのカットソー、透け感のあるファインゲージのニット、そして、得意とするドレープを効かせたフォーマルはいずれもエフォートレスだからこそ、“色香”がにじみ出たり、染み出たりするようだ。楽天の支援で、パリではイベントを開催予定。

テルマ(TELMA)

軽やかで華のある
スタイルに込めた日本の技

「JFW ネクスト ブランド アワード」グランプリを獲得し、2022年春夏のブランド始動後、初のショー形式で発表した。和紙を使ったオックス生地のジャケットや、ギマ加工を施したガーメントケース風コートは、和の技術と洋の雰囲気を融合させた「テルマ」らしいピース。その“らしさ”を拡張させたのは、流線型のシルエットや箔プリント、アイコンのフラワーモチーフなどの軽やかさ。「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」でのキャリアが良くも悪くも注目されがちだったが、ショーではそんな比較さえ意味をなさないと証明する、端正な美意識を発揮した。

PHOTO : DAISUKE TAKEDA(MURRAL BACKSTAGE, PILLINGS BACKSTAGE), KAITO CHIBA(YOSHIOKUBO), KO TSUCHIYA(ANREALAGE HOMME BACKSTAGE, KAMIYA BACKSTAGE, TELMA BACKSTAGE, VIVIANO BACKSTAGE), KOJI HIRANO(FETICO BACKSTAGE), RYAN CHAN(SHINYAKOZUKA BACKSTAGE, SULVAM BACKSTAGE), SEIGO ISHIZAKA(ANREALAGE HOMME, FETICO, KAMIYA, MURRAL, PILLINGS, SHINYAKOZUKA, SULVAM, TELMA, VIVIANO)

FETICO x ファッションの記事

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

2026年春夏パリ・ミラノメンズコレ速報 ジョナサン「ディオール」に見る“ラグジュアリー新時代”

7月7日号の「WWDJAPAN」では、2026年春夏のミラノ&パリ・メンズ・ファッション・ウイークを速報でお届けします。ラグジュアリービジネスは停滞が続く中で迎えた今季のメンズ・ファッション・ウイーク。次のウィメンズで詳らかになるであろう“新時代”の到来を予感させる、前哨戦とも言えるシーズンとなりました。キーワードは「ラグジュアリーの再定義」。喝采を浴びたジョナサン・アンダーソンによる「ディオール…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。