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連載 エディターズレター:FROM OUR INDUSTRY 第91回

簡潔で強いこそ「丁寧」

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最近、新聞記者出身の自分と、そうじゃない方々の“違い”を感じる機会が増えています。

「WWDJAPAN」には、編集統括の向、副編集長の五十君と牧田、デスクの林、そして記者の横山や本橋ら、一般紙や業界紙出身の記者が大勢います。そんな彼らは共感してくれると思うのですが(多分w)、新聞記者の「1文字でも、削れる言葉は削る」という思いは、もしかしたら普通ではないのかもしれません。

例えば、社会部の事件記者時代は「●●容疑者、再逮捕へ」なんてタイトルが付せられるだろう記事を送ろうものなら、部長やデスクから「『へ』は取れないワケ?」なんていう電話がかかってきました。新聞記者として、「●●容疑者、再逮捕」と断定できるくらい取材していないのではないか?だったらもっと取材して、「へ」を取るべきではないのか?という指導です。めんどくさい先輩と思われているかもしれませんが、ゆえに私は今も、「売却へ」「退任か」などの記事には敏感です。「へ」や「か」は取れないものか?と考えます。一方で特にXなどのSNSに触れていると、世間はこうした断定や言い切りに敏感です。新聞社の記事や、新聞記者のツイートが炎上したり、炎上しかかったりの場面を目にすると、感覚の違いを覚えます。でも、我々は断定できるほど取材を重ねるべきだし、ある程度強く言い切れるほどの知識を蓄えている自負があります。そんな時は、たとえ少し厳しく聞こえても、私は強く主張したい。強く主張できることも含めての媒体価値と考えています。

思わずアツい話になってしまいました(笑)。話を「削れる文字は削る」に戻しましょう。そもそも新聞記事は、きっと皆さんが思っているほど長くありません。ごくごく一般的なニュース記事は30〜40行程度ですが、昨今新聞の文字は大きくなるばかり。今、1行の文字数は12文字前後です。と考えると、30〜40行のニュース記事って、せいぜい原稿用紙1枚程度。ね、結構短いでしょう?だからこそ、我々は「1文字でも削れないか?」の推敲を繰り返し、3文字削れるなら場所を入れるし、5文字削れるならもう一人関わる人物の名前を入れるし、10文字削れるならもう1ブランド追加する。こんな作業を繰り返しています。

一方昨今は、丁寧に書くことへのプレッシャーが強くなっているように感じます。例えば「先行販売を実施しました」の方が「先行販売しました」より丁寧、そう考えて「〜〜を実施した」や「〜〜を行う」という言葉を多用しているケースはないでしょうか?こうした言葉遣いは多くの場合、「〜〜した」と表現できるはずです。

こちらの記事の通り、私は受動態ポリスですが(笑)、「受動態の方が丁寧に聞こえる」という意見もあるのではないか?と思っています。そんな考えを否定するつもりはありません。でも、言葉を削り簡潔にする作業は、取材相手や読者を思っての話です。私は、簡潔で強い言い方こそ、相手を思い一手間加えた「丁寧」だと思うのです。下のポッドキャストでは、上述の五十君、林、横山が、そんなプライドの一端を垣間見せております。ぜひ、ご試聴くださいませ。

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