PROFILE: 竹内春奈さん/「ユー ルック グッド」オーナー

京都の古着店「ユー ルック グッド(YOU LOOK GOOD)」は、2020年1月にオープン。オーナーの竹内春奈さん自ら遊び心あふれるスタイリングを披露する発信で、ファッション業界人や古着ラバーのファンを増やした。京都の中心街から少し離れた、北大路エリアにある店に県外からの客が日々訪ねてくる。(この記事は「WWDJAPAN」2023年11月6日号から抜粋・加筆しています)
「スタイリングでは、異なる素材やフォームの組み合わせによって、引っかかりを生む“違和感”を作りたい。写真は一人でタイマーをセットして、カメラの前で動いて何枚も撮っている。その中で面白い表情やポージングを偶然捉えたものを使う」。聞くと、接客が苦手で、発信をインスタグラムに頼っているところがあるという。
悩んだ販売員時代
京都の風土に背中を押された
竹内さんは高校卒業後、バロックジャパンリミテッドに入社。地元広島県で「スライ(SLY)」の販売員としてキャリアをスタートさせた。「学生時代にカリスマ店員ブームを目の当たりにしていて、アフロや坊主など、自由なファッションで店頭に立つ『スライ』の販売員に憧れた」。売り上げを追う必要がある環境では、「自分を押し殺しているようで苦しかった」というが、“思ってないことは言わない"がポリシーだった。その後、関西圏を中心にさまざまなブランドで店長職を経験。ストレスから体調を崩したこともあったが、立ち止まって考えている余裕もなかったという。
店を持つことを勧めたのは、京都の喫茶店の店主だ。この喫茶店はユニークで、なぜか店頭で古着を扱っていた。ある時、竹内さんは店主のアメリカへの買いつけに同行した。「京都は家賃が安く、若い人がオーナーを務めるお店も多い。自分のスタイルでお店を経営しているまわりの人たちが、いい意味でハードルを下げてくれた」。
帰国後、すぐに辞表を提出。米屋の倉庫として使われていた、築120年のこの物件に一目惚れした。「大阪・梅田で働いていた頃は、人が多くてお客さんの顔も覚えていられなかった。店を目掛けて来てくれる人とじっくり向き合いたくて、中心街から距離のあるこの場所を選んだ」。
店頭は“自分の大好きな空間"
2歳の息子が店長
「ユー ルック グッド」に並ぶ古着の価格帯は小物なら3000円から、トップスは7〜8000円から、アウターは1万5000円前後。買いつけはアメリカやタイが多い。年代やバックグラウンドにこだわらず、「チープなものからビンテージまで」セレクトする。特に引かれて仕入れがちなのは、「キラキラやスケスケ、テカテカ、フリフリなど、素材感が際立っているもの」だそう。「全て自分が着るつもりで、大好きな空間を作っている。その中に誰かが気に入るものがあるなら、ラッキーだ」。
そんなスタンスゆえに、竹内さんは来店客とのコミュニケーションをいわゆる“接客”だと思っていない。店が家屋の扉を開けて入店する作りであることもあり、緊張させない空間作りを心掛けているという。「お客さんの“これがいい”と思う気持ちを尊重して、そのセレクトに対してスタイリングや楽しみ方を提案したい。ゆっくり見てもらうためには、距離を取ることも必要」。
2歳の男の子を育てる母でもある竹内さん。「私がオーナー、息子は店長」だそうで、保育園が休みの日には店頭でともに過ごす。息子は、ディスプレイしている古着や小物に興味津々で次々と手を伸ばすが、来店客も自然に受け入れているようだった。「彼は人が大好きで愛想も良いから、お客さんと私を自然に繋いでくれる。ただ、二人きりの時間が長くなると『外に連れてけ!』と暴れ出す」。
竹内さんは一貫して自分のペースを守る。「人気店になりたい気持ちはない。服が好きで仕入れが楽しい、それがモチベーション。悪く言えば自己中に店を運営しているけれど、スタイリングやセレクトに共感して、遠くから足を運んでくれるお客さんがいてありがたい」。
竹内春奈さんの「接客POINT」
来店客の“これがいい”という気持ちを尊重したい竹内さん。一方通行の提案はインスタグラムに任せ、店頭ではじっくり見てもらうためにあえて距離を取ることもある。
■YOU LOOK GOOD
住所:京都府京都市北区紫野上門前町30
営業時間:11時〜16時