ファッション

「ヴァレクストラ」2023年春夏はミラノのクリエイティブに原点帰り CEOが語る信念、工学美

 ミラノ発のラグジュアリーレザーグッズブランド、「ヴァレクストラ(VALEXTRA)」。ブランドの原点であるミラノのクリエイティブが集結するエリア、ノーロ地区にインスパイアされたバッグ“ノーロ(NOLO)”や、Z世代にも人気のアクセサリーケースなど、タイムレスな美しさはそのままに、変わりゆく生活習慣にもマッチするアイテムを手掛けている。グザヴィエ・ルゥジョー(Xavier Rougeaux)最高経営責任者(CEO)は2021年2月に新たにCEOに就任。PR出身だからこそストーリーテリングを自身の持ち味とする同氏が、情緒的にブランドの未来について語った。

WWD:2022年現在、「ヴァレクストラ」はどのような時期にある?

グザヴィエ・ルゥジョーCEO(以下、ルゥジョーCEO):ブランドには本のようにいくつかの章があり、物語がある。一つのチャプターは年単位かもしれないし、月単位かもしれない。今世の中はパンデミックの反動で、再びつながりを求め、外に出るムードが高まっている。われわれも新しく生まれる願望やニーズを汲み取っているところだ。

WWD:23年春夏コレクションでは改めてエンジニアリング・ビューティ(工学的な美)を打ち出した。

ルゥジョーCEO:エンジニアリング・ビューティはブランドのレガシーであり、基本的なDNAだ。創業者から根付く価値観で、曲線美やシルエットを建築のように表現してきたブランドらしさを体現する。留め具一つをとっても、全てがバッグのためにデザインされていて、ピッタリとはまる。バッグのサイドには肩掛け用のストラップが付けられるようあらかじめデザインされているなど、美しさと機能性がモノ作りの基本だ。

WWD:新コレクションで注力していることは?

ルゥジョーCEO:改めて、商品にフォーカスしている。機能性が高く、用途が明確で、新しいライフスタイルになじむデザインを取り入れる。アイコンバッグ“ノーロ”は、2種類のサイズ展開で、2023年春夏は新たなカラーが登場する。クロスボディバッグでありながらショルダー掛けもできるので、日々活発に動く女性の生活に寄り添う。バッグを「手に持たねば」という価値観や行動範囲の制限から解放する、エフォートレスなアティチュードが魅力のバッグだ。

WWD:日本の消費者に伝えたいブランドの魅力は?

ルゥジョーCEO:日本で生活をする消費者は、ディテールまで細かく物の本質を見る傾向がある。「ヴァレクストラ」 のバッグはロゴも表に出ていないし、ミニマルでシンプルなバッグ。それを魅力的に仕上げるには、実は一番クラフトマンシップが鍵を握る。品質に自信があるからこそ、使い勝手や機能性を細かく見る日本の消費者に共感してもらえるだろう。

WWD:日本市場に期待することは?

ルゥジョーCEO:「ヴァレクストラ」にとって日本市場はキーマーケット。地域というより、日本人が重要な存在だ。日本で生活するお客様は例えば、旅行の際に欧米でわれわれのバッグを求めることも多い。だからこそ、どこにいてもあらゆるお客様に満足してもらえる商品をそろえていることが重要だ。旅行がプライベートか仕事かにかかわらず、ワクワクしながらショッピングをしてほしい。

WWD:デジタル化にも力を入れているというが、22年現在のECの利用者数は?

ルゥジョーCEO:就任してからオンライン上でのシームレスな体験の構築に努めてきた。ECは劇的に成長した分野だ。オンライン上でアイテムを探して配達するまでのショッピング体験に加えて、ウェブでブランドのストーリーを伝えていく方法も開拓してきた。オンラインでも店舗でも客足は伸びている。オンラインでも「モノだけでなく、体験を売っているのだ」という初心を胸に、洗練されたサービスを提供していきたい。

WWD:30万円代のバッグといったラグジュアリーアイテムもオンラインで買うことに抵抗がない消費者が多い?

ルゥジョーCEO:オンラインで買う人にもさまざまなパーソナリティーを持ったお客様がいると考えている。リラックスした環境で製品の情報を細かく分析しながら、一人で買い物をするのが心地いいお客様もいるだろう。一方で、オンラインやソーシャルメディア上でセレブリティーやインフルエンサーを通してブランドをはじめて知り、店舗で触ってみてから購入するタイプもいるだろう。

 また、「ヴァレクストラ」でものを買うということは、必ずしも価格の高いものを買うこととイコールではない。長く使えるカードケースなどは、比較的手に取りやすい価格設定(約4〜8万円)。シンプルで飽きにくいデザインなので、自己投資にもってこいだ。確かにフルサイズのトラベルバッグを買うと、それは別のレベルの“投資”にはなるが、多くの人に開けているブランドであるように意識しているし、製品のラインナップもその精神を反映している。店舗ではどんな製品を買うお客様も平等に接するよう徹底しており、誇りに思う。

WWD:世界的なインフレの影響は?

ルゥジョーCEO:生産パートナーらとは長きにわたって協業をしてきたが、これからもお互いが平等でウィンウィンな関係を築くためにより慎重なコミュニケーションや交渉が必要な時期だ。原材料のコストは確かに上昇している。今は慎重に検討している段階だが、価格を上げるほかない状況になってしまったら、それも選択肢に入れていく。

WWD:経済状況悪化のインパクトは、若い世代により重くのしかかっているのではないだろうか。この世代にはどのようにコミュニケーションをとっていく予定?

ルゥジョーCEO:そうは思わない。ラグジュアリーアイテムを買えるかどうかは年齢によるものではなく、どのようなライフスタイルを選び、生活のどこに重きをおくか次第だと思う。電子機器は価格設定も高いが、若い世代を含む特定のライフスタイルを好む人は購入を惜しまない。お客様にとって替えのきかない、または“譲れない”存在であり続けることが鍵だと思う。そういう意味では、世代ごとに異なるアプローチが必要になってくるだろう。「ヴァレクストラ」のより小さいサイズのアイテムは若い世代から高い人気を集めている。例えば首から下げたりバッグに装着したりして使えるストラップ付きのサングラスケースやエアポッズケース、カードケースなどは若い世代にささって売れ筋商品となった。人々の生活様式を理解することで、広い世代から支持を集めていけるはずだ。

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