ファッション

「カラー」が京急電車をジャックして蒲田でショー ファンタジーとリアルの交差を学生に贈る

 数年前から、「カラー(KOLOR)」大好きだ。

 理由はイロイロある。一番の理由は、“吹っ切れた“ように思えるチャレンジ・スピリットがデザイナーズブランドらしいから。5年ほど前だろうか?「カラー」は、古着の解体を思わせる脱構築とハイブリッドの要素を強め、“ちょうどいい大人のブランド”から“ちょっとだけ挑戦して、新しい自分を見つけたい人のブランド”に変わったように思う。それは、簡単なようで難しい。ファンタジーとリアルのバランスは、ラグジュアリーやデザイナーズブランドにとって永遠の命題だ。リアルに傾倒し過ぎれば飽きられ、ファンタジー一辺倒ではビジネスが成り立たない。「カラー」のように、ファンタジーにシフトしてビジネスが成長するのは、決して容易なことではない。

 楽天 ファッション ウイーク東京における、楽天による日本発のブランドの支援プロジェクト「by R」の枠組みで開催したイベントは、まさに「カラー」が絶妙に行き来するファンタジーとリアルが交差したファッションショーだった。

 会場は、貸し切った4両編成の京急車両と、その電車が品川駅を出て到着した京急蒲田駅のプラットホーム。電車が京急蒲田駅に到着するとドアが開き、パリメンズでデジタル発表した2022年春夏コレクションに身を包んだモデルが乗り込んでくる。解体したニットベストを取り付けたシルバーのドレスから、襟元だけ異素材をハイブリッドしたニットトップスまで、濃淡さまざまなグラデーションでファンタジーとリアルをミックスしたスタイルのモデルが、京急車両と京急蒲田駅のプラットホームという超リアルで日常的な空間で、ファンタジーな非日常のファッションショーを見せた。

 品川駅を出た京急車両からショーを見たのは、バイヤーやメディアの関係者。一方、京急蒲田駅のプラットホームには学生が並び、電車からホームへ、ホームから電車へとすれ違いながら移動するモデルが着る最新コレクションを楽しんだ。阿部潤一デザイナーは、前回のファッションショーでも学生を呼びたかったそうだが、今はコロナ禍。前回は残念ながら、場所の都合で叶わなかったという。

 今、「カラー」が大好きな2つ目の理由は、“じんわりアツい想い”を学生を含めた私たちにカッコよく届けてくれるからだ。

 昨年末には、名古屋のセレクトショップ「ミッドウエスト」で学生限定のセールを開いた。開催に先駆けて発信したコメントには、コロナ禍で外出もままならずオンライン授業を強いられている学生への想い、彼らには「カラー」は決して安くないという事実、だからこそ、過去のコレクションではあるがセール価格で販売したいという素直な気持ちが記されていた。「“カッコいいセール”って、できるんだ」と感心した。阿部潤一デザイナーは、「熱血‼︎」というタイプでは無いと思う。じんわりアツい。京急蒲田駅のプラットホームでパリコレブランドのクリエイションに向き合った学生には、そんな想いが伝わっただろうか?

 貸し切った京急車両は、広告まで「カラー」仕様だった。中吊りは、満員電車の風景や、疲れて眠りに落ちたオジさんのビジュアル。そして窓上には、「品川⇄⁇」や「行き19分」「帰り36分」の文字。何気ない日常生活の風景、その中で当たり前のように使う言葉なのに、カッコよく見える。窓上の広告の中には、「さぁ、行こう」「さぁ、楽しもう」そして「ここから始まる」というメッセージもあった。“じんわりアツい”メッセージを電車というリアルな空間で投げかけ、ファンタジーの世界に誘いつつ、若い世代にエールを贈る。

 やっぱり、今の「カラー」は大好きだ。

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

2022年春夏速報第二弾は、注目の3大ムードを解説 日本から唯一現地入りしたビームスのリポートも

今週号は、日本からパリコレ入りしたおそらく唯一のショップ関係者であるビームスの戸田慎グローバル戦略部長によるパリコレダイアリーからスタート。来年本格始動する海外ビジネスのために渡航した戸田部長が目にしたパリコレ、展示会、パリの街並みをお伝えしつつ、そこから感じたこと、業界人がみんなで再考・共有すべきファッションへの想いを存分に語ってもらました。トラノイやプルミエール・クラスなどの現地展示会の雰囲気…

詳細/購入はこちら