ビジネス

「倫理的」と「ぜいたく」は両立するか? エディターズレター(2021年7月16日配信分)

※この記事は2021年07月16日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

「倫理的」と「ぜいたく」は両立するか?

 いくばくか、ではありますが弊社でもボーナスが支給されました。で、自分へのご褒美に買ったのが、「トム フォード」の“トム フォード・オーシャン プラスチック・タイムピース”。SSENSEで注文したら、カナダから2日で届きました。ゴイス~、でありました。

 どうしてコレを?と聞かれたら、「トム様が言う、“倫理的なぜいたく”を体感したかったから」です。

 実際、どうだったのか?と問われたら、海洋プラスチックごみを再利用した時計は、たしかに“倫理的なぜいたく”を提供してくれました。「それって何?」と聞かれたら、まずは予想より2ランクくらい美しく、稚拙な表現ながら「ホントにコレ、ゴミからできてるんですか?」という面構え。既存品と同じデザインなので、「30万円台~だったデザインが、10万円以上も手頃に!」や「コレで、『トム フォード』の時計の付け替えストラップ(耐久性よりエレガンスを優先した、美しいのがあるんです)も楽しめる!」という満足感があります。

 そして何より、「コレは、地球に優しい」という満足感、もしかしたら優越感、少なくとも“ちょっと心地よい感”は、なかなかのバリューだな、って体感したのです。

 優越感は、どんなにキレイゴトを語っても、ラグジュアリー・ブランドが提供できる大きな価値の1つです。もちろん今も「周りより高いモノ」や「周りはまだ持っていないモノ」を「周りよりいち早く」持つは優越感の最たるものでしょうが、「周りより地球にいいモノ」を所有することも優越感になり得そうです。別に結果的に地球に良い事なら、そして、この優越感をひけらかして誰かを傷つけたりしなければ、堪能しても良い感覚ですよね?「優越感」を味わうためにラグジュアリーを買う皆様(私、その動機を否定するつもりは全くありません)、「周りより地球にいいモノ」という選択肢はいかがですか?

 そして、プラカップで冷たい飲み物を飲んじゃうときも、この時計と一緒だと、ちょっとだけ後ろめたい気持ちが軽減されました。イヤ、ホントはそれじゃダメだし、「『地球にいいモノ』を身につけながらマイボトルも持ち歩けよ!」ってハナシなのですが、どうしても難しい時もあります。そんな時、「時計は地球にいいモノだから、ゴメン!」って言う気持ちが生まれ、後ろめたさから少しだけ解放された気もするのです。

 こう言う心的充足感、自己否定しないで日々を過ごせるきっかけ、コレもラグジュアリーが提供すべきモノですよね?

 もちろん個々人において形はさまざまでしょうが、相反するように思える「倫理的」と「ぜいたく」は、たしかに共存するようです。トム様、さすがでございます。

FROM OUR INDUSTRY:ファッションとビューティ、関連する業界の注目トピックスをお届けする総合・包括的ニュースレターです。「WWDJAPAN Digital」が配信する記事から、特にプロが読むべき、最新ニュースや示唆に富むコラムなどをご紹介します。

エディターズレターとは?
「WWDJAPAN」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在8種類のテーマをお選びいただけます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

韓国ブランドの強さに迫る 空間と体験、行き渡る美意識

日本の若者の間で韓国ブランドの存在感が増しています。K- POP ブームが追い風ですが、それだけでは説明できない勢い。本特集では、アジアや世界で存在感を示すKブランドや現地の人気ショップの取材から、近年の韓国ブランドの強さの理由に迫ります。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。

メルマガ会員の登録が完了しました。