ファッション

「10 マメ クロゴウチ」展が開幕 デザイナーの故郷、長野の雪景色をイメージした展示空間をリポート

 黒河内真衣子によるファッションブランド「マメ クロゴウチ(MAME KUROGOUCHI、以下マメ)」の設立10周年を記念した初の単独展覧会「10 マメ クロゴウチ(10 Mame Kurogouchi)」が6月19日~8月15日、長野県立美術館(旧長野県信濃美術館)で開かれる。長野県は黒河内デザイナーの故郷。この4月には長野県立美術館のリニューアルオープンに合わせて、同館のスタッフユニホームのデザインを手掛けた。「ユニクロ(UNIQLO)」とのコラボレーションコレクション「ユニクロ アンド マメ クロゴウチ(UNIQLO AND MAME KUROGOUCHI)」の発売日でもあったオープン前日の18日には、報道関係者向けの内覧会を実施した。

「曲線」「刺しゅう」「夢」など
10つのキーワードで構成

 「10 マメ クロゴウチ」展は、これまで発表されたコレクションに共通する「ノート」「曲線」「刺しゅう」「長野」「色」「クラフト」「私小説」「夢」「テクスチャー」「旅」の10つのキーワードで構成。それぞれのキーワードに合わせて厳選した32ルックやデザインソース、刺しゅうの図案、同展のために制作した作品などを披露している。空間は建築家の中原崇志が担当。黒河内デザイナーが「私の長野の記憶は冬の景色が多かった。その白さや透明な空気、静寂さを空間に投影したかった。また余白の美しさはクリエーションでも常に大事にしており、会場の中でもキープしてお見せしたいと思った」と話すように、真っ白な空間で余白や間を生かした配置になった。

 展示のポスターも真っ白なデザイン。「ポスターは真っ白でも美術館が許可してくださったことに感謝。よく見ると透け感があり美しい紙で、私たちのモノ作りにおいても大事にしているテクスチャーを感じられる。見た人が『何だろう?』と想像力を掻き立てられるものにしたかった」と黒河内デザイナーは語る。7月には展示内容をまとめた作品集「10 マメ クロゴウチ」(⻘幻舎)を発売する。展示ではキャプションなどの説明などは省いており、同書が展示説明の役割を担う。

 黒河内デザイナーはこれまでの仕事を振り返って「この10年間さまざまなことを続けてこれたことに、自分自身とても勇気付けられた。私にとってデザインや洋服を作ることは大したことではない。少女のときに“お姫さまのドレスを作りたい“と思っていた頃から、そのまま30年の時が経ってしまった感覚がある。でも、その思いを保っていくことは大人には難しいことだと感じる。今後も人生の中でその純度をキープして、守っていかなければいけない。この展覧会に向けた仕事は日常のありがたさを感じるプロセスだった」と明かした。

【以下、展示内容のネタバレあり】
10年間の日記の一部を公開

 「ノート」のスペースは、これまで黒河内デザイナーがブランドデビューの2011年から21年まで書き溜めてきた360ページを公開する。モレスキンのA5ノートには、日記をはじめ、旅先のデッサンや素材のスワッチ、マインドマップなどがあり、「The Diary」をテーマに1日に1写真を撮影し、1デザインを描くことに取り組んだ19年春夏コレクションの3ルックも一緒に展示している。

 「曲線」ではアイコニックなアールカッティングが象徴的な黒いドレスを異なるシーズンから選んだ。写真家の野田祐一郎が同展のために撮影した作品も一緒に見せている。「刺しゅう」は、ボタニカルモチーフなどの有機的なモチーフのドレスとともに、元になったドローイングや工場の指示書、図案、刺しゅうサンプルをともに紹介。「長野」ではブランド初期からのアイコンであるPVC素材のバッグとヘッドピースを集めた。雪景色や氷柱などの長野が原風景となった黒河内の幼少期の記憶を元にデザインされたものだ。

工芸品や小説まで
着想源の品の数々

 「色」ではさまざまな青のトーンを使った19年秋冬のルックとともに着想源を集積している。「クラフト」は伝統技術に学び、現代の技術で新たなデザインを生み出した4ルックとヒントを得た品々を紹介。日本各地の職人たちによる道具や黒河内の実家の家紋が入った九谷焼大皿、18年秋冬のインスピレーションとなった日本の民具や工藝に美を見出したことでも有名な建築家・デザイナーのシャルロット・ペリアン(Charlotte Perriand)による展覧会書籍も展示する。

 「私小説」では作家の朝吹真理子が雑誌「新潮」で連載していた「TIMELESS」の切り抜きと、その小説世界から共鳴して生み出された17年春夏コレクションを並べている。「夢」は「Your Memory」と題した13年秋冬に、デザインの元となったビンテージ写真やデザイン画、ポストイットを壁に貼り付けている。「テクスチャー」では同展のために真っ白に再制作したアーカイブの生地、野田祐一郎による素材の写真などを紹介する。最後の「旅」では、黒河内デザイナーが撮りためてきた写真と、パウロ・コエーリョ(Paulo Coelho)による「アルケミスト - 夢を旅した少年」の物語に重ねた16年春夏コレクションもそろえている。

 黒河内デザイナーは1985年長野県生まれ。2006年に文化服装学院卒業。10年に黒河内デザイン事務所を設立し、11年春夏にブランドをスタート。14年に毎日ファッション大賞で新人賞・資生堂奨励賞を受賞。15年春夏からパリで展示会を開催。17年に「ファッション プライズ オブ トウキョウ(FASHION PRIZE OF TOKYO)」で受賞して18-19年秋冬シーズンからパリでコレクションを発表。19年にイタリアの老舗ブランド「トッズ(TOD’S)」とコラボレーション。20年3月に初の直営店を東京・世田谷の新代田にオープンした。

■10 Mame Kurogouchi
会期:6月19日~8月15日
休館日:水曜日
会場:長野県立美術館 展示室 3
住所:長野県長野市箱清水1-4-4
観覧料:一般500円、高校生以下無料、東⼭魁夷館との共通観覧料は⼀般800円

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