ファッション

一度聞いたら忘れられない「アクセル アリガト」 日本未上陸の北欧発シューズが絶好調

 スウェーデンのヨーテボリに拠点を置く「アクセル アリガト(AXEL ARIGATO)」が絶好調だ。2020年の年間売上高は前年比60%増の6000万ドル(約65億円)で、21年度は現時点で92%増にまで伸長。年末までに3桁増に達する見込みだ。直営店は欧州に旗艦店4店舗とショップインショップ6店舗で、6月にはパリのマレ地区にフランス初の旗艦店を開いた。今年後半にかけてドイツのミュンヘンやベルリン、イタリアのミラノにも旗艦店をオープンさせ、来年にはアメリカへの出店も予定している。取り扱い店舗は、欧米を中心に約250アカウントを有する。

 ベストセラーはテニスシューズの“クリーン90(Clean 90)”とランニングシューズの“マラソン ランナー(Marathon Runner)”で、価格はそれぞれ185ユーロ(約2万5000円)と240ユーロ(約3万1000円)。ウエアはオーガニックコットンのTシャツ(70ユーロ、約9300円)やフーディー(150ユーロ、約2万円)といったカジュアル衣類に加え、秋冬シーズンにはレザージャケットやコートなどのフォーマルアイテムも増やし、将来的にはウィメンズアイテムも拡充させたいという。

「アリガト」はやっぱり「ありがとう」が由来

 同ブランドはスウェーデン出身のマックス・スヴァルド(Max Svardh)とアルビン・ヨハンソン(Albin Johansson)が14年に共同で設立した。現在はスヴァルドがクリエイティブ・ディレクターを、ヨハンソンが最高経営責任者(CEO)を務める。「音楽や芸術、ユースカルチャーから影響を受けた次世代のためのスニーカーブランド」としてスタートし、17年にはアパレルの生産も開始。現在はサングラスやバッグなどのアクセサリー、子供服と雑貨もそろえる。新作の発表はシーズンごとではなく、新モデルが毎週登場する“ドロップ・オブ・ザ・ウイーク(Drop of the week)”という独自の手法を用いている。

 日本の「ありがとう」に由来するブランド名について、ヨハンソンCEOは「僕らは日本のミニマルな美学を愛し、インスピレーションを受けてきた。だから“有り難し”を意味する『ありがとう』の言葉に引かれたんだ。多くのブランドが創設者自身の名前を使っていて、少し陳腐だと感じていたしね」と説明する。一度聞いたら忘れられない響きだが、「海外では奇妙な発音だけど、会話のきっかけになるんだよね。それに日本のミニマルな美学は何世紀も前から培ってきたもので、文化や建築、デザインといったあらゆる側面で今も継承されている。僕らのブランドコンセプト“ミニマル主義”を表すにはぴったりなのさ」。

日本進出には「言葉の壁が」

 “ドロップ・オブ・ザ・ウイーク”の販売方法については、「僕らは顧客のためのブランドだから、彼らの好みや要望に常に応えたいという思いがある。新製品を毎週登場させることで、購入体験やインスピレーションを与え続けることが僕らの仕事なんだ。ときには失敗することもあるけれど、それでも実験的な制作を止めずに学び続け、顧客とともに成長しているのさ」とヨハンソンCEO。またソーシャルメディアやデジタルでの積極的な発信に加え、店頭での購買体験やコミュニケーションを通じて「コミュニティの構築も必要不可欠だ」という。そのための出店攻勢ではあるものの、パリに理想の店舗を見つけるまでに約5年間を要した。妥協することなく物件を探し続け、ようやくオープンにこぎつけた。「マレ地区はパリの中心地であり、ショッピング目的で訪れる観光客も多い。話題のレストランやバー、マルシェに花屋もありながら、地元民の生活に密着したエリアだ。ガラス張りの窓から店内の様子を一望できる開放感のある空間で、内装はギャラリーのようなデザインにこだわったんだ」。内装はコンクリートの壁面に天然石のオブジェを飾り、都会と自然の風景を融合させたようだった。

 念願のパリ出店を果たしたばかりだが、8月にはギャラリー・ライファイエット百貨店(GALERIES LAFAYETTE)オスマン本店にショップインショップを開く予定と、まだまだアクセル全開。しかし、「アリガト」の原点である日本にはまだ進出の予定はないらしい。「日本は言語の壁が厚いんだよね。僕らは顧客との対話を一番大事にしているから、焦らずに準備していくよ」。

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