サステナビリティ

“かわいい、値ごろ、サステナ”の三拍子 注目の欧州ブランド「ホルツワイラー」

 北欧を中心としたヨーロッパのコンテンポラリーブランドに勢いがある。その筆頭がコペンハーゲン・ファッション・ウイークに参加する「ホルツワイラー(HOLZWEILER)」「ガニー(GANNI)」「リクソ(RIXO)」、パリでコレクションを発表する「ナヌーシュカ(NANUSHKA)」「トム ウッド(TOM WOOD)」などだ。これらのブランドの共通点は、独自性のあるデザインと、値ごろ感があるバランスのいい価格帯、そして、環境や社会問題への取り組みを行い、透明性が高い点。それぞれのブランド哲学を持ちながらも、SNSマーケティングを強化し、ポッドキャストや動画などの新たな取り組みに挑戦するなど企業努力が感じられる。

 ノルウェー発の「ホルツワイラー」はアンドレアス(Andreas)&スザンヌ・ホルツワイラー(Susanne Holzweiler)兄妹がストールブランドとしてスタートさせた。ストールは全体の70%でラムウールやカシミヤなどのリサイクル素材を用いており、色や柄の豊かなデザインに定評がある。2014年にアンドレアスの妻マリア・スカッペル・ホルツワイラー(Maria Skappel Holzweiler)がヘッドデザイナーとして加入し、ウエアの展開を開始。SNSではジェンダーや人種の多様性にフォーカスしたキャンペーンで、社会問題へメッセージを打ち出している。

 価格は決して“安い”わけではないが、トップスが1万〜3万円、ドレスは2万〜4万円、アウターは5万〜7万円と、高価格帯のデザイナーズブランドが一緒に並ぶセレクトショップやECモールでは手に取りやすい設定になっている。「ホルツワイラー 」を買い付ける高島屋 スタイル&エディットの長尾悦美クリエイティブ・ディレクターは「プリントやファブリックがユニークで、プライスも買いやすい。ここ数年でクリエイティブがぐっと成長してきたのをランウエイやプロモーションから感じる。サステナビリティへの取り組みも先進的で、彼らの生活と、作るものが自然な流れで生み出されているので信頼できる。明るくて優しいチームの人柄も魅力」と語る。

 共同創業者のアンドレアスと、ブランドのデザイン責任者を務めるマリアにサステナビリティへの取り組みについて話を聞いた。

世界には変化が必要であり、
今後もサステナビリティが重要になっていくことは明らか

WWD:家族でブランドを運営している強みは?

アンドレアス・ホルツワイラー(以下、アンドレアス):私と妹のスザンヌは06年に会社を設立した後、両親を社員として雇用し、母はテキスタイル、父は物流部門の構築を担当しています。14年にレディ・トゥ・ウエアのコレクションを始めた際には妻のマリアがチームに加わりました。コミュニティー作りとストーリー性は私たちの大事にしている部分で、ファミリービジネスであることは、私たちのブランドの価値観に大きく影響しています。現在は70人以上の社員が“ホルツワイラー ファミリー”の一員になっています。

WWD:サステナビリティの取り組みを開始した理由は?

アンドレアス:最初のシーズンから取り組みを始めていますが、その頃から世界に変化が必要であり、今後もサステナビリティが重要になっていくことは明らかでした。通常の素材より、再生繊維を使用するほうが費用はかかりますが、私たちはウールとカシミアのリサイクル素材を70%使用することを選択しました。当初は適切なサプライヤーを見つけることは容易ではありませんでしたが、今日ではより適切な持続可能な意思決定ができるようになったと感じます。

WWD:ブランドを代表する商品であるスカーフはどのように誕生したのか?

アンドレアス:スカーフは私たちの最初の商品で、卸先がスカーフをメートル単位で購入できるようにロール状でスカーフを販売することから始めました。また早い段階からデジタルプリントの製作やアーティストとのコラボレーションにも着手。その後、ラムウールとカシミアのスカーフへと拡大していきました。

WWD:サステナビリティの取り組みはどのように推進している?

マリア・スカッペル・ホルツワイラー(以下、マリア):社内の異なる部署の人々を含めた1つのグループを作っています。シーズン毎に小さなことでも改善できるように、メンバーでサステナビリティの目標を一緒に設定しています。

常に洋服の目的を考え、“永遠”に生き続ける服を生み出していきたい

WWD:素材選びで重視していることは何ですか?

マリア:私たちは長く愛される服を作るために、時間を費やして高品質かつ持続可能な素材を選ぶことを心がけています。天然素材をなるべく多く使い、時にはシワになりにくい特性や何度洗濯しても着用しても型崩れしない素材を選ぶことがよりサステナブルということもあります。常に洋服の目的を考え、長年着用しても美しく見え、“永遠”に生き続ける服を生み出していきたいと考えています。個人的には風合いや重さを生かした素材が好きで、厚い・薄い、光沢のある・鈍い、フェミニン・マスキュリンというようなコントラストを加えるのが得意です。

WWD:デザインのインスピレーションはどのように得ている?

マリア:人々、自然、建築、アーティスト、友人、家族など私たちを取り巻く全てのものからインスピレーションを受けています。心地いいだけでなく、着用する人が強く感じられる服を作ることで他社と差別化をしたいと思っています。

WWD:新型コロナウイルスで、ブランドビジネスに影響はあったか?

アンドレアス:3月のパンデミックが始まった頃には、多くのクライアントからキャンセルがあり、3つの直営店を6週間閉店しました。その一方で、ECは急成長しています。卸ではクライアント数を減らし、より強固なパートナーとなることを選択しました。この結果、20年の前年同期比82%増。売り上げは予想より若干下がりましたが 、全体的なコスト削減によりEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)は目標を上回りました。

WWD:来日した際の日本の印象は?

アンドレアス:14年に初めて日本を訪れ、東京の街に魅了されました。お店、行き交う人々、建築などに非常に刺激を受けたことを覚えています。伊勢丹新宿本店は14年の1月にブランドを発表した際に、コレクションとスカーフを買い付けてくれた初めての卸先でした。日本は店舗スペースの運営の方法、また洋服の扱い方において、何歩か先に進んでいるように感じます。日本のファッション市場は他国とは異なり、ディテール、素材、最終の製品をしっかりと見ています。個人的には「サカイ(SACAI)」の阿部千登勢、「ビズビム(VISVIM)」の中村ヒロキの大ファンです。

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