ファッション

パリ上陸で話題の「キス」と「ドーバー」新店を調査 “ポストコレット”有力候補

 2021-22年秋冬シーズンのパリ・ファッション・ウイーク開催直前に、パリに2つのショップがオープンしました。2月26日にオープンしたのは、ロニー・ファイグ(Ronnie Fieg)が手掛ける「キス(KITH)」です。11年にニューヨークで創業すると、ブルックリンやマイアミ、ロンドン、ロサンゼルスに出店し、初のインターナショナル旗艦店として「キス トウキョウ」を昨年7月にミヤシタパークに開きました。パリの旗艦店は凱旋門から近く、17世紀にホテルとして開業した建物を改築。3階建てで総面積1万6000平方メートルと「キス」最大の規模で、東京の店よりも約2倍の広さを誇ります。メンズとウィメンズのスニーカーやウエア、下着、アクセサリー、小物、キッズウエアをそろえる物販スペースと、レストランのサデルズ(SADELLE ’S)、シリアルバーのキス トリーツ(KITH TREATS)も構えています。

優れた空間演出とMD

 フランスの衛生基準規則に従い、店内の混雑を避けるために来店はオンラインでの事前予約制です。エントランスには大理石の床と、ドーム型の天井には“エア マックス 1(AIR MAX 1)”がずらりと飾られた圧巻の光景が広がります。1階はレストランとシリアルバーの飲食スペースと、リビングルームのような空間で雑誌やオブジェを販売しています。地下が航空機のキャビンを模した展示用スペース(私が店舗を訪れた時は閉鎖中)で、2階が商品が豊富に並ぶメインフロアです。スニーカーのセレクトは「ナイキ(NIKE)」や「アディダス(ADIDAS)」、「ニューバランス(NEW BALANCE)」など他店舗と同じ王道で、コラボレーションアイテムは「アディダス」の“ガゼル クラシック コレクション(GAZELLE CLASIC COLLECTION)”、「コンバース」の“チャックテイラー 70(CHUCK TAYLOR 70)”、「ビルケンシュトック(BIRKENSTOCK)」の“アリゾナ(ARIZONA)”と“ボストン(BOSTON)”がありました。「ナイキ」とのパリ店限定シューズ”エアフォース1 ロウ パリ(AIR FORCE1 LOW PARIS)”は、トリコロールカラーのスウッシュやシュータンタグがあしらわれたデザイン。ただし即完売だったそうで、店舗にはディスプレイ用しか残っていませんでした。

 メンズウエアはオリジナルブランドのほかに「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」や「ルード(RHUDE)」、「モンクレール(MONCLER)」、「コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン(COMME DES GARCONS JUNYA WATANABE MAN)」がセレクトされています。財布やサングラスの小物コーナーには「サンローラン(SAINT LAUREN)」や「グッチ(GUCCI)」などのメゾンブランドもそろえ、ウィメンズは「ヘロン プレストン(HERON PRESTON)」や「アンブッシュ(AMBUSH)」といったニューガーズグループ(NEW GURADS GROUP)系のウエアが並んでいました。

 1階は吹き抜けで開放感のあるレストランや、空間をぜいたくに使った広々とした陳列で、まるでラグジュアリーブランドの店舗のような上質空間。ショップスタッフは、フランスでは珍しくとても丁寧な接客で(笑)、かつてコレット(COLETTE)で働いていたスタッフも数名勤めているのだとか。来店客は20代前半かさらに下の世代の男性が多く、ほとんどがショッピングバッグを持っていたので購買意欲は高いようです。コレット閉店後はパリに複数のコンセプトストアがオープンし“ポストコレット”の座を狙っていますが、私は「キス」が有力候補だと思います。ウィメンズのウエアは少ないものの、優れたマーチャンダイジングと空間作りの上手さに可能性を感じました。地元客と、今後戻ってくるであろう観光客とでどのようにコミュニティを形成し、店舗を成長させていくのか、とても楽しみです。

“リトル”でも中身は濃厚

 もう一つの新店は、2月27日にオープンした「ドーバー ストリート リトル マーケット(DOVER STREET LITTLE MARKET)」です。かつてのトレーディング ミュージアム パリ(TRADING MUSEUM PARIS)跡地で、「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」旗艦店の向かいに位置します。こじんまりした店内では、ドーバー ストリート マーケットが支援する7ブランドが取り扱われています。今季パリコレに初参加した「ウェインサント(WEINSANTO)」やアラバマ出身デザイナーによるニューヨーク発の「ヴァケラ(VAQUERA)」、カリフォルニア発の「ERL」、ベルリン拠点のDJが手掛ける「ハニー ファッキン ディジョン(HONEY FUCKING DIJON)」、シンガポールのデザイン集団「ユース イン バラクラバ(YOUTHS IN BALACLAVA)」、メキシコの「リベラル ユース ミニストリー(LIBERAL YOUTH MINISTRY)」、そしてモスクワの「ラスベート(RASSVET)」です。若手ブランドらしいエネルギーが感じられるスペースになっていて、洋服一着ずつを興味津々に見ているとあっという間に時間が過ぎていました。店舗規模は小さくとも、ほかのドーバー同様に新しい発見やアイデアを与えてくれそうです。

 同店のオープンから数日後、米「WWD」はドーバーが商業と文化を融合した新たなコミュニティスペースをパリにオープン予定だと報じ、話題になりました。場所はマレ地区の17世紀に建てられた個人邸宅で、約3万5000平方メートルという敷地の物件と賃貸契約を結んだとのこと。詳しい内容は明かされていませんが、物販フロアのほかに、イベントなどさまざまなプロジェクトが実施可能なスペースを設け、文化を育んでいきたいのだとか。パリではほかにもLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトングループ(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)が所有する老舗百貨店「サマリテーヌ(La Samaritaine)」が4月末に開業を予定しており、2024年のパリオリンピック開催を前に、商業施設やホテルのオープンラッシュが続きそうです。

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