ファッション

ビンテージを語らず、直感に投げかける 中目黒の「オーユーエーティー」が示す新しい古着店のカタチ

 「オーラリー(AURALEE)」「グラフペーパー(GRAPHPAPER)」など、国内の有力ファッションブランドが並ぶ伊勢丹新宿本店のメンズ館6階「メンズコンテンポラリー」。このほどこのフロアの一角に、ビンテージアイテムを扱う東京・中目黒のセレクトショップ「オーユーエーティー(OUAT)」がポップアップストアを開いた(会期は2月10〜16日)。並べたアイテムは同店のオリジナルブランドや1900年代中盤以降のミリタリーウエアなどを中心としたマニアックな品ぞろえ。にもかかわらず、会期中の週末(13、14日)は若者を中心とした客で賑わいを見せていた。

 「オーユーエーティー」は中目黒駅から徒歩10分ほどの奥まった立地にある古いマンションの1階に店を構える。約75平方メートルの店内にはヨーロッパのビンテージウエアとともに、それらをデザインリソースとした、店名を冠するオリジナルのユニセックスブランドを並べる。19年5月のオープンからインスタグラムのフォロワー数は1.5万まで増え、2020年7月には東京・南青山の「レショップ(L‘ECHOPPE)」でもポップアップストアを開くなど、若者を中心に一定の支持を得ている。

全てを説明しきらず
受け手に“文脈”を残す

 店頭での接客やインスタなどのSNS発信では、「ビンテージショップでありがちな、商品の歴史や目に見えない作りの良さなどの“ウンチク”には頼らないようにしている」とショップオーナー兼ブランドデザイナーの田村遼佑さん。現在31歳の田村さんが服への興味に目覚めたのが、世間が裏原ブーム(1990年代後半〜2000年代前半)に沸いていた高校生のとき。「そのころの世間のビンテージウエアの熱狂も知っているし、一方で新品よりも安価に手に入る『中古品』に手を伸ばす今の20代の感覚も分かる。僕らはその狭間の世代だからこそ、古着へのバランス感覚を生かしたビジネスをやっていきたい」と話す。

 大事にしているのは「商品を語るより、“投げ掛ける”」こと。「ビンテージを扱う人間はとにかくモノのよさや背景を説明したがるが、今の若者はもっと軽やかに服を買う。だから並べる商品も、パッと見て分かる面白みや、『なんだ、これ』という驚きを大切にしている」。ポップアップストアに並べた古着は、生地の表面感がざらざらと独特だったり、着丈や袖丈が極端に長かったりというものばかり。「現行品にはない服としての面白さや着方など、手にした後に残りの“文脈”を考える余地があるものをセレクトしている」。

オリジナルブランドは
21-22年秋冬から卸売を拡大

 併せて陳列しているオリジナルブランドの「オーユーエーティー」はそれらビンテージを着想源に、より着やすくミニマルに落とし込んだものが多い。「参照しているのは『〜年代のミリタリージャケット』みたいな“形”ではなく、『あの買い付けの時に出合った、あの服の質感』みたいな感覚的な要素」。20-21秋冬シーズンに当たる“003”のコレクションでは、ビンテージウエアによく見られる意匠である「ブランケットステッチ」を使ったカーディガン(5万円)が即完売するなど、自店販売のみの商品としてはヒット作になった。「大ぶりなステッチやカラーのコントラストなどがインスタの画像などを通じ、直感で『いい』と思ってもらえたから売れたのだと思う。服としての面白みは着ているうちに伝わればいい」。

 今回のポップアップ出店を皮切りに、21-22年秋冬からはオリジナルブランドの卸売りを本格的に拡大する。「ビンテージショップのバイヤーとしてユニークなものを見てきてきたことは(オリジナルブランドでも)強みになる。だが作り手の独りよがりにならず、受け手も欲しいと思えるデザインに落とし込むことが前提。そのバランスを探りながらビジネスを広げていきたい」。

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