ファッション

1400足を収集してきたスニーカーマニアと辿る「スニーカーの過去・現在・未来」

 数年前から巻き起こっているスニーカーブーム。しかし現在は、ブームから定着へと移行しており、少し前までの熱狂は徐々に落ち着き始めているようにも見える。そんな現状を、スニーカーマニアはどのように思っているのか?スニーカーを追い続けて20年以上、累計1400足は買ってきたというスニーカーマニアのKOBA Shunsuke氏に、スニーカーを好きになったきっかけや注目のモデル、そして今後の行く末などを聞いた。

WWD:スニーカー愛に目覚めたきっかけは?

KOBA Shunsuke(以下、KOBA):僕がスニーカーに明確に興味を持ちはじめた理由は2つあります。1つは、僕ら世代のバイブル的ファッション誌である「ブーン(Boon)」(祥伝社)で見た街中スナップです。ピーコートにモヘアのタートルネック、黒のスリムパンツに「アディダス(ADIDAS)」の“コンコルド(CONCORD)”の黒を合わせていた方のスナップがあり、単純にかっこいいなと思ったのと同時に、スポーツシューズをファッションアイテムとして明確に意識するようになりましたね。

もう1つが、マイケル・ジョーダン(Michael Jordan)と“エア ジョーダン(AIR JORDAN)”への憧れです。僕が小学生だった当時、マイケル・ジョーダン本人は全盛期で、彼と彼が履いていたシューズには本当に憧れていました。僕が中学1年生だった1994年に、“エア ジョーダン”のファーストモデルの復刻があったのですが、なんとかして手に入れようと「月刊バスケットボール」(日本文化出版)とかに載っている通販可能なショップに片っ端から電話して購入したのを覚えています。

WWD:一番最初に買った一足は?

KOBA:自分のお小遣いで一番最初に買ったのは、「アディダス」の“ガゼル(GAZELLE)”ですね。当時は“ガッツレー”と呼ばれていました。本当は“フォーミュラー1(FORMEL 1)”や“コンコルド”が欲しかったのですが、小学生のお小遣いには限界があったので(笑)。最終的にはジャミロクワイ(Jamiroquai)のJKが履いていたスウェードアッパーの“ガッツレー”を買いました。

WWD:現在は週にどのくらいのペースでスニーカーを買っているのか?

KOBA:細かくは把握していないのですが、少なくとも週に1足以上、多いと月に15足は買っていると思います。

WWD:二次流通市場で定価以上の“プレ値”となっているスニーカーを買うことはある?

KOBA:あまりないですね。例えば「ナイキ(NIKE)」の特定のモデルしか買わない、という人はプレ値でも購入するのかな、と思います。一方で僕は、特定のブランドに強いこだわりを持っているわけではない。興味があって、足を入れてみたいという動機があればなんでも動いています。逆に範囲が広すぎて制限したいくらいです(笑)。ただ、ずっと探していたモデルだったり、今買わないとさらに値上がりして入手が困難になりそうだったりするものに関しては少しプレ値が付いていても買うことはあります。

WWD:自身がフリマアプリや二次流通サイトを通じて販売することはあるのか?

KOBA:あります。基本的には、欲しいモデルを購入するためにいろいろと手を打った結果、複数購入できた場合、1足を残して売るという形ですね。フリマアプリだと楽天の「ラクマ」などをよく使っています。逆に自分が欲しいモノで、2足手に入れられそうなモデルがあっても、売るのは厳しいかも、と感じた場合は、下手に応募しまくらないようにしています。

WWD:その判断には何か基準があるのか?

KOBA:1つは経験則ですね。特にここ20年くらいは、各ブランドから新しい定番のモデルが出てきていないんですよ。「ナイキ」でも売れるのは“ジョーダン 1”とか、“エア フォース1”なんかで、ほかはコラボモデルか、著名人が履いたモノがメインになっている。見方によってはあまり面白くないとも言えます。あとは、海外の方で先行発売されているものに関しては「ストックX(STOCK X)」などで相場を見る場合もあります。

WWD:スニーカーだけでなく、服にも興味はある?

KOBA:そうですね。僕がスニーカーに興味を持ちはじめた90年代は、ビンテージが人気でありつつ、NIGOさん、高橋盾さんたちによるノーウェア(NOWHERE)や藤原ヒロシさんなどに代表される、裏原ブームも起こっていました。僕もその中で、レプリカントと呼ばれる復刻モノを買っていましたね。デニムだとエヴィス(EVIS)とかフルカウント(FULLCOUNT)とか、関西のダルチザン(D'ARTISAN)といったところのモノを古着屋でよく探していました。

WWD:服は現在もよく買っているのか?

KOBA:今はスニーカーがメインになっています。服も買うことは買いますが、基本的には品質以外は特にこだわらなくなってきているかも。普段は「ユニクロ(UNIQLO)」をよく着ていますね。それ以外だと、自分が今までずっと着ているブランドだったり、個人的にサッカーが好きなので、サッカーシャツだったりを買っています。

WWD:服やスニーカーにおいて、自分が買う基準のようなものはあるのか?

KOBA:前代未聞のコラボとかだとやはり欲しくなってしまいますね(笑)。ただ、自分が買いたいと思ったモノが、多くの人も欲しいと思うようなモノだった場合は、どのくらい購入のハードルが高いのかを知っておくようにはしています。買えそうにない第一候補を追いすぎると、第二候補のアイテムを買い逃すことにもなりかねないので。そのためにもトレンドの情報や、発売時期などは常にチェックしています。

WWD:どういったところから情報は得ているのか?

KOBA:主に2つあります。1つはインスタを中心としたSNSです。最近はリークサイトやアカウントがかなり充実してきている印象を受けます。僕がメインで見ているのは、「Sneaker Bar Detroit」と、サッカー系の情報に強い「Footy Headline」ですね。あとはブランドやショップ、そしてそれらに関わるディレクターやクリエイターの方のアカウントもチェックしています。

情報収集源のもう一つが、友人たちから寄せられる情報です。みんな同じような行動を取っていますが、それぞれ好きな分野などが違うので、お互いに情報を出し合うことで情報を濃密になるし、自分が追いきれていない範囲のことも知ることができます。

WWD:友人たちの間で注目されているモデルは?

KOBA:ここ最近だと、「ホカ オネオネ(HOKA ONEONE)」や「サロモン(SALOMON)」、「オン(ON)」の評判は良く聞きますね。「ホカ」と「サロモン」はアウトドアギアがベースにあるので、スペックがしっかりしているし、ソールのチャンキーな感じが今の雰囲気にも合っている。ファッション業界の方が率先して履いていることもあったり、「サロモン」はビームス(BEAMS)や「パレス スケートボード(PALACE SKATEBOARDS)」と、「ホカ」は「エンジニアド ガーメンツ(ENGINEERED GARMENTS)」やオープニングセレモニー(OPENING CEREMONY)などとコラボしたりして、ファッションアイテムとしての認知も広げている印象を受けています。「オン」は比較的新参ブランドですが、「ナイキ」との契約を終えたロジャー・フェデラーが製品開発のアドバイザーやマーケティングを担当しているのと、8月にドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA)で発売した”クラウドノヴァ(CLOUDNOVA)”というモデルが即完売したことから注目度は高いと思っています。

WWD:KOBAさんが個人的に注目しているモデルはある?

KOBA:僕個人は「ニューバランス(NEW BALANCE)」に注目しています。“M1300”や“992”といったヘリテージナンバーの復刻などもさることながら、昨年ごろから、パリの「ペイパーボーイ(PAPERBOY)」や吉祥寺の「アパートメント(THE APARTMENT)」、「スノーピーク」といった規模の小さな地域密着型のブランド、ショップとのコラボモデルをリリースしているのもポイントです。既存のファンだけでなく、新規のファンにも満遍なく訴求するようなマーケティングとリリースを両立しているのは純粋にすごいことだと思っています。

WWD:現在もスニーカーマーケット自体は、やはり盛り上がっているのか?

KOBA:マーケット自体は盛り上がっているのかもしれませんが、全体としてはスニーカーに対して持っている熱量の維持が難しくなっているなと感じています。特に“ハイプ”なイメージがあるスニーカーやウエアを追いかけている人たちは、転売ヤーやリセール関連の人を除くとモノを買えなくなってきている。あまりに買えなさすぎて情熱が続かないという人も多いんじゃないかなと思っています。僕も周囲の友人に気になっているブランドやモデルがあるのかを聞いたのですが、「そもそもスニーカーに対しての熱量が落ちて来ている」という意見も多かったです。

WWD:KOBAさん自身は今後もスニーカーは買い続けていく?

KOBA:正直、今のようなスタンスは年齢的にも、家庭的にも続かないのかなと思っています。でも、これだけスニーカーが好きで、ずっと動いて来たので、全く買わなくなることはないだろうし、情報を追い続けていくんだろうなとは考えています。ただ、ゆくゆくはスニーカーとの関わり方を変えていきたいですね。現在パーソナルトレーナーとしても活動する中で、お客さんの身体を見て、おすすめのスニーカーを提案することもしているので、そういった活動にも注力していきたいと考えています。

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