ファッション

スポーティな要素が加わったフレッシュな「セリーヌ」2021年春夏 異なる世代の記者が読み解く

 エディ・スリマン(Hedi Slimane)による「セリーヌ(CELINE)」は10月26日、2021年春夏コレクションを発表した。ショーはモナコのスタジアム、スタッド・ルイ・ドゥ(Stade Louis II)で撮影し配信。若い世代に希望をもってもらいたいというエディ・スリマンの思いから、コレクションはヤングジェネレーションをドキュメンタリーのように捉えた。エディ・スリマンのクリエーションを長年追いかけてきた向千鶴「WWDジャパン」編集長と、25歳の丸山瑠璃ソーシャルエディターの世代の異なる2人が対談し、それぞれの視点で今回のコレクションを読み解く。

向:ティザーでは「MONACO」の文字と併せてバレエダンサーが踊っていたり「HERMITAGE」の文字が一瞬見えたから「ん?ロシアのエルミタージュ美術館」と予測ましたが、無観客ショーの舞台はモナコ公国でしたね。

丸山:はい、会場はモナコのスタジアム、スタッド・ルイ・ドゥでした。21年春夏メンズコレクションでもF1のサーキットをランウエイにしていましたが、今回はトラックがランウエイ。青空が見える開けたロケーションは、スポーティな要素が加わったコレクションにぴったりでしたね。荘厳な建物の装飾を映したティザーから、引き続きブルジョワ的なコレクションかと思いきや、ヤングジェネレーションをドキュメンタリーのように捉えた、ということで若者にも照準を合わせたコレクションになっていて、いい意味で予想を裏切られました。

向:「HERMITAGE」はモナコの5つ星ホテルを意味していたのかな。ベルエポック様式の豪華なホテルから連想するスノッブでブルジョワなイメージは今シーズンも変わらず。そこにスポーティな要素を加えてとにかくフレッシュだった。丸山さんをはじめ、ウチの会社の20代の女子たちを見るようでした。私は“「エーランド(ALAND)」世代”(笑)と呼んでいます。お嬢様がママやパパから借りたきれいなジャケットやワンピースに、大好きな韓国ブランドやスポーツブランドを合わせているイメージです。

丸山:とてもフレッシュでしたよね!メンズではE-boysなどTikTokにいるユースにフォーカスして描写していましたが、今回はウィメンズはこれまでのブルジョワ的要素とスポーティーで健康的な西海岸ガール的要素が融合して若者から大人まで着れるような、良い落とし所を見つけてきた感じがしました。E-boysのウィメンズ版というとE-girlsですが、そこまで行き過ぎずこれまでのコレクションの流れと組み合わせても違和感のないユースのスタイルを選んでいたのがよかった。ティザーにもショーにも出ていたカイア・ガーバー(Kaia Gerber)の私服もまさにこのスタイル。カイアは本当に母でモデルのシンディ・クロフォード(Cindy Crawford)のワードローブを拝借してそうですね(笑)。

向:私はエディのクリエーションの魅力はワードローブの構成力だと思っている。ネイビーやプリンス・オブ・ウェールズのジャケット、ボウタイブラウス、クレリックシャツ、Vネックのセーターに、襟元に小さなフリルがついたワンピース。デニムとフレアパンツとプリーツスカート。そしてライダーズとトレンチコート。全部言いたくて長くなっちゃった(笑)。いつ店に行ってもこれらのスタンダードアイテムがそろっているから、ファンは少しずつ買い足してゆくイメージです。

丸山:今回はそこにジョガーパンツやアノラックなど新たなアイテムが加わっていましたね。さらにロゴ入りのキャップやバケットハット、スポーツブラ、スエットパンツなどは、若者のスタンダードアイテム。BLACKPINKのLISAのダンサー的なスタイルにもしっくりきそうです。今のユースはジャンルに縛られずヒップホップも聴くからか、BGMはプリンセス・ノキア(Princess Nokia)の「I Like Him」でした。

向:選ぶ曲は変わっても音楽の使い方は同じだね。同じ曲をループするから後半はすっかり洗脳されている(笑)。新しいアイテムでおもしろかったのがデニム。これまでデニムはスキニーかフレアーだったけど、今回は色あせた少しゆるいシルエットで「古着屋で見つけてきました!」という感じ。あえての野暮ったさがポイントかな。

丸山:私は肩からかけたストラップが短めのミニバッグが気になりました。この形のバッグは特に古着を好む海外の若者間でリバイバルしていて、ランウエイでも昨シーズンあたりからよく見かけるようになりましたね。

向:ホントよく知っているね(笑)。これまでと基本的には変わらないのにフレッシュに見える。何か違うのかな、と考えたら肌見せの仕方かな、と。“セクシー”の扱い方とも言い換えられます。ヨーロッパのブランドにとって“セクシー”は欠かせない、重要な要素。でも、胸の谷間やヒップラインの強調といったステレオタイプなセクシーの表現はもはや野暮ったい。胸の谷間ではなく、平らなお腹を見せちゃうところがエディは上手い。素足も出しているけれど健康的ですよね。

丸山:肌見せが露骨な感じではなく、とても自然でしたよね。合わせたシューズがスニーカー、ブーツ、ハイキングブーツまで全部フラットだったのも、ノンシャランに落とし込めていた要因かもしれません。ギャザーのミニドレスにもキャップとハイカットスニーカーを合わせていたり、頑張りすぎない感じ。

向:パーカーは8万円くらいになるのかな。高い(笑)。でもそこはロゴのパワーが効いている。ロゴが入ったスポーツブラは相当売れるんじゃない?

丸山:スポーツブラは絶対売れると思います!でも正直値段にもよりますよね。若者でも買えるようなエントリー価格になるといいのですが(笑)。

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

盛り上がる”スピリチュアル消費“を分析 「心に寄り添ってほしい」ニーズに向き合う

「WWDJAPAN」10月25日号は、“スピリチュアル消費”特集です。ここ1〜2年、財布の開運プロモーションや星座と連動したコスメやジュエリーの打ち出しがますます目立つようになっています。それらに取り組むファッション&ビューティ企業と、その背景にある生活者の心理を取材しました。 スピリチュアルと聞くとやや怪しさがありますが、取材を通して見えてきたのは「心に寄り添ってほしい」という女性たちの普遍的な…

詳細/購入はこちら