ファッション

NPO団体ファッションレボリューションの衝撃レポート後編

 新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るうなか、アパレルのサプライチェーンでは何が起こっているのだろうか。サプライチェーンの労働者の支援やファッション産業の透明化を目指す英国のNPOファッションレボリューション(FASHION REVOLUTION)は、新型コロナウイルスによる、目を背け難いファッション産業のサプライチェーンの現実の姿を指摘している。前編では新型コロナウイルス対策のページから、過酷な状況に置かれているサプライチェーンの現状を紹介した。後編では、 アパレル企業の対応についての各国機関からの調査報告の一例と、ファッションレボリューションが企業に送った質問に対する回答を掲載する。

 ―プライマーク(PRIMARK)は、サプライチェーンの労働者に支払うための基金を設立すると発表しているが、工場側にすでに発注された製品、もしくはすでに製造に入っているアイテムを受け入れるかどうか、その支払いを行うかどうか、またはその発注に際して工場が事前に支払った原材料のコストを補償するかどうかに関しては言及しておらず、疑問が残る。

 ―H&M、ターゲット(TARGET)、マークス&スペンサー(MARKS & SPENCER)、「ザラ(ZARA)」を擁するインディテックス(INDITEX)、キアビ(KIABI)、「カルバン クライン(KALVIN KLEIN)」や「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」を擁するPVHは、すでに完成した製品とすでに発注された製品の受け取りと支払いを行う予定であることを公式に表明しているものの、支払いの時期については明言していない。労働者への補償が急速に必要であることを考えると引き続き注視が必要。

 ―テスコ(TESCO)やウォルマート(WALMART)などを含むいくつかのブランドはまだ回答しておらず、支払いに関する対応を行ったかどうかは確認できていない。

 ―「ニュールック(NEW LOOK)」は製造中の注文をキャンセルし、支払いが「無期限」に延期されることを示唆する手紙をサプライヤーに送り、「死活問題のため」と説明したが、そのほかの多くのブランド同様に、ブランドが直接雇用していない末端の工場関係者や労働者が直面している危機には補償が及んでいない。

 ―バングラデシュ政府は4月末に500億バングラデシュタカ(約6255万円)を補助金として提供する予定。しかしこの金額は労働者の賃金を1カ月だけ支払える額であり、しかも雇用主が2%の利息で返済しなければならないローンである。

 ―インド全土でのロックダウン開始後の問題は、 出稼ぎが多いため中心部で職を失ってホームレスとなり、公共交通機関で町や村に戻ることもできない労働者が多く、飢餓が新型コロナウイルスの脅威を上回る可能性があることが分かっている。また、病院に必要な緊急物資を作り続けなければならないとして操業を続けている工場もあるが、そこでは労働者の健康が脅かされている。

 ―約4万の工場が稼働するインドのタミルナードゥ州では、 寮のような場所での生活環境により、ソーシャルディスタンスをとること自体がほぼ不可能。しかも、作業がないということはすべての労働者が同時に部屋にいることを意味し、専門家は、工場閉鎖が密集した環境をつくり出していると警告をしている。

「ザラ」はサプライヤーへの支払いを明言、各企業・団体の回答は?

・ナヅマ・アクターAWAJ財団代表(AWAJ財団:アパレルのサプライヤーの労働を守るために2003年にバングラデシュで創立された財団)

 「労働者たちは、家族でこの先どのように暮らして行くのか、まったく予想できない状況にいる。万が一新型コロナウイルスに感染して治療を必要とする場合、どうしたらよいのかさえ想像もできないだろう。労働者たちのわずかな収入は普段でさえ生活をしておくのがやっとという金額である。このような危機に対処するための貯蓄などほとんどない」

・インディテックス

 「サプライヤーと協力することを約束しており、連携しながら公式ガイダンスに従って労働者を保護している。私たちは、製造された、または現在製造中のすべての注文がもとの支払い条件に従って完全に支払われることを保証し、サプライヤーに対するすべての責任を果たす」

・LPP(「リザーブド(RESERVED)」など5つのアパレルブランドを擁するポーランドの企業)

 「このような困難な時代においては、できるだけ多くの雇用を維持することが私たちの最優先事項であり、そこには当社の従業員だけではなく、サプライヤーの従業員も含まれる。バングラデシュでは影響が特に深刻であるという情報を得ているので、困難に直面しているサプライヤーをサポートするために全力を尽くしている。 私たちが義務を果たすべき案件は最優先事項として継続的に対応しており、生産中の注文品、すでに生産された製品に関しても代金を支払う予定だ。ただし、一部の支いは遅延する可能性がある」

・英国ブランドと取引しているベトナムの縫製工場幹部からのメール回答

 「私は英国ブランドのサプライヤーのマネジングディレクターだ。私たちの会社では8つの英国の小売業者に供給をしている。その8社すべてが一夜にして支払いを停止し、私はと言えば、自社のスタッフとベトナムの工場の従業員に最後の支払いを行うためにあちこち奔走をしている。アパレル企業とサプライヤーや工場の労働者の関係は完全に崩れていると分かってはいたが、このような緊急事態においてもここまでひどい扱いを受けるとは想像だにしていなかった。私たちが交わした契約は、彼らにとっては存在していないも同然のようだ」

 ファッションレボリューションはロックダウン後のサプライヤーとサプライチェーンの労働者への対応について、世界で活動を続ける各機関の調査報告をホームページ上で掲載するとともに、彼らが大手ブランドに送った質問状の回答も掲載しており、ロックダウンの間はこれらの情報のアップデートを随時続けていくという。

Shiho Koike Stitson:アパレルの営業職、PR、スタイリストのアシスタントなどを経て2004年にバーニーズ ジャパンに入社。ウィメンズPRとしてアパレルやアクセサリーをメインに、ビューティやブライダル、インテリアまで幅広いジャンルのPRを経験し、結婚を機に同社を退職。英国に移住し、フリーランスとしてPR、通訳、コーディネーターなどをしながら目下子育てにいそしむ。出産をきっかけに興味が高まったオーガニックな物やサステナブルなことをロンドンで探究中

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