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またまたミラノ日記Vol.4 34歳ダニエル・リーの「ボッテガ・ヴェネタ」のセンスに脱帽 細くなったシルエットの理由は?

 現地報道によると、新型コロナウイルスはイタリアでも広がり、23日朝(ミラノ時間)の段階で国内の感染者数は79人に増加。国内では最大5万人を対象に自宅待機などの隔離対策が始まりました。ミラノでも、22日からはアジア人に対する人々の反応が変わってきたように思います。「ジョルジオ アルマーニ(GIRGIO ARMANI)」は感染拡大を懸念して23日夕方、2回に分けて行う予定だったショーを、無観客で開催すると決定。思うことはさまざまありますが、今は、できることをやるだけです。というコトで、ミラノ・ファッション・ウイーク4日目も張り切って参りましょう!!

9:50 サルヴァトーレ フェラガモ

 本日の朝イチは「サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)」。タイムレスとロマンチック、そしてセンシュアル(官能的)が絶妙にいりまじります。いつでも、どこでも、誰でも着られるようなチェスターコートにジャケット、デニムシャツ、ガウチョパンツ、シャツは、落ち葉のようなカラーパレット。やはりココでも、多くのスタイルは細いチェーンや共布のベルトでウエストマーク。肩から垂れ下がる布地が揺れる中で、シルエットにメリハリを与えます。今季は、ブラトップが透けるほどシアーなニットやチュールのドレスが登場し、コンサバなブランドイメージを棄却。落ち葉モチーフのシャツも、背面は、その落ち葉を組み合わせたレースのような布地で切り替え、背中を露わにします。少しドキッとするくらいです。

10:30 ボルサリーノ

 「ボルサリーノ(BORSALINO)」の展示会へ。帽子のリボンやチェーンは、取り外せばヘアアクセサリーやネックレスとしても使える優れモノ。ブランドの担当者は、「チェーンを肩にかければ、バッグみたいに持ち歩けるのよ!」と見せてくれましたが、まぁ、それはやらないかな(笑)。エントランスでは、最新の帽子を被った姿を切り絵にしてくれます。良きお土産です!!

11:50 MSGM

 「MSGM」は、1月のメンズ・コレクションに続き、イタリアのホラー映画にインスピレーションを得ました。メンズはほとんど楳図かずおでしたが(詳細は、コチラへ)、ウィメンズは黒猫や怪しげに光る蝶々など、ダークエレガンスなモチーフをプリント。マッシモ・ジョルジェッティ(Massimo Giorgetti)が得意とするフリフリのガーリーテイストとハイパーミックスです。今季は大きめのジャケット、プリーツのミニスカート、カッターシャツなど、ムードはスクールガール。そこに、黒猫を思わせるモコモコのビッグストールを肩から流し、怪しげな妙齢の女性のムードも漂わせます。

 終盤は、メタリックファブリックのトレンチコートや、スパンコールのドレスなどピッカピカ。ビビッドカラーとインパクト絶大のモチーフを怯まずハイパーミックスするスタイルはイタリアの中で唯一無二ではありますが、フリルやメタリックカラー、スクールガールテイストなど、実はトレンドも盛り沢山。というか、トレンドセッターくらいの印象であります。

 フィナーレ後のランウエイには、ヒールがコロリと転がっていました。これまたホラー!!誰かのハイヒールが、片足もげちゃったのです(笑)。よく最後まで歩けたなぁ。モデルのプロ魂を見ました(笑)!!

12:50 アニオナ

 お次は「アニオナ(AGNONA)」。サイモン・ホロウェイ(Simon Holloway)が20年ぶりに復活させたメンズも楽しみです。

 今季は、ニットが良いですね!!編み上げたニットをバイアスに使うことで、ボディコンシャスというよりは、肌を撫でるように落ちていくニットドレスは、素人でも一目で「あぁ、良い素材を使った、センスの良い洋服ですね」と思わずにはいられないエレガンス。裾にぺプラムをあしらい、ジャケットの袖口、裾からチラリと覗かせれば、近寄りがたいくらい厳かなセットアップに“気安さ”と”着やすさ”が生まれます。中盤は、カシミヤを脱色・染色せずに用いたサステナブルなパート。ここは、やっぱり1トーンコーディネイトが正解です。

 メンズは、まだブラッシュアップの余地がありますかね~。特にパンツがイマイチ。お尻周りのボリュームに対して急速にテーパードするクロップド丈は、自然体のウィメンズに対して、ちょっぴり“頑張っちゃってる”感があります。

13:45 エルマンノ シェルヴィーノ

 「エルマンノ シェルヴィーノ(ERMANNO SCERVINO)」、格段に良くなりました!!どうした?急に?前までは正直、1980年代くらいの黄金期から抜け出せてない感が強く、“出遅れた古豪組”の印象が強かったのですが、今季は力強さと繊細さのミックス加減が絶妙。モノトーンのカラーパレットに徹したのも奏功しました。お気に入りは、カッチリしたピークドラペルのチェスターコートに、プリーツを施したハイネックドレスのコーディネイト!!メチャクチャ高そうではありますが、刺しゅうで値段を釣り上げる(イタリアの古豪ブランドにありがちで、「エルマンノ シェルヴィーノ」もハマりがちでした)スタンスよりずっと好印象です。ブラックレザーのドレスにレースのハンカチーフのように複雑なカットアウトなど、1着の中で強さと儚さを同居させたアイテムもGOODです!!

 前回、こんなコラムを書きましたが、極薄ハイゲージのタートルネックを素肌にまとったルックでは、ちゃんとニプレスを付けていました。思いが通じたでしょうか(笑)?

14:10 本日も怒涛の展示会ラッシュ始まる

 ここからは、昨日同様、怒涛の展示会めぐりです。

 「ヴァレクストラ(VALEXTRA)」は、「プラン C(PLAN C)」や「スンネイ(SUNNEI)」など5つのブランドとコラボレーション。「ヴァレクストラ」自身を第6のブランドと位置付け、今年1年で6ブランドによる商品を順次ドロップする「エクストラ ミラノ」というプロジェクトを発表しました。「プラン C」は、デザイナーのカロリーナ・カスティリオーニ(Carolina Castiglioni)の娘が描いたキーアイコンを、「ヴァレクストラ」のバッグにそのままオン!!「スンネイ」は、こちらもブランドにとってアイコニックなストライク柄を異素材でバッグに描きます。気に入ったのは、「ヴァレクストラ」とミラノの中小ブランドとのコラボレーション、という図式ではなく、彼ら同様「ヴァレクストラ」自身も1ブランドとして参画するスタンス。サラ・フェレロ(Sara Ferrero)最高経営責任者は、「とってもミラノなプロジェクトだけど、卓越した(Extraoridinary)なブランドが集結したから『エクストラ ミラノ』って名付けたの」と語ります。僕のお気に入りは、「スンネイ」です。バッグ、30万円くらいかしら(笑)。貯金しようっと。

 「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」は、「エレガンスは、長い歴史、さまざまな人々、多様な文化が融合することで完成する」と考えました。シノワズリを思わせるアジアンモチーフに、西洋的なビジューを盛り込んだパンプスなどは、まさにその代表例。アジアで長年愛されてきたシノワズリ、そしてヨーロッパの人々が長らく好んでやまない装飾の融合で、「ジミー チュウ」のエレガントなパンプスが誕生する、というワケです。「『ジミー チュウ』は、一日で成らず」ですな。今季は、パールの装飾がたくさん。トレンドでもありますが、「真珠は、貝が時間をかけて育むものだから」という理由で採用しています。

 「55DSL」、復活です!!アップサイクルな商品を、「55DSL」の名前で販売するプロジェクトがスタートしました。ドゥオモにほど近い「ディーゼル」の旗艦店に行くと、そこには、「ディーゼル」の洋服をリメイクするオバちゃんがズラリ。目の前でミシンをサクサク操り、デニムブルゾンやスエット、Tシャツなどを生み出していきます。価格は、スエットで190ユーロ(2万2800円)、デニムブルゾンで450ユーロ(5万4000円)だから、「ディーゼル」としては驚くホドじゃありません。「売れ残りを、プロパーで再販するなんて」と考える人もいるかもしれませんが、一手間加えて、新たな付加価値を生み出しながらムダを削減すんですから大賛成です!!

 お次は、キラキラパンプス「レネ カオヴィラ(RENE CAOVILLA)」の展示会へ。ここでもパールのパンプス発見!!にしても、「余白があったら、とにかくビジューで埋めちゃおう!!」くらいの“覚悟”を持ったブランドですね(笑)。ご挨拶した最高経営責任者は、実にダンディでした。

16:30 チヴィディーニ

 次は、ニットブランド「チヴィディーニ(CIVIDINI)」。序盤、「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」のイントレチャートを思わせるドレス&バッグが登場したときは「ムムムッ」と思いましたが、その後は、グラデーションするモヘアのメランジュニット、手描き風のチェックを敷き詰めたベルベットのセットアップ、ハケで絵の具を塗りたくったような柄のハイゲージニットなど、「チヴィディーニ」らしく、色と柄が絶妙に混じり合う様を柔らかく表現します。ネックウォーマー的なアイテムは、ウエストに巻けばコルセット、帽子に巻けばアクセサリーに変わる優れモノです。

17:30 ボッテガ・ヴェネタ

 さぁ、その「ボッテガ・ヴェネタ」の順番がやって参りました。会場に用いた布、紙などはすべてサステナブル素材。紙をムダにしないように、と招待状はデジタル。プレスリリースもメール送信です。そういえば、今シーズンは紙のプレスリリースを受け取る回数が極端に減っています。時代ですね。そして会場には、「ボッテガ・ヴェネタ」ルックでやってきた関係者が多いこと!!“餃子クラッチ(正式には、パウチバッグですw)”、会場で20回は目撃したように思います。関係者の偏愛は、将来の人気のバロメーターでもあります。「ボッテガ・ヴェネタ」、もっともっと大きくなりそうな予感です。

 コレクションは、前回までのオーバーサイズやボックスシルエットから一変!!驚くほどリーン(細長く)、そしてシンプルです。フリンジを除けば装飾的要素は皆無に等しく、ジャケットスタイルはVゾーンからライムグリーンやフューシャピンクのインナー、それに小さなネックレスが覗くくらいです。今シーズンは、美しいシルエットの直球勝負!!コートやジャケットは、背中のレザーバンドでウエストをさらに絞り、パンツは裾にファスナーを。開ければフレア、閉じればスキニーに変身します。それにしても34歳のダニエル・リー(Daniel Lee)、この若さで、ここまで削ぎ落とした美しさを確立できるなんて!!才能はもちろんですが、どういう人生を経たら、ストリート世代がここまでエレガンスを極められるのでしょうか?

 と思い、早速バックステージへ。ダニエルは、「ネット社会の今は、全てが複雑。いつしかファッションも、大きな洋服を複雑にレイヤードするようになってしまった」と話し始めます。そこで、今回のリーンなシルエット。ダニエルはこれを「Elongate(縦に引き伸ばした)」シルエットと話し、「細長くて体にまとわりつくけれど、ストレッチが効いていてコンフォート。洋服の存在を常に感じさせつつも着る人に寄り添う姿勢は、『ボッテガ・ヴェネタ』らしい」と続けます。感動、であります。

19:30 ミッソーニ

 お次は、「ミッソーニ(MISSONI)」。カラフルニットの男女合同ショーですが、今回は、新しさを見出しづらかった印象です。いつも以上にさまざまな色と柄、それを複雑にパッチワークした洋服が登場しましたが、直前に時代を見つめた上でシルエットを大変革した「ボッテガ・ヴェネタ」を見てしまったせいか、デジタルサイネージの演出以上の“2020年らしさ”を見出すことができませんでした。

 ミラノのパワーブランドです。会場には、老若男女さまざまな「ミッソーニ」ファンが駆けつけます。中には、フーディにマルチカラーのストールを合わせた男の子、ニットパンツにスニーカーのボーイズ、ワンピースにニットで作ったガウンコートの女の子など、「ミッソーニ」のニットを自由奔放にスタイリングする人がたくさん。彼らから学べることは、多そうです。

20:40 GCDS

 本日のラストは、「GCDS」。率直に、「進化のないストリートは食傷気味だな」と自分自身の心境が数年前と大きく変わっていることに驚きました。