この勢いに続けとばかりに、1983年の誕生から40年以上経つ「アシックス ウォーキング(ASICS WALKING)」も、海外開拓に本格的に乗り出す。この1月には、世界最大級のメンズファッション展示会「ピッティ・イマージネ・ウオモ(以下、ピッティ)」へ初出展して弾みをつけた。どこか野暮ったいイメージがあるウオーキングシューズの既成概念を打破する商品・イメージ戦略で世界に踏み出す。
技術面では、アシックススポーツ工学研究所(ISS)の知見を最大限に活用している。「一般的にランニングシューズを仕事履きに使う方もいるが、実は『走る』のと『歩く』のとでは運動強度が根本的に異なるため、走行機能をそのまま転用しても最適な歩行体験は得られない。走行時には体重の3倍から5倍の衝撃が着地時にかかるのに対し、歩行時は1.5倍から2倍程度に留まるため、同じ柔らかさの素材でも反発の仕方が変わってしまう」(担当者)という。「アシックス ウォーキング」では、素材こそスポーツシューズと同じものを使用しながらも、歩行時の効率を考えた最適な設計を取り入れている。
確かな知見・技術に裏打ちされた履き心地は支持に繋がり、顧客満足度は90%を超え、リピート率も高い。「スポーツスタイル」の急成長による「アシックス」ブランドの認知拡大の恩恵も受け、世間的にはビジネスシューズ需要が減少する中でも、「アシックス ウォーキング」は右肩上がりで成長を続けている。
プロダクトの刷新とともに、これまで弱かったプロモーション面もここ2、3年ほどで大幅に強化した。25年3月に開催したギンザ シックスでのプロモーションイベントなどが代表例で、常設売り場以外での接点を作っている。今回のピッティ出展に合わせても、外国人モデルを起用したファッショナブルなビジュアルを制作し、普段履きに合わせる活用イメージを訴求した。
海外への足掛かりとなったピッティ出展は手応えも大きく、「審美眼の鋭い欧州のバイヤーから高く評価された。これまで接点の少なかった20代や30代の層がブースを多く訪れ、興味を持っていただけた」と小林社長は話す。「アシックス ウォーキング」のような本格的な機能性を備えたビジネス・ドレスシューズは、海外市場においても稀有であるという。「海外には『ビジネスシューズにラバーを貼っただけ』のような製品はあるが、スポーツの知見に基づき、ゼロから設計されたものは珍しい。これこそがわれわれの強みだ。(海外展開で先行する)『スポーツスタイル』の知名度の恩恵を受けるだけでなく、ウオーキングシューズとしての独自のプレゼンスを高めていく」(小林社長)。