アシックスは10月1日、アシックスやアシックスジャパンの社員約700人が参加する社内運動会を代々木第一体育館で開催した。同社は長らく運動会をやめていたが、昨年から社員の親睦のために再開した。東日本は東京、西日本は神戸で開催する。
廣田康人アシックス会長CEOは、開会式で「アシックスは非常に成長しています。この成長を支えてくれているのは、何より“ワンアシックス”で力を合わせて仕事をしてくれている皆さんのおかげです。今日は仕事を忘れて、思い切り楽しみましょう。そして、往年の名選手!往年のあなたと、今日のあなたは違いますからね。怪我のないよう、運動会を全力で楽しんでください」と元気よくエールを送った。
また、開会式にはスペシャルゲストとしてフェンシング日本代表の江村美咲選手と、同社とアドバイザー契約を締結した室伏広治さん(元ハンマー投げ選手、9月末までスポーツ庁長官)が登壇した。
江村選手「“サインエール”で心から応援」
今回の運動会では、日本初開催となる「東京2025デフリンピック」(11月15〜26日に開催)を社内に広めることも目的の一つだった。デフリンピックとは、聴覚障がいのあるアスリートを対象とした国際的な総合スポーツ競技大会で、「デフ(Deaf)」は英語で「耳が聞こえない」を意味している。
「東京2025デフリンピック」では、手話言語が主要言語だ。例えば「拍手」は両手を体の前に広げ、手のひら全体を左右にひらひらと動かして表現する。そこで開会式ではデフリンピックで推奨される応援方法の“サインエール”を用いた応援を実施した。
アシックスに出合うまで、“サインエール”の存在を知らなかったという江村選手は「これまでは伝える手段が限られていましたが、『心から応援している気持ちを伝えられる』と感じました。私もぜひ活用して、デフリンピックを応援したいと思います」とコメントし、社員と共に実践する様子も見られた。
アシックスは、「東京2025デフリンピック」日本選手団のオフィシャルパートナーを務めており、公式ユニホームを担当。今年からオリンピック・パラリンピック・デフリンピックの大会共通デザインで提供する。「アシックス」のアイコニックな“サンライズレッド”を基調にした公式ウエアで、開会式や式典で着用するジャージの袖には「TEAM JAPAN」のワードマークを使用している。
目隠しで声や音を頼りに挑戦するブラインドリレー!?
運動会の定番種目であるの大玉送りや綱引きだけでなく、目隠しをしてさまざまな競技に挑む「ブラインドリレー」や、恐竜の着ぐるみを着て走る「ティラノリレー」など、多彩な競技が行われた。チームはレッド・ブルー・グリーン・イエロー・ホワイトの5つに分かれて対決する。
中でも印象的だったのが「ブラインドリレー」だ。2人1組×3ペアで構成され、目隠しをして3つの種目に挑戦し、リレー形式で各チームが勝負する。ピンポン玉をスプーンに乗せて落とさずにゴールを目指す「ピンポン玉運び」、鈴の音と声を頼りにドリブルをする「ブラインドドリブル」、そして1人が目隠しをしてカラーコーンを持ち、もう1人の声の誘導で少し先のカラーコーンに重ねる「ブラインドカラーコーン」だ。
参加者は耳を頼りに、仲間の声や音を聞き分けながら競技に臨む。少し前までワイワイと熱気に包まれていた会場も、「ブラインドドリブル」では一気に静まり返っていた。障がいやデフリンピックの競技への理解を深めながらも、チームで協力し合う楽しさや熱気が一層高まっていた。
社員運動会実施の狙いについて、スポーツマーケティング統括部 パラスポーツ企画部 マネジャーの三原千咲さんは「パラリンピックの認知度は95.5%ですが、デフリンピックは38.4%と、まだ広く知られていない。『東京2025デフリンピック』のオフィシャルパートナーとして、まずはアシックス社員に大会の存在、楽しさを知ってもらいたかった」と説明。来年の実施は未定としているが、デフリンピックの魅力を知り、スポーツを通じて新たな気づきやつながりを得られた今回の運動会は、社員同士の絆を深める場となった。