
4月に発表されたトランプ関税(相互関税)は、世界を揺るがした。世界のさまざまな地域が複雑に絡み合った繊維・アパレル産業の場合、一部の変化がさざ波のようにサプライチェーン全体に影響を与える。流通するアパレル製品の輸入浸透率(下図)が100%近くになっている日本も、何らかの影響を受けるのは必至だ。その中で、頼れるパートナーとも言えるのが「繊維商社」だ。国内外に張り巡らせたサプライチェーンから新しい働き方まで、繊維商社の最前線を追った。(この記事は「WWDJAPAN」2025年6月30日号からの抜粋です)
繊維商社は「そのTシャツはどこから来たのか」の
答えを知る人たち

ジョージタウン大学の国際経済学者ピエトラ・リボリ(Pietra Rivoli)名誉教授の著書「あなたのTシャツはどこから来たのか」(2006年、東洋経済新報社)はTシャツ1枚の来歴を軸に、原料となる綿花(米国・テキサス)から紡績(中国)、最終的にはアフリカの古着市場(タンザニア)までを追跡し、世界の複雑な政治・経済を解きほぐした名著だ。確かにベテランの業界人であっても、目の前のTシャツのコストやサプライチェーンを正確に描写するのは実に難しい。だが、それができる人たちがいる。繊維商社のビジネスパーソンだ。彼/彼女らは、繊維製品を見れば、どの地域の工場で紡績され、織り/編み立てられ、縫製され、検品を経て、どの配送業者によりどういったルートでトラックや船を経由し、通関し、日本のどの倉庫を経て、店頭に並ぶかまでを一筆書きで描写できる。もし比較的安価なディズニー(DISNEY)のカットソーを持っているならば、それはタキヒヨーが手掛けた可能性が高い。タキヒヨーはSKU単位でそれらのアイテムを企画して生産して管理し、売り先である小売企業の店舗に届けている。同社が年間に扱う衣料製品は実に4500万枚に達する。だが、最大手の繊維商社の一つである豊島は、さらにその上を行き、年間1億枚もの衣料製品を扱っている。
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