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リブランディングから1年 アレキサンダー・ワンが両親・中国・ビジネスを語る

 「アレキサンダー ワン(ALEXANDER WANG)」は5月31日、2020年春夏のメンズとウィメンズのコレクションを発表する。コレクションの発表時期を、春夏を5、6月、秋冬を12月に改めて1年。その狙いは何で、結果どうなのか?来日した際に直撃した。

WWD:もうすぐロゴまで変えたリブランディングから1年が経過する。

アレキサンダー・ワン(以下、ワン):ロゴを変え、コレクションの発表時期をズラし、クリエイションの方向性にまでメスを入れることは、近年ずっと考えていたこと。常に「どう進化したら、お客さんにとってわかりやすいブランドになれるんだろう?」って考えた結果なんだ。一番タフな決断だったのは、ニューヨーク・ファッション・ウイークの公式スケジュールを離れ、5月末から6月に春夏、12月に秋冬を発表すると決めたこと。スケジュールを前倒しに、結果、生産や店頭展開も早めるのは大変だったけれど、暑くなる時期に来年の春夏、寒くなるときに翌年の秋冬を発表するのは、消費者にはわかりやすい。今のウィメンズは、秋らしくなるときに春夏、暖かくなるときに秋冬を発表するから、エンドユーザーにはわかりづらい。既存のスケジュールでコレクションを発表していた時は、毎回業界外の友人から「この前発表した洋服は、春夏なの?秋冬なの?」とか「いつになったら買えるの?」とか「春夏だと思ったら、秋冬なんだね」と言われ続けて、「みんなを混乱させてる」って思ったんだ。

WWD:たしかに消費者の多くは、「1、2月に発表する洋服は、春夏に違いない」って思うだろう。実際は秋冬だけれど。

ワン:その通り。だからまず発表時期を店頭展開と重ね、1つのコレクションを4つのパートで構成して、年に8回新商品が店頭に並ぶ体制に変更した。4つのパートでは、軽いアイテムからコートまでを一通りを揃え、秋冬はコートばっかり、春夏は軽いアイテムが大半ってならないようにしている。南半球は、北半球と季節が反対だしね。そう決意し実行した最初が去年の6月。その時が、ロゴを含むリブランディングの最高のタイミングだったんだ。

WWD:消費者にとってわかりやすいコレクションという意味では、「シー・ナウ・バイ・ナウ(See Now Buy Now)」、見て、すぐ買えるコレクションという選択肢もある。

ワン:あれは巨大ブランドでなければ難しい。かなりの店舗網を持たなければ、ショーと同時にすぐ買えるビジネスは現実的じゃなかったんだ。

WWD:でも既存のファッション・ウイークとは違うスケジュールでショーを開催してしまうと、特に海外のメディアは「アレキサンダー ワン」のショーに来なくなる。不安はなかった?

ワン:もちろん、みんなのことは考えたよ。これまでずっとブランドを支えてきてくれたからね。でも正直に言えば、僕らにはSNSがある(笑)。ランウエイショーを単なるモデルのウォーキングから進化させ一大エンターテインメントにすれば、いろんな人が、いろんなところに注目し、いろんな手法で伝えてくれる時代になった。海外のファッションメディアが減っても、イベントの発信力を低下させないことは可能なんだ。「好奇心の塊みたいな存在」って自己分析しているから、いろんなことにトライしたい。もちろん目標に到達できないことも多いけれど、そこから何かを学べれば、それは失敗じゃないよ。

アレキサンダー・ワンのメディア不要論!? “ギョーカイ人”なしのゲリラショー開催の意味は?

WWD:例えば、いつ、思った通りの結果が導けなかった?

ワン:マンハッタンでインスタでしか予告しない消費者向けのゲリラショーを終えてから、モデル全員をバスに乗せてブルックリンに移動してメディア向けに2度目のショーを開いた18年春夏は、雑誌の編集者に「何時間待たせるの!」とか「私たちより先に、一般人にコレクションを見せるの⁉︎」ってメチャクチャ怒られたよ(笑)。

WWD:あの時は、日本のメディアも怒っていた(笑)。

ワン:メディアに失礼な演出はダメなんだ、って学んだよ(笑)。でもあの時はインクルーシブに、一般のお客さんをランウエイショーの世界に巻き込みたかっただけなんだけどね。

WWD:新しいスケジュールでコレクションを発表して1年が経過したけれど、特にネガティブなインパクトはない?

ワン:ビジネスにおけるネガティブインパクトは、全くないよ。むしろ商品のデリバリーが早くなったから好転している。メディアのついては、この前の日本でのお花見のように僕が世界のあちこちを旅して、アイデアを現地のプレスに口頭で伝えればいいんじゃないかな?その方が、「アレキサンダー ワン」は単なるファッションブランドではなく、カルチャーも内包するブランドなんだっていう世界観も発信できる。東京でのイベントのようにね。

ワン:19年春夏には中国の旧正月をイメージしたパートを組み込んで、実際2月にはチャイニーズ・ニューイヤーをイメージした洋服を店頭に並べたんだ。こうすれば僕のアイデンティティーやカルチャーがブランドや洋服を通して発信できる。「『アレキサンダー ワン』は、ファッションブランドでしょ?」っていうイメージを改めることができるよね。

ワン:ちょうど桜が満開だった頃、東京で開いたイベントも同じアイデア。「中国人がお祝いする旧正月が、日本で、桜のシーズンにも続いていたら?」って考えて、旗艦店のムードを変えたんだ。

WWD:特にリブランディング以降は、自分のオリジンやアイデンティティーを意識したクリエイションにシフトしている気がする。

ワン:意識的ではなかったけれど、結果、そうなっていると思う。特に去年の6月に発表したコレクション1は、リブランディングの一発目。リセットする感覚で自分の原点を探ったんだ。その過程で両親からアメリカに移り住んだ時の話を聞いた。実は2人から同時に移住の話を聞いたのは、その時が初めてだったんだよ。

WWD:どんな話が印象に残っている?

ワン:両親がアメリカに移り住んだのは、1973年。僕が生まれるより10年以上も前の話だ。アメリカ生まれの僕と違って、彼らは英語がしゃべれなかった。だからグローサリーストアに行っても、目の前の商品が何なのかさえよくわからず、聞きたくても話ができない。いろんな困難を乗り越えて、少しずつアメリカでの生活を確立したんだ。そのストーリーは勇敢で、とても面白かった。「僕のルーツは?」を考えるきっかけになったよ。

WWD:アジア人として、ファッションの世界にアジアン・カルチャーを果敢に持ち込んでくれるのは、嬉しいことだ。

ワン:僕が注目を集めた頃は、「タクーン(THAKOON)」や「デレク ラム(DEREK LAM)」など、アジア系アメリカ人によるブランドが同時多発的に成長したタイミング。だから何度も「“アジアの時代”どう思う?」なんて聞かれ続けてきたけれど、うまく答えることができなかった。だってアジア系アメリカ人が一気に台頭した理由なんて、具体的なものは何もない。アジア系とか、そうじゃないとかは重要じゃない。単純に自分のコアだから洋服に現れる。それだけだ。

WWD:今のアメリカについては、どう思う?国籍やオリジンが、良い意味でも悪い意味でも注目されている気がするけれど。

ワン:唯一言えるのは、ネガティブな状況を悲観するのではなく、それを原動力にポジティブになりたいと思うよ。ネガティブな状況下で数少ないポジティブになれれば、皆に支持されると思うし、ブランドとして成長できるからね。

“アディダス オリジナルス バイ アレキサンダー ワン”の5シーズン目 “クラビング”がテーマの全16品を発売

WWD:「アディダス」とのコラボでは転売とか不完全とかネガティブにも聞こえる価値観に想いを馳せたり、現実を直視したりしながら、それを感覚的に「欲しい」と思わせる商品づくりやプロモーションに生かしている。

ワン:興味があるし面白いと思うのは、みんなの共通認識を大きく崩すことはせず、そこに新たな視点を加えたり、ちょっと捻ったりすること。「あぁ、知っているつもりだったけれど、そんな解釈もあるんだ」と思ってもらえることが共感を生む秘密だと思うよ。

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