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入店客分析システムが導くリアル店舗の未来とは 台湾発ベンチャーが展開するマーケティングカメラ

 リアル店舗とECを融合させたオムニコマース化が進む中、それをどのように運用していくのかが課題となっている。店舗経営における施策が必要とされている今、注目されているのが入店客分析システムだ。店舗にマーケティングカメラを設置し、ビッグデータとAI(人工知能)を活用して顧客動向を分析するというもの。日本でも開発を進めるIT企業が増えている。そんな中、台湾発のベンチャー企業スカイレック(SkyREC)が日本の小売り市場に参入し頭角をみせている。

 同社は、防犯カメラ業界で経験を積んだケイエス・モゥーイ(KS Mooi)、ケイト・シェー(Cate Xie)、ジェーダブリュー・リャオ(JW Liao)の3人が2016年に立ち上げた。社員の8割がエンジニアで、防犯カメラに多く採用されているドーム型カメラとAIを用いた店舗内の顧客動向分析システムをゼロから開発。カメラ器具の設置から、その後のコンサルティングまでトータルで監修する。

 台湾や中国、日本などのアジアやアメリカ、中東の15カ国で展開しており、現在までに約100ブランド、約2000店舗への導入実績を持つ。台湾では「ティンバーランド(TIMBERLAND)」や「キプリング(KIPLING)」のほか、日系アパレルブランド、北欧発の某インテリアメーカーなどで採用。それぞれのデータをもとに商品陳列のABテストを重ねたことで、売り上げや入店客数が総合的にアップしたという。日本では先月オープンしたばかりの某小売り大手の旗艦店に同社のマーケティングカメラが導入されている。19年4月にジャパン社を立ち上げ代理店を置き、日本での本格的な展開をスタートさせた。

AIが人に代わって分析することで
人的な負担も軽減

 スカイレックのマーケティングカメラは、主に入店客数やショーウィンドー前での滞在時間、顧客の性別、年齢の分析に加え、新客とリピーターの識別、店内の動線、顧客が実際に手を伸ばした商品の情報など細かいデータを集計する。専用システムにグラフ化された分析結果を分かりやすくまとめて表示。その結果と店舗のPOSデータを組み合わせることで店内設計やVMDの改善点を導き出すことができ、購買率や入店客数の増加に貢献する。それと同時に防犯カメラの機能も備える。AIが店舗スタッフに代わって店内状況を分析することで、効率化を図ることができる。分析に必要なカメラ台数は店舗の広さと構造によって異なるが、分析には各店舗に1台のサーバーを設置する必要がある。初期費用の目安は、一般的なサーバー導入にかかる程度だという。

 台湾のEC発メンズアパレルブランド「ライフ8(LIFE8)」の代表は、スカイレックのマーケティングカメラをリアル店舗の“グーグルアナリティクス”だと評価する。同ブランドが実店舗をオープンする際、データ解析に基づいて行っていたECの運営に対して、リアル店舗の経営では何を根拠にマーケティングを行えばよいのかが分からなくて悩んでいたという。

日本のマーケティングカメラの
普及は遅れている

 マーケティングカメラを導入する日本企業も少しずつ増えてきたが、やはり需要が高いのは中国だという。「アリババ(ALIBABA)」を筆頭にEC事業が発展しているが、最近は“コト消費”や店舗での体験が注目されている。そこに“まずは導入してから反応をみる”というビジネススタンスも加わって、話が進むのが早いそうだ。代理店のひとつであるココノスの担当者は、日本ではまずマーケティングカメラのことを企業の人たちに理解してもらうことが課題だと話す。「アパレルなどの小売り企業が本当に必要としているデータは、このカメラでそろうはず。ただ日本の企業は新しいものに慎重になる傾向がある。そこを突破することが最初の課題だ。積極的に合同展示会などに出展し、新規店舗オープンの予定がある企業を中心に訴求して、見やすい分析ツールとコンサルティングまで行うスカイレックの特徴をアピールしていく」と意気込む。また日本市場にマッチするコンサルティング内容を用意することも必要だと述べた。将来的にはRFID(ID情報を埋め込んだタグ)と融合させた総合的な分析も視野に入れる。新たな店舗経営の切り札となるか注目したい。