ファッション

「エルメス」が英でメンズイベント UTAからプライマルまで世界の著名人がインクルージョンに浸る

 「エルメス(HERMES)」は3月、英ロンドンで大規模なメンズイベント「STEP INTO THE FRAME」を開催し、世界から約1200人が訪れました。会場は旧郵便施設で、かつては郵便物の仕分けなどが行われていたそうです。飛び出すポップアップ式のカワイイ招待状を見ていい予感はしていましたが、オランダ人漫画家のヨースト・スワルテ(Joost Swarte)の世界観で構成された会場は、まさに漫画の世界に足を踏み入れるようなワクワク感。同ブランドが2019年の年間テーマとして掲げる“夢を追いかけて”を表現し、会場の外からすでに楽しすぎます!

 イベントは、19年春夏コレクションのショーからスタートしました。フロントローには英俳優のベネディクト・カンバーバッチ(Benedict Cumberbatch)や大ヒット映画「ボヘミアン・ラプソディ」でギタリストのブライアン・メイ(Brian May)を演じたグウィリム・リー(Gwilym Lee)ら豪華ゲストが並びます。そしてモデルにはアイルランドの伝説的バンドU2のベーシストであるアダム・クレイトン(Adam Clayton)や、元オアシスのリアム・ギャラガー(Liam Gallagher)の息子でモデルとして活躍するレノン・ギャラガー(Lennon Gallagher)、英国ロイヤル・バレエ団のエドワード・ワトソン(Edward Watson)、振付家のアクラム・カーン(Akram Khan)ら、英国を拠点に活躍する文化人も多数登場。日本からは俳優の本木雅弘とエッセイストの内田也哉子の長男であるUTAが登場しました。名だたる有名人の中でも堂々としていて、かっこよかった。しかし会場が最も盛り上がったのはU2でもオアシスの息子でもなく、彼がランウエイに登場した時でした。

 どこのロックスターが出てきたのかと思いましたが、大歓声の中を歩くのは、なんと英「エルメス」のバートランド・ミショー(Bertrand Michaud)=マネジング・ディレクター。照れくさそうに笑う姿を見た観客にも笑顔が連鎖し、会場は一気にハッピーなムードに包まれました。カメラを構えると、こちらにもしっかり目線をくれました。表情が最高です。コレクションは一目で上質とわかるレザーを多用しながら、全体は軽やかでスポーティー。グレイッシュなピンクやパープルにピュアなオレンジやグリーンといった色の対比が強いエネルギーを感じさせます。お祭りの一環ではあるものの、終始リラックスした雰囲気でした。

最大のサプライズはラストに待っていた!

 ショーが終わると、いよいよイベント会場がオープン。メンズの代表的アイテムである革靴やハット、バッグなど、それぞれのアイテムにフォーカスしたブースが並びます。とはいえ個々の歴史紹介やアーカイブが並ぶ博物館的な“お堅い”感じはなく、アートやユーモアを交えながら見て、聞いて、さわって、楽しい!と思わせてくれる仕掛けが満載です。だって、厳格なイメージのビスポークコーナーをリッチな“ア・ビスポーク・バー”にしちゃうんだから、素敵です。ちなみに僕は挑戦できませんでしたが、奥の“ON AIR”と書かれた小部屋に入ると、お酒をショットで飲んだ(飲まされた?)後に地面が超高速で回転し、フラフラになった状態で外に出されるそうです。小部屋から出てくる人たちはみんな興奮気味に大笑い。果敢に挑戦した日本の関係者は「あれはこのイベントで一番スゴかったわ」と語っていました。

 ほかにも巨大コミック風の立体セットにシューズを並べた“ザ・バーズ・アイ・ヴュー”や、ハットを釣る釣り堀セットで記念撮影ができる“ハット・フィッシング・ア・ガイド”、プラネタリウムを覗くとネクタイの星座が見える“ザ・タイ・オブザーバーズ”など、クラシックなアイテムの見せ方を変えて、漫画のページをめくるようなワクワク感と共に魅力を伝えていました。大行列で入れなかったレストラン“ザ・テイスティー・エディション”も、まるでコミックの世界から飛び出してきたようです!

きれいなプラネタリウム風のセットにある望遠鏡を覗くと、ネクタイの星座が見える“ザ・タイ・オブザーバーズ”

 飲んで、記念撮影して、「エルメス」の素敵なアイテムに触れて、大満足な気分で会場を後にしようとすると、エルメス ジャパンの広報から「実は、まだサプライズがあります」との耳打ちが。いやいや、こんなに素敵なコンテンツばかりだったのに、さすがにもうサプライズなんてないでしょ?と思っていました。でも、それは大間違いだったのです。時刻は夜の9時45分。突然、DJブースのあたりから大歓声が湧きます。急いでその場に向かってみると……。

 え、プライマル・スクリーム(PRIMAL SCREAM)がいるけど!56歳のフロントマン、ボビー・ギレスピー(Bobby Gillespie)がピンクのジャケットを着て目の前にいるんですけど!そこから先は興奮しすぎてよく覚えておりませんが、“Country Girl”“Swastika Eyes”“Rocks”など名曲中の名曲をばっちり披露し、英国を代表するバンドによる熱いパフォーマンスでイベントを見事に締めくくってくれました。

 「エルメス」のメンズを30年以上率いているヴェロニク・ニシャニアン(Veronique Nichanian)=アーティスティック・ディレクターは今回のイベントについて、「今、メンズウエアはとてもエキサイティングな時代になっています。だからメンズの世界観を伝えるイベントをヨーロッパで開催したかった。ロンドンはスマートで面白い都市だし、男性のファッションの色合いも好き。私がいつもコレクションに込める、クレイジーさにあふれているところもいい。ロンドンのスピリットにインスピレーションを受けて、今回のイベント開催を決めました」と話してくれました。さらに「『エルメス』のメンズは品質の高さを維持することと、ブランドのスピリットを変わりなく表現することが最も重要です。これからも自由と情熱を持ってやっていきたいですね」と続けます。

 取材前は「エルメス」のイベントということもあり、どんなラグジュアリーなパーティーになるのだろうと少し緊張していました。でも、誰でも親しみやすいコミックの世界を用いた表現やロックバンドのパフォーマンスを通じて、あらゆる世代や国の人に価値を伝えていきたいというインクルージョン(包括性)がブランドに根付いているのをしっかりと感じ取りました。今後もメンズのイベントが控えているようなので、楽しみに待ちましょう。

最新号紹介

WWD JAPAN

コロナ禍の現地取材で見えた“パリコレ”の価値 2021年春夏コレクション続報

「WWDジャパン」10月19日号は2021年春夏コレクションの続報です。コロナ禍でデジタルシフトが進んだコレクション発表ですが、ミラノとパリではそれぞれ20ブランド前後がリアルショーを開催。誰もがインターネットを通じて同じものを見られる今、リアルショーを開催することにどんな意味があるのか?私たちはリアルショーを情熱の“増幅装置”だと考え、現地取材した全19ブランドにフォーカス。それぞれの演出やクリ…

詳細/購入はこちら