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コスパ最強の革靴ブランド「レイマー」とは?

 ビジネスマンの第一印象を決めるのは、足元。ならば新年を迎えるに当たり、「良い靴でスタートを切ろう」という人も多いはず。だが店に入ったはいいものの、10万円近い値札を見れば尻込みしてしまうのではないだろうか。ただでさえ近年は原価の高騰により、海外ブランドの革靴の価格は右肩上がりが続いている。ましてや出費の多いこの年末年始、憧れの一足を手に入れることなど夢のまた夢……。そんなビジネスマンや革靴好きたちの救世主となりえるのが「レイマー(RAYMAR)」だ。

 「レイマー」は、約20年間に渡りアパレルブランド靴のOEM生産を手掛けてきたサンレイ(静岡県焼津市、大石晃・社長)オリジナルのメンズブランドで、2014年に生産・販売を開始した。立ち上げ当時は1カ月に1足売れるかどうかだったが、価格に見合わぬ品質の良さが徐々に口コミで広まり、年に1200足以上を売り上げるまでに成長した。今や生産の8割が「レイマー」だ。仕掛け人は、次男の大石裕介・営業部長。ブランド革、9分仕立てのハンドソーンウェルテッド製法、ヒドゥンチャネル……「これらの仕様は有名メーカーなら10万円近い価格になってしまうだろうが、『レイマー』は1~2万円台という驚きのロープライスで販売できる」と胸を張る。

ロスとリスクの最小化で低価格を実現

 「レイマー」は日本製、イギリス製、イタリア製といった“イイ靴のお墨付き”にはこだわらない。OEM専業時代から信頼を寄せる中国の工場には、「有名な靴ブランドでも1人いるかいないか」(大石営業部長)という靴の甲に美しいモカ縫いを施す高度な技術「スキンステッチ」を操る職人もいる。原料の納品時には、大石営業部長自ら工場に足を運び、質の良い革を厳選することで「高級靴ブランドと遜色ない革質の商品を実現できている」。また、「血筋」や「トラ」と呼ばれる革の生来の傷や模様のある部分は避けられる傾向にあるが、これらを土踏まずなど目立たない箇所に使い、革を無駄なく使う工夫を徹底している。

 実店舗への卸は行わず、ヤフーショッピング経由で工場からの直販体制をとっていることも安さの理由の一つだ。「流通コストが抑制できるというのはもちろんだが、これ(通販)が精一杯という事情もある(笑)」。というのも、製品企画からネット店舗の運営、最終検品・発送作業まで、大石営業部長が全て一人で行っているため。「レイマー」はシーズンごとに8型程度を展開しているが、ストレートチップなどの定番アイテムの他は、顧客から取ったアンケートを元にした人気モデルで構成。「売り上げのメドがある程度立てられる、いわば半受注生産型ビジネス」(大石営業部長)により売れ残りリスクを軽減している。

「安かろう悪かろう」を覆すホスピタリティー

 靴の品質だけでなく、ユーザーからの信頼度にも自信をもつ大石営業部長は、「ヤフーショッピングのコメント欄をぜひ見てほしい」と誇る。ネット販売につきものの返品は、「試着で靴に深いしわがついてしまうと致命的だし、何より返送はお客さまの手間になる」。そこで活用しているのが、靴の木型を元に手作りしているビニール製の“フィッティングツール”だ。商品の購入前にツールを客に送って試着してもらい、電話やメールでのコミュニケーションで適正サイズを探る。ツールの活用により、サイズ交換は20足に1足程度に収まっているという。そして「靴が大切なのはファーストインプレッション」という考えの下、最後はしっかりと磨き込んでから靴を送り出す。

 靴の第一印象にこだわるのは、前職での苦い経験があるからだ。大学卒業後はIT企業の営業職に就いた。父から就職祝いに贈られたのはホールカットの仕立ての良い靴だったが、「何の手入れもせず、汚れたまま出向いた営業先でめちゃくちゃ怒られた。文字通り、足元が命取りになった」という。足元に対する考えを改め、靴を新調しようとした店先では「チャーチ(CHURCH’S)」の靴に一目惚れ。だが、当時靴のために掛けられるお金は2~3万円が限度だった。「じゃあ、安くて良い靴を自分で作ればいいじゃないか」と一念発起して脱サラ、実家に戻って靴作りのノウハウを学んだ。

モノ作りの現場とともに成長

 「レイマー」の主な購買層はビジネスマンだが、高級靴を一通り経験した玄人や業界人にも支持を得ている。19年春には、ウエスト部分がシェイプし、かつ革底部分が鋭角に切り立ったビスポーク仕様を採用する3万円台の“高級”ラインをスタートする。だが、「一部の人のためのラグジュアリーではなく、あくまでいい靴を手頃な値段で提供する。いわば“靴のジェネリック”的な存在でありたい」と大石営業部長は強調する。そんなユーザーフレンドリーな「レイマー」の靴も、18年秋には一部のモデルで5000円の値上げに踏み切った。限られた人数で月300足以上を作る、中国の工場員の待遇向上のためだ。「汚い仕事、大変な仕事、儲からない仕事……そんなイメージのあるモノづくりの現場を、少しでも良い方へ変えたいと考えている」。値上げ理由をブログで真摯に説明するなど努めた結果、価格改定後も売上に影響はないという。

 今後もビジネスを肥大化させるつもりはなく、年間2000足程度の売り上げを目標とする。「たくさん作り過ぎてしまうと現場に負荷が掛かるし、品質が悪くなってしまう。少ない数をしっかりと確実に作り込む」。急成長してはいるが、靴作りの世界に入ってからわずか4年と駆け出しだ。「まだまだ靴に関しては素人で、知らない革靴の魅力をお客さまから教えてもらうことも多い。『レイマー』の靴作りや、モノづくりを次世代へつなごうという姿勢を応援してくれる皆さまの期待に応えられるよう、成長していきたい」と前を向く。