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コンビニにレストラン、配送まで、次々“無人化”する中国の小売りはどこへ向かうのか?

 中国で最も通販が売れるという11月11日(通称・独身の日)にあわせて、大手EC企業JD.comの取材のために北京を訪れた。JD.comは劉強東(リチャード・リュウ)が1998年に創業したEC企業で、現在の売上高は6兆127億円(2017年)、流通高が22兆円(同)という巨大ECモールだ。中国最大のECアリババ(ALIBABA)と異なるのはJD.comが自社物流を持つことで、この物流網を活用した店舗支援というオフライン戦略が大きな特徴となっている。

 そんなオフライン戦略を確かめようと、北京へ到着してすぐ、10日にオープンしたばかりの全工程ロボット化レストラン「京東X未来レストラン」へ向かった。北京首都国際空港から南へバスで移動すること2時間。天津に“中心生態城”と呼ばれるエコシティがある。そんな場所にJD.comが企画設計を担当する初のAIレストランが誕生した。仕組みは単純だ。スマホで注文した料理をロボットが自動で調理し、配膳ロボットが客席まで料理を運んでくれる。同社が提携するウィーチャット(we chat)ペイによって支払いもアプリで完結する、超スマートレストランだ。400平方メートル、収容人数100人の店舗だが、夕方以降は待ち客が出るほどの人気だった。

 もちろん、このレストランは完全な無人ではない。食材を準備したり、配膳ロボットを動かしたり、客のサポートをするのは人間だ。しかし、自動化できる部分を自動化することで、従業員が全体を俯瞰した仕事に注力できる環境を作りたいという狙いがある。ここはまだ実験店舗で、今後トライアンドエラーを繰り返して、無人化の仕組みを外部にも提供していく計画だという。事実、配膳ロボットが机にぶつかってしまうなどのミスはある。それでもテスト段階で店舗をオープンしてしまうあたりは、さすが中国らしい前のめりな事業だろう。日本では実験に実験を重ねて完璧なものを発表することが多いが、中国ではスタートしてからミスを修正するという気質がある。来店客も物珍しそうにロボットを見ては写真を撮っていたが、こうした新しい技術が街に溶け込んでいることを嫌がる雰囲気はみじんも感じなかった。

 そんなレストランのすぐ隣には、JD.comによる無人コンビニ「无人超市」がある。入り口ゲートにスマホアプリをかざすことで個人認証を済ませ、店内で商品をピックアップ、そのまま出口のゲートを通過すれば決済がされる。商品には全てRFIDタグが貼っており、出口で合計金額を算出しつつ、カメラによる個人特定で、誰が何を買ったのかを紐づける仕組みだ。すでに中国国内に20店舗ほど出店をしており、2018年度に500店舗まで出店を伸ばす野心的な計画。無人コンビニといえば「アマゾンゴー」を連想する人も多いだろうが、中国の無人コンビニは出店スピードがとてつもなく早い。

 また、JD.comはこの街で無人配送車の実用化を進めている。すでに十数カ所で試験運用中だが、配送ステーションから2km圏内への配送を無人配送車が行うというもので、積載荷物量は小さい配送者が6個、大きい配送車では30個。GPSとレーザーセンサー、AIによって学習しながら配送ルートを覚え、自動運行する。時速5〜6kmとかなりのんびりではあるが、今後実用化が進み、導入台数が増えれば、配送効率は一気に上がるのだそうだ。

 しかし、人がいない配送となれば「治安の悪いところでは運行できないのではないか?」とも思ったが、盗難は一度もないらしい。前述の無人コンビニでもそうだが、スマホと店内のカメラによって個人が完全に特定されているので、決して悪いことはできない。というか無人コンビニでは手に持って外に出ると決済がされるので、物理的に万引きができない仕組みになっている。加えて、中国では消費動向やデータから個人の信用度を測る「信用スコア」なるものがある。JD.comでも独自の判断基準を持っているといい、例えば店頭で何か悪いことをすると、JD.comのサイトはもちろん、決済機能まで使えなくなるようなこともあるらしい。つい最近AIによる初期診断ができる“無人クリニック”なるものまで現れた中国だが、無人化の進む街はある意味つねに個人が特定・監視された街でもあり、便利な半面、少し怖い印象も受けた。