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気鋭デザイナーのキコが敬愛する日本の“レジェンド”とは

 ロンドンを拠点に活動するキコ・コスタディノフ(Kiko Kostadinov)は、今最も勢いのある若手デザイナーの一人だ。“オタク”気質なデザイン背景と、それらをワークやテーラードといった普遍的要素と融合させるバランス感覚に優れており、モードやストリートといったカテゴリーに収まらない無二の存在感を放っている。

 セント・マーチン美術大学在学中からその高いポテンシャルに注目が集まり、卒業コレクションで「ステューシー(STUSSY)」とのコラボレーションを実現させた。16年に自身の名を冠した「キコ コスタディノフ」を立ち上げてからも、「アシックス(ASICS)」や「マッキントッシュ(MACKINTOSH)」という歴史ある企業との協業を続けている。2月には「アシックス」とのコラボレーションモデルの第2弾が東京で発売されて即完売。ドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA)では同モデルをイメージしたインスタレーションが行われ、本人も来日して話題となった。

 そんな気鋭デザイナーは「アシックス」とのコラボレーションをはじめ、現在は休刊している日本のメンズ誌「ヒュージ(HUgE)」(講談社)が好きだったり、2018-19年秋冬シーズンのランウエイショーにヘアメイクアップ・アーティストの加茂克也を起用したりと、日本との縁が深い。シャイな性格で知られているが、「アシックス」の工場を初めて訪れたことや加茂との出会いについて多弁になる姿から、日本への強い思いや仕事の充実ぶりが感じられた。

WWD:2018年春夏シーズンのランウエイショーに「アシックス」のシューズを使用していたが、コレクションのイメージをシューズにどう反映させた?

キコ・コスタディノフ(以下、キコ):18年春夏は「Manhunter」と「Lost Highway」という2つの映画から着想を得ました。作品に共通する冷たくて不吉な感じをシューズで表現するために、まずはカラーリングにこだわりました。さらにクリーンなフィルムを施したり、合成皮のPUレザーを使用したりして、ディテールでコレクションのイメージに近づけています。

WWD:デザインの特徴は?

キコ: 「アシックス」には250足以上の型があるので、まずは新しいシルエットを探すところからスタートしました。そして“ゲル ニンバス20(GEL-NIMBUS 20)”と“ゲル ベンチャー6(GEL-VENTURE 6)”というパフォーマンスタイプのモデルを組み合わせることにしたんです。“ゲル ニンバス20”の外側に付いているジェルのデザインが好きで、トレイルシューズ“ゲルベンチャー6”の分厚い素材のアッパーと融合させました。

WWD:服のデザイナーがシューズをデザインする難しさは?

キコ:特に難しいと感じたことはありません。セント・マーチン美術大学の卒業コレクションで「ドクターマーチン(DR.MARTENS)」のシューズをコンペも兼ねて作って以降、何度もシューズはデザインしています。「アシックス」には工場があり技術者もいるので、彼らと協力してモノ作りができました。

WWD:スポーツブランドのイメージが強い「アシックス」にファッションの要素をどう加えた?

キコ:「アシックス」はファッションブランドではありませんが、今はファッション業界でも履いている人はたくさんいます。だから無理にファッション感の強いデザインにする必要はありませんでした。既存の「アシックス」のファンにも気に入ってもらえるように、ミニマルに仕上げました。僕は学生時代からずっと好きだったので、2度目の協業を終えた今でも夢が実現したような感覚で、本当にうれしいんです。

WWD:契約は今後も続く?

キコ:18-19年秋冬シーズンも続きます。シーズンごとに契約を結ぶので今後何年続くかはわかりませんが、今回のシューズも即完売したみたいだし、続くといいですね。

WWD:インスタグラムで兵庫・神戸にあるアシックス本社の様子を撮影した動画を多数アップしていたが、最も印象的だったことは?

キコ:2日間かけて本社とスポーツ工学研究所を巡り、とても楽しい体験でした。「アシックス」は世界では珍しく、ラバーのソールを原料から作っています。そんな最先端のテクノロジーが見られたり、企業秘密の場所もあったりして、まるで「ナサ(NASA)」みたいな感じ。それと普段メールでやりとりしているチームに会いに行けたことはとても貴重でした。彼らが誇りを持って仕事に取り組んでいる実際に見て、多くのことを学びました。