ファッション

ロンドン・メンズデザイナー直撃第3弾 キコ・コスタディノフ 視覚的なパフォーマンスではなく機能性を求める

 ロンドン・メンズデザイナー直撃インタビュー、3人目はブルガリア出身のキコ・コスタディノフ(Kiko Kostadinov)。セント・マーチン美術大学在学中に発表した「ステューシー(STUSSY)」のカプセルコレクションを大ヒットさせ、一躍脚光を浴びた。卒業後すぐに自分のブランドを立ち上げ、その後「マッキントッシュ(MACKINTOSH)」の新ライン“0001”のクリエイティブ・ディレクターに就任した。ユニフォームやワークウエアをベースにした、構築的なディテールやパターンを得意とする彼は、新たな“シンプル”の概念を探求しているようだ。華々しいキャリアをたどる彼に実際に会ってみると、口数も少なくシャイで、とても落ち着いた印象を受ける。周囲の称賛に甘んじることなく、冷静に自らの立ち位置を見極めている様子の彼が自身のブランドについて語った。

──15歳でブルガリアからロンドンへ移り住んだが、当時からファッションやデザインに興味があった?

キコ・コスタディノフ「キコ・コスタディノフ」デザイナー(以下、キコ):ロンドンには両親の都合で引っ越してきたんだ。当初はIT関係の仕事に就いたけれど、このまま人生を過ごすのは嫌だと思っていた。そしてセント・マーチン美術大学に通っていた友人の制作の手伝いをするうちに、自分も学びたいと思うようになり入学した。

──ファッションデザイナーを目指すようになったのはいつから?

キコ:デザイナーを目指したことはないけれど、服を着ることと、服が人を変えることには昔から興味があった。“服”そのものへの興味がファッションやデザインへと導いてくれたのかな。

──在学中に発表した「ステューシー」とのカプセルコレクションは、どのように実現した?

キコ:当時アシスタントをしていたスタイリストの手伝いでリメイクしたスエットシャツを製作し、それを見たステューシーUKのマイケル・コッペルマン(Michael Koppelman)が気に入ってくれて実現した。実際に僕が愛用していたブランドではなかったけれど、だからこそ自由な感性で製作に取り組めたと思う。

──自身のブランドでは、「ステューシー」とのカプセルコレクションとは全く違う方向性で進めているように見える。「キコ・コスタディノフ」といえば“機能性”が欠かせないように思う。

キコ:“機能性”が多すぎて、1つのトレンドのように感じることもある。時代がどのように進んでも、僕が目指すのは立ち上げ当初から変わっていなくて、視覚的なパフォーマンスよりも、理にかなった根拠のあるデザインだ。

──それがブランドの美学?

キコ:そうだね。まだまだ発展段階だから、美学を語ってブランドをカテゴライズするほどではないと思っているけれど。着る人の日常にさり気なく寄り添う、ミニマルで凛としたたたずまいのウエアを作れるように努力している。

──“機能性”を向上させるにあたり、どのようなプロセスを踏んでいるか?

キコ:外出する時に必要なものを持って、どこにどんなディテールを加えればいいかを考える程度だよ。トライ・アンド・エラーで最も時間をかけるのは、カッティングやフィットのプロセスだ。

──あなたはいつも自分が作った服を着用している。それはパフォーマンスを上げるためにも重要なことだと考えているからか?

キコ:その通りだね。それに、自分が作った服を着るというのはとてもエキサイティングなんだよ。製作段階の最終決断は常に“自分自身が着たいと思うかどうか”。逆に自分の服を着ないデザイナーは、彼らが提供するものに対して正直ではないと思うよ。

──なぜウィメンズのデザインも手掛けたのか?

キコ:ウィメンズは、メンズのキャラクターを発展させる役割を担うと思ったから。女性が男性に影響を与えるように、ブランドのストーリーを語る時に大きな助けになると信じている。

──マッキントッシュの“0001”と自身のブランドと、多忙な製作に取り組んでいると思うが、着想源はどのように得ている?

キコ:それぞれのコレクションがその前のシーズンと関連性があって、全てがつながっているんだ。シーズンごとにガラリと変わるコレクションではない。日常で生まれる感情や絶えず消費される情報が、新しいデザインやアイデアとなり、最終的にコレクションとなる。最近はインスピレーションを求めてどこかに出かける時間がなくて残念だよ。ロンドン市内を散策することさえね。

──米「フォーブス」誌の「30歳以下の重要人物30人」に選ばれ、あなたの才能に多くの人が期待している。あなたが目指すゴールとは?

キコ:高い基準のプロフェッショナルなブランドでありたいという、ブランド立ち上げ当時からのゴールと同じだよ。すでにたくさんの製作に取り組んで多くを学んだけれど、今はこのレベルをさらに向上させ続けていくことが目標だ。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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