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ライブコマースのキーマンが語る「“今ここ”が生み出す個の時代」

 世界で拡大中の、スマホの動画生放送による通販“ソーシャルライブコマース”が、いよいよ日本でも本格的に立ち上がろうとしている。動画制作と配信のスタートアップ企業であるキャンディ(Candee)は昨年、F1層をターゲットにしたソーシャルライブコマース「ライブショップ!」をスタートした。先行する、デジタルネイティブ世代をターゲットにした「Cチャンネル」や「ショールーム」に加え、消費の中心であるF1層にも広がったことで、ネット通販は新たなステージを迎える。“ソーシャルライブコマース”は、一体これまでのデジタルコマースやテレビ通販とは何が違うのか。その先にある通販の新しい形とは?キーマンの2人を直撃した。

WWDジャパン(以下、WWD):キャンディとはどんな会社?

鍛治良紀キャンディ執行役員(以下、鍛治):2015年3月に創業したキャンディは、これまでに9800本をライブ配信し、モバイル動画1300本以上を企画から制作、配信までワンストップで行ってきた。昨年6月には流行のファッションやメイクをライブ配信し、気になったアイテムを視聴者が購入できるソーシャルライブコマース“ライブショップ!””をスタートした。

WWD:ソーシャルライブコマースは、同じように生放送で商品を販売するテレビ通販などと何が違うのか?

鍛治:そもそもキャンディは、ソーシャルライブ配信のプラットフォームを目指して創業し、現在まで累計で40億円を調達しています。スマホを軸にしたプラットフォームなので、双方向的でソーシャルなコミュニケーションが可能になる。なので“ライブショップ”とテレビ通販の最大の違いは、コミュニケーションの有無。ソーシャルライブコマースは“売り上げありき”ではなく、言ってみればユーザーとのコミュニケーションから生まれる熱量の先に売り上げがある、エンゲージメント(思い入れ)コマースなんです。

WWD:モデルでインフルエンサーの佐野真依子(さのまい)と組み、初のプライベートブランド「トランクエイティーエイト(TRUNC 88)」をスタートした。その理由は?

鍛治:さのまいのインスタ(@sanomaisanomai)のフォロワー数は23万人超。でも彼女と組んだのはインフルエンサーの数ではなく、ディープなファンの多さが理由。昨年12月に初開催した「トランクエイティーエイト」の展示会では、ウエアやシューズ、サングラスなどのファッションアイテムに加え、さのまいがLAで買い付けたラグやリネン、タペストリーなども並べ、ライブ配信を実施した。プライベートブランドだったら、オリジナルアイテムだけを並べればいいと思うかもしれない。でも重要なのは、“今ここ”という感覚と、“さのまい”らしさ。実際に動画の配信を始めると、ファンからの書き込みが殺到した。僕らには従来のアパレルのように、店舗やシーズンのスペースを埋めるとか、量を確保するといった発想は一切ない。ネットだから必要ないということもあるけど、無理に売ろうとすれば、ブランドと“さのまい”本人を疲弊させるだけ。一番重要なのは、さのまいとファンたちが楽しめることなんです。

WWD:とにかくインフルエンサーとファンを楽しませることが重要だ、と?

鍛治:そうです。なのでさのまいの役割はファッションブランドのディレクターというよりは、ライフスタイルプロデューサーに近い。「トランクエイティーエイト」のアイテムはアパレルに限らず、彼女が作りたい物。もしかしたら、物ですらないかもしれない。彼女が旅に興味があれば、旅行会社と組んだパッケージツアーでもなんでもいい。オリジナルアイテムとオリジナルコンテンツの掛け算が、「トランクエイティーエイト」の魅力になるので。