ファッション

情報収集の効率化で、“憧れ”を失くした私たち

 「WWDジャパン」2000号が11月6日に発売された。1979年の創刊から現在に至るまで、39年分のファッションニュース、時代を象徴するコレクションなど過去を振り返りつつ、現代のデザイナーや経営者たちのインタビューを掲載し、ファッションの未来を探る特大版だ。そこで「WWD JAPAN.com」では2000号の制作に携わったスタッフのコラムを不定期連載としてお届け。この号の編集を通して未来を見つめた、老(?)若男女幅広いスタッフたちの気付きや意見に、くみ取っていただける何かがあればさいわいだ。

 「WWDジャパン」が2000号を迎えるにあたり、僕たち入社1年目は、2年目の先輩社員と共に発売の4カ月ほど前から「WWDジャパン」39年分のアーカイブを元にファッション業界の歴史を振り返ってきました。僕が担当した90年代後半から2000年代前半にかけては、インターネットがPCだけではなく、携帯電話からも接続可能になった時期でした。僕は当時7歳。短パンで田舎道を走り回っていた僕が、東京でファッションに携わる仕事をしているとはなんだか感慨深いです。

 ”デジタルネイティブ”と呼ばれる、学生時代からインターネット環境が当たり前に身近にあった僕たちには この出来事にあんまりピンとこないかもしれません。しかし、インターネット接続サービスが開始された当時の、「手のひらから起こるIT革命」という見出しから何か新しい事が起こるという期待と高揚感が伝わってきます。この年代を境にアーカイブや2000号の振り返り年表に"EC"や"オンライン"といったワードが頻出してきます。インターネットが人々の生活に浸透してきたと同時に、ファッションと密接に交わり始めた年代とも言えるのではないでしょうか。

 また、僕が振り返りを担当した90年代後半から00年前半、安室奈美恵や木村拓哉が社会現象を起こしました。ドラマや公の場で着用した服が飛ぶように売れたのです。当時、三陽商会がまだ「バーバリー・ブルーレーベル(BURBERRY BLUE REBEL)」のライセンスを保持していた頃、安室奈美恵が結婚会見で着用していた同ブランドの代名詞、“バーバリー・チェック”のプリーツスカートが爆発的な人気となりました。テレビと個人の持つ影響力も今の比でなかったことが伺えます。そんな芸能人の服装に、憧れて真似るファン、"◯◯ラー"と呼ばれる人々。芸能人をファッションアイコンとして見ること、ましてや服装をそっくり真似ることは僕にとっては新鮮でした。

 皆が同じ方向を目指していた当時のファッションシーンって凄く面白いなと。僕がファッション業界を志した時には、すでにこのような社会的ブームは収束していました。性別やジャンルの垣根を超えて自由なファッションを楽しむ今のシーンで、流行りの物事を追うことはあっても、一個人の服装自体がここまで大きなブームになることはこの先ないんじゃないでしょうか。僕は憧れの人の服装を真似る"◯◯ラー"に対して、一途に追いかける一本気を感じると同時に、このようなブームに熱狂できた当時の人々を羨ましくも思います。

 「IT革命」から17年が経過しファッションも昔と比べてずいぶん多様化しました。ことファッションに関してはインターネットはテレビや雑誌より早く、そして多くの情報が簡単に手に入ります。検索ツールやSNSは、自分の趣味、嗜好に合わせてユーザーへ関連性の高いコンテンツを提供をしてくるようになりました。

 入社1年目の僕には、このファッション業界は常に新鮮な空気に満ちているように感じます。沢山の物に囲まれている現代だからこそ、自ら知ろうとする姿勢が必要だと改めて気付かされます。口を開けて待っていれば無数の情報が入ってくる”情報収集の効率化”した現代だからこそ自らの足で探し、目で見て、知ることが若い世代には必要なのだと思います。「WWDジャパン」2000号ではインターネットが普及していなかった70〜80年代のファッションニュースも掲載しています。きっとネットでも見つけられない貴重な情報です。是非お手にとってお確かめ下さい。


最新号紹介

WWD JAPAN

模索する東コレ21年春夏 デジタル×リアルの突破口

「WWDジャパン」11月2日号は、2021年春夏「楽天 ファッション ウィーク東京」特集です。世界が直面するリアル×デジタルという課題、そして東コレに漂う停滞ムードの打破が期待される中、冠スポンサーの楽天が新たな支援プログラム「バイアール」をスタート。支援対象となった「ダブレット」と「ファセッタズム」はどんなショーを行ったのか、デジタルをどう掛け合わせたのか、どのようにメディアを巻き込んだのか。こ…

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