ファッション

新生「ウンナナクール」れもんらいふの千原徹也に聞く刷新術

 誕生して15年を迎えたワコール(WACOAL)傘下の「ウンナナクール(UNE NANA COOL)」が今春、リブランディングをスタートした。それを手掛けるのは、アート・ディレクターとしてさまざまな分野で活躍するれもんらいふ(LEMONLIFE)の千原徹也(TETSUYA CHIHARA)。「女の子、登場」をテーマに、キービジュアルをはじめ、ロゴや店舗、販促も刷新していく。全体のリブランディングのディレクションを手掛ける千原にリブランディングおよび、今後の活動について聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):「ウンナナクール」のリブランディングを手掛けることになった経緯は?

千原徹也(以下、千原):ワコールでは昨年「ブラジェニック(BRAGENIC)」のディレクションを手掛けた。昨年春から京都で開催している、れもんらいふ塾(千原をはじめ、クリエイティブの第一線で活躍する講師陣によるデザイン塾)をウンナナクールの社員が受講していた。「ウンナナクール」のリブランディングを予定しているということで、オリエンに参加し、プレゼンテーションの仕込みを始めた。

WWD:プレゼン後、企画が通ったのはなぜだと思うか?

千原:このブランドは過去15年間、デザイン会社のドラフトが手掛けていて、揺るがないものがあった。今回のリブランディングでコンセプトから刷新し、新しい「ウンナナクール」を作っていくというプロジェクトだ。店舗デザインや商品開発にかんしても全てディレクションする。それに対してコンセプトをはじめ、全て線でつながるようにした。それが説得力になったのだと思う。今までいろんな事を手掛けてきたが、「これが代表作」というものがなかった。今年4月同社社長に就任する塚本昇ウンナナクール販売部長と話す機会があり、「15年かけて、れもんらいふの代表作にしてほしい」と言われ、意気投合した。

WWD:コピー&コンセプト作りは川上未映子と行ったのは?

千原:オリエンを受けた際に、川上さんを起用したいと思った。なぜなら、彼女とは、これまでも、いくつか仕事を一緒にしていた。さまざまなブランドともコラボしていて、ファンも多い。「女の子、登場」というコンセプトが生まれ、強いメッセージ性を持たせることで、デザインに関して意思統一ができると思った。
店舗のフィッティングルームにも川上さんの言葉を施す。5種類あるので、店舗によって少しずつ違うものになるはずだ。

WWD:「ウンナナクール」のコンセプトはどのように変化したか?

千原:もともと「ウンナナクール」とは「ちょっとカッコいい女の子」という意味。女の子を応援するという定義は以前と同じだが、女の子のアイデンティティーにフォーカスした。女の子というと、控えめで従順という価値観がまだ残っている。シンデレラや白雪姫は、いつも王子に助けられるというストーリーで、結局男性に依存しており、結果、男がヒーロー的なもの。そうではなく、新生「ウンナナクール」では、女の子自身が持つアイデンティティーをサポートしていく。

WWD:フランス人のシンガーソングライターのぺティート・メラーをキービジュアルに使用したのは?

千原:周囲の若いスタッフが「ぺティートかわいい」と言っていたので、何となく覚えていた。たまたま昨年秋、パリ・ファッション・ウイークの「サカイ(SACAI)」のショーで真ん前に彼女が座っていた。マネジャーが日本人ということもあり、すぐに声をかけた。撮影場所は成長する女の子のいる場として、ロッカールームを選んだ。今までのビジュアルは、イメージに合う外国人モデルを採用していたが、今後は、異なるアイデンティティーを持ったモデルを起用していく。例えば、今回はシンガーソングライター、次回は女優といったように。国籍にはこだわらず、日本人が登場する可能性もある。

WWD:店舗やショッパーにドットが使用されているが?

千原:女の子のアイデンティティーを卵とし、それをドットで表現している。店舗はその卵が集合する場所であり、育てる場所。ドットの中には、横向きの女の子をモチーフにした “孵化する卵”が潜んでいる。これがブランドマークでイラストレーターのエドツワキさんにお願いした。

WWD:「ウンナナクール」としての新しい取り組みは?

千原:今までしたことのない雑誌とのタイアップを行った。動画配信やインスタグラムなどSNSも初めての取り組みだ。フォトグラファーの伊藤彰紀さんやヘアメイクの奈良裕也さんなど、スタッフもアイデンティティーのある人を起用し、積極的に拡散していきたい。このプロジェクトで一緒に組む人の個性を引き出し、まとめるのが、れもんらいふらしいと思う。れもんらいふ塾では、「ウンナナクール」とコラボで「SNSで拡散するPR戦略」というワークショップを行った。最終選考はワコール本社で行い、「うななみくじ」を制作したチームが優勝した。これは、インスタグラム投稿が、タグを使ったおみくじになっており、おみくじには女の子を応援するメッセージが込められているといったもので、実際にツールとして活用する予定だ。

WWD:このプロジェクト以外の予定は?

千原:音楽関連が多い。3月18日にスタートする山下達郎のツアーのステージ背景のデザインをしている。「クリスマスイヴ」のマッピングを犬童一心監督と手掛ける。他、音楽業界大御所のニューアルバムのジャケットなども同時進行で行っている。板野友美の2017年度オフィシャルカレンダーも手掛け、3月25日に発売予定だ。

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