ファッション

「オニツカタイガー新宿店」が仕掛けるラグジュアリー戦略 体験価値を届けるために世界最大店オープン

オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)」は7月10日、新宿三丁目に世界最大となるグローバルフラッグシップストア(以下、新宿店)をオープンした。売り場面積は1837平方メートルの4フロア構成からなる同店はシューズはもちろん、アパレルやバッグ、フレグランス、フォーマルライン「ジ オニツカ(THE ONITSUKA)」まで、ブランドの全カテゴリーをそろえ、国内外の顧客に向けてブランドの世界観を発信する拠点となる。

アシックスは新会社OTグループを設立して、来年1月に「オニツカタイガー」を分社化し意思決定のスピードを高めながら、グローバルで独自のブランド価値を築くフェーズへと踏み出す。その象徴となるのが新宿店であり、ブランドの未来像を体験として提示する“ショーケース”の役割を担う。

「買う場所」から「ブランドを体験する場所」へ

近年、ファッションブランドは店舗を販売拠点ではなく、ブランドとの接点を生み出す体験空間へと進化させてきた。「オニツカタイガー新宿店」も、その流れを色濃く反映している。最大の特徴は、ブランド初となるアミューズメントエリアの設置だ。M2階には90年代のゲームセンターを思わせる“スペースインベーダー”や“スーパーストリートファイター2”、“メタルスラッグ”といったビデオゲーム筐体、プリクラやフリースローゲームで遊べるエンターテインメント空間を用意し、ショッピング以外の目的でも立ち寄れる店舗を目指す。従来の「買い物をする場所」という枠組みを超え、ブランドとの接触時間を伸ばす設計は、SNSでの発信や訪日客の回遊も意識している。他のフロアも階ごとに素材や色彩を変え、日本のクラフツマンシップとイタリアンデザインを融合させながら、ブランドのヘリテージから現在、そして未来へと続くストーリーを空間で表現している。来店者は商品だけでなく、建築そのものを通してブランドを体験することができる。

シューズだけでなくトータルファッションを
コンセプトごとに分かれたフロアで紹介

「オニツカタイガー」は近年、ミラノ・ファッションウィークでコレクションを発表し、ファッションブランドとしてのポジションを強化してきた。新宿店は、その取り組みをリアルな売り場へ落とし込んだ空間と言えるだろう。従来、ブランドの入口だった定番スニーカー以外にもコレクションラインやフォーマルシューズまで一堂に集約することで、顧客との接点を足元からライフスタイル全体へと広げようとしているが、本店舗構成からもブランドの変化が読み取れる。

ブランドカラーであるイエローとブラックを基調に構成された1階にはコンテンポラリーラインのアパレルやフレグランスが並ぶ。圧倒的なサイズのウォールシューケースには異なる99点のアイテムが並び、その世界観を一望できる。2階には「ニッポン・メイド(NIPPON MADE)」や「ジ オニツカ」、国産デニムの「デニヴィータ(DENIVITA)」など、クラフツマンシップを発揮したアイテムが並ぶ。鉄腕アトムとのコラボレーションアイテムなど期間限定商品もこの階で購入できる。3階には日本の美学をコンセプトにヘリテージラインを配置。不朽のモデル“メキシコ 66”の圧巻のカラーバリエーションと共に、各種スニーカーがフロアに鎮座する。

「新宿」という立地の世界最大店が示す成長戦略

世界最大店の立地に新宿を選んだことにも戦略的な意味がある。新宿は世界有数のターミナル駅であり、国内外から膨大な人流が集まるエリアだ。ルミネエスト新宿や伊勢丹新宿店内の店舗を含め、新宿エリアは計5店舗体制となる。大型旗艦店を中心に複数店舗を配置することで、目的や客層に応じた回遊を促す。ECが成熟し、商品だけならオンラインでも購入できる時代だからこそ、世界最大店に求められるのは「ここでしか得られない体験」である。ゲームや空間演出、建築、全カテゴリーの集積によってブランドへの没入感を生み出し、その体験がSNSや口コミを通じて世界へ広がっていく。新宿店は、店舗を「ブランド価値を増幅するメディア」として打ち出す、「オニツカタイガー」の新たなリテール戦略を体現した施設であり、ブランドが目指す「シューズブランド」から「ファッションブランド」への進化の道筋そのものを体現していく。

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