人口減少と需要の成熟、原材料や人件費の高騰、さらには消費やモノに対する価値観の変化—日本のアパレル業界は今、複合的な難局に直面している。こうした状況を打開するヒントを探るべく、デジタル戦略のエキスパートで、アパレル企業の変革支援を行う藤原義昭300Bridge代表取締役による連載(全5回)を届ける。本当に原因は外部環境なのか?第2回はKPI転換の必要性を説く。(この記事は「WWDJAPAN」2026年5月25日号からの抜粋です)
経営会議の資料で出る数字は、たいてい決まっていませんか?
売上高、前年比、新規客数、来店数、客単価。どれも大切な数字です。しかし、これらは全て「結果指標」であって、顧客との関係の質を測るものではありません。
売り上げが前年を上回っていれば、経営は健全なのでしょうか。新規客数が増えていれば、ブランドは強くなっているのでしょうか。答えは、必ずしもイエスではありません。値下げで売り上げを作り、広告で新規客を取り続けているだけなら、ブランドは知らない間に痩せていきます。数字は伸びているのに、現場は疲弊し、粗利は削られ、在庫は膨らむ。これを多くの経営者が感じているはずです。
今求められているのは、売り上げを追う経営から、LTV(顧客生涯価値)を追う経営への転換です。1人の顧客が、どれだけの期間、どれだけの頻度で、どれだけの額を使ってくれるか。その総量こそが、ブランドの体力を映し出す指標なのだと思います。
この転換が難しいのは、LTVという指標が「自社の数字を知らないと、意味を持たない」からで、業界平均のLTVを見ても、何も決まらない。自社の顧客構造が今、どうなっているか。そして、その数字が改善したとき、自社の利益はどう変わるのか。この計算を経営会議で持っている企業は、驚くほど少ないのが実情です。
業界平均を追いかけることは、他社のベンチマークを気にすることであって、自社の経営を設計することではありません。数字を「見る」のと「読む」のは、違う行為なのです。
マーケティングの3つの経験則が、教えてくれること
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