生成AIの進化により、検索や購買の起点がAIへと移行し始め、 企業は今大きな転換点に立たされている。AIがレコメンドするようになり、ウェブ上でのショッピングは大きな転換点を迎えているが、リアル店舗に変革は起きるのか?デジタル戦略のエキスパートである藤原義昭300Bridge代表取締役が、AIレコメンド時代を見据えた、企業が打つべき次の一手を語る。(この記事は「WWDJAPAN」2026年3月16日号からの抜粋です)
前回は、AI時代に企業がまずやるべきこととして、「AIを導入すること」ではなく「AIレディーになること」が重要だという話をしました。商品スペックだけではなく、顧客の文脈データやコンテンツを持ち、それをAIが読み取れる形で整理していくことが企業の競争力になるという話です。
キーワードは「クワイエットテクノロジー」
今回はその続きとして、「AI時代の店の役割」についてお話ししたいと思います。結論から言うと、AIが進化すればするほど、リアルの店舗や人との接点の価値はむしろ上がると思っています。これは1月に、米国最大のリテールイベント、NRF(National Retail Federation)を視察して改めて感じたことでもあります。
NRFでは、AIやデータ、リテールテックの話が数多く語られていましたが、LVMHの登壇者のスピーチで出てきた「クワイエットテクノロジー(Quiet Technology)」という言葉が特に印象的でした。
これは、テクノロジーはしっかり使うけれど、それを顧客には強く意識させないという考え方です。つまり、裏側ではAIやデータがフルに動いている。でも顧客の体験としては、あくまで自然で心地よいサービスとして感じられる状態を作るということです。
AIは接客する人の強い“武器”になる
AIを導入するというのは、スタッフに強い“武器”を渡すことでもあります。AIは顧客のパターンを学習することが得意です。購買履歴や閲覧履歴、興味関心などのデータを基に、「この人にはこういう提案が合いそうだ」というサジェスチョンを出すことができます。その情報をスタッフが接客のベースとして活用できるようになるのは間違いないと思います。
その顧客の360度をカバーするコンシェルジュのようなこともできるようになります。例えばハンドバッグのブランドショップであっても、顧客の要望に応じて、飛行機のチケットの手配なども店員がサポートできるようになります。そうやって顧客の生活全体を理解した上で、自社の商品を継続的に買ってもらうストーリーが作れるようになるんです。
また、普通の販売スタッフがその購買情報を覚えていられる顧客の数は、多くても10人くらいです。しかし、AIがアシストすれば、100人とちゃんと対話できるようになります。
人との関係を築くのは、人
ただし、そこで重要になるのは「接客中にどう使うか」です。顧客体験というのは360度で成り立っています。いくらAIが最適な提案を出してくれても、店の空間やスタッフの振る舞い、言葉のトーンが合っていなければ、顧客は心地よく感じません。
例えば店舗でスタッフがスマートフォンを見ながら接客する場面を想像してみてください。情報を確認するためにスマホを使うこと自体は合理的です。でも顧客からすると「ずっとスマホを見ている店員」という印象になる可能性もあります。
だからAIを使う時代は、テクノロジーの導入だけではなく、店舗の振る舞いやオペレーションまで含めて体験設計を考える必要があります。
例えばアップルストアでは、スタッフがデバイスを使っていても違和感がありません。でも高級ブランド店で同じ振る舞いをされたら、顧客は不快に感じるかもしれない。この差は、ブランドの世界観や体験設計の違いだと思います。
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