2022年に日本展開をリスタートした「バブアー(BARBOUR)」が好調だ。マッシュホールディングスが100%出資するバブアー パートナーズ ジャパン(濱田博人社長)が同年8月に独占販売権を取得。百貨店やファッションビルでの積極的な出店と並行して、男性中心に固着していたブランドイメージを刷新し、これまで接点の薄かった20〜30代女性の取り込みに成功している。9月18日には原宿キャットストリートに世界有数規模の旗艦店をオープンする。濱田社長に「バブアー」事業の現状と今後の戦略を聞いた。
「バブアー」は現在、国内で百貨店を中心に18店舗(原宿の新店を含む)を展開。売上構成は直営と卸でほぼ半々で、セール比率は全体の5%程度に抑えている。好調の要因は、20〜30代の顧客獲得、特に女性比率の上昇にある。女性の売り上げは「倍増ペース」で推移し、直近では全体の4割程度を占める。秋冬はオイルドアウターを求める男性の購買が強いものの、春夏はすでに女性が優勢に転じている。
週末に「バブアー」でお出掛け
体験施策でもイメージ訴求
女性客の拡大には、ライフスタイル提案の強化が寄与している。“ウィークエンド・カジュアル”をキーワードに、平日はオフィスで働き、週末はフェスや海、街歩きやデートを楽しむ女性像を想定。化繊素材の軽量アウターやTシャツ、キャップ、アクセサリーを積極的に展開し、MD全体の約2割を日本側で企画している。「APACの中でも日本は突出して伸びており、インバウンド需要も強い。本国も日本の声を重視してくれる。日本で売れた商品が本国インラインに逆輸入的に取り込まれることもある」と濱田社長は語る。
体験型施策でも新しい世界観を打ち出す。湘南・七里ヶ浜では3月から長期ポップアップを展開中。フェスやビーチを意識したショーツやTシャツ、キャップをそろえ、海を眺めながらコーヒーを楽しめるカフェを併設する。そのほか、7月にはJ-WAVE主催の音楽フェス「INSPIRE TOKYO 2025」にも出店した。
アウターの売れ筋は
短丈、非ワックス
アウターの売れ筋にも変化がある。定番の“ビデイル”“ビューフォート”に代わり、現在は“スペイ”や“トランスポート”といったショート丈が売上の7割を占める。「ビデイル」はオーバーサイズの派生型が人気だ。かつてからの代名詞であるオイルドコットンだけでなく、日本ではノンワックスも主流に。ナイロンやドライタッチのコットンが好調で、ショーツと合わせたスタイリングも支持される。「若い人は『いい意味で』ブランドイメージがない方々が多く、ライダースジャケットの代わりに羽織ってくださる。40〜50代は短丈に新鮮さを感じ、久々に再購入される方もいる」と分析する。
直営店の中でも成功モデルは代官山路面店。「当初は年商2億円を想定していたが、現在は倍以上。カップルやインバウンドの来店が目立ち、若い女性グループが『旅行前に1人1着』とまとめ買いするケースもある」という。
9月に開業する原宿キャットストリート店は2層約260平方メートルで、アジア旗艦として本国が「エナジーストア」と定義する店舗だ。ユニセックス展開に加え、1階ではバッグや雑貨を主役に配置。キャットストリートにちなむキャラクター「バブアーキャット」の限定商品も用意し、新客やインバウンド獲得を狙う。数年内には単店で年商10億円を目指す。
「若い人にブランドの価値を伝えるという信念を社内外に浸透させ、結果が出るまでやり抜くのは本当に大変だった。女性に支持されるマッシュグループのバックボーンと、近藤(広幸マッシュホールディングス社長)のマーケットを見る目に支えられた部分も大きい」。8月は猛暑にもかかわらず、盆明けからアウターが動き始めた。「秋冬の女性需要をさらに取り込むことがブランドの課題であり、さらなる伸びしろでもある」と濱田社長は前を見据える。