アダストリアが物流改革に本腰を入れている。2023年に竣工した常総物流センター(茨城県常総市)は最先端のロボットを導入するなど自動化に取り組み、物流効率を最大60%向上させた。また新設した西宮北物流センター(兵庫県神戸市)をきょう8月1日から動かす。アダストリアは30年度に連結売上高目標4000億円(24年度実績は2931億円)を掲げており、その規模を支えるバリューチェーンを整備する。
縦横無尽に動く仕分けロボット
無数の黄色い小型ロボットが縦横無尽に走り回り、荷台に乗せた服を段ボールに収めていく――。
常総物流センターの仕分け作業で、中国メーカーLibiao製の小型ロボット「t-Sort」120台がきびきびと働く光景は圧巻だ。Tシャツ、ワンピース、パンツなど国内800店舗ごとに一点一点仕分ける。多い日には7万着の商品がここから全国に出荷される。
今年6月から常総物流センターでの自動化が本格稼働した。スタッフの人力に頼っていた頃と比べ、現場の仕事は劇的に変わった。
アダストリアの物流子会社アダストリア・ロジスティクスの大塚健志社長は「仕分けから出荷に至る作業は、生産性が60%、キャパシティーが40%も向上した」と胸を張る。この場合の生産性は1時間にさばける服の点数、キャパシティーは1日の出荷量を意味する。「t-Sort」の導入自体は今では決して珍しくないものの、アパレルで国内3位の規模を誇るアダストリアによる自動化はアパレル企業として日本最大規模となる。
「モノの方がスタッフのところにやって来る」
物流センターの作業は、入荷、保管、ピッキング、仕分け、出荷に大きく分けられる。
入荷と保管も自動化によって様変わりした。中国メーカーのハイクロボット社のコンテナ移載ロボット「CTU」を100台導入した。海外の縫製工場から入荷された商品がCTUによって高さ5.5mの棚に保管されていく。人力で出し入れしていた頃は、人間の背丈に合わせて棚が作られていたので、保管量も大幅に増えた。「CTU」はスタッフがいない夜間にも動く。翌朝にスタッフが出勤すると、ピッキングの準備が整っている寸法だ。
大塚社長は「保管でも仕分けでもこれまではスタッフがモノを動かす格好だったが、自動化によってモノの方がスタッフのところにやって来るようになった」と話す。スタッフの人材確保が難しくなることを踏まえ、オペレーションを効率的に回せるようにする。
アダストリアは物流センターの自動化とともに、再編を進めている。24年7月に水戸の拠点を閉鎖し、今月にも福岡の拠点を閉鎖する。水戸の機能は常総など関東の4拠点で吸収する。福岡の機能は今月稼働する西宮北が担う。常総での知見を生かし、西宮北も来年夏には自動化を本格化させる見通しだ。さらに27年7月には自社EC「アンドエスティ(and ST)」専用の新しい物流センターも開く。特に「アンドエスティ」は自社ブランドだけでなく、他社ブランドにも開放するオープン化を推進する。30年度にはGMV(流通総額)1000億円に拡大させる方針を打ち出しており、出荷能力の拡大に動く。