「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」「ヴェルサーチェ(VERSACE)」「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」の親会社カプリ ホールディングス(CAPRI HOLDINGS以下、カプリ)の2025年3月期決算は、売上高が前期比14.1%減の44億4200万ドル(約6307億円)、営業損失は前年の2億4100万ドル(約342億円)から7億5200万ドル(約1067億円)に、純損失は同じく2億2900万ドル(約325億円)から11億7900万ドル(約1674億円)に拡大した。
ブランド別の売上高では、主力の「マイケル・コース」が同14.4%減の30億1600万ドル(約4282億円)、「ヴェルサーチェ」は同20.3%減の8億2100万ドル(約1165億円)、「ジミー チュウ」は同2.1%減の6億500万ドル(約859億円)と、いずれのブランドも減収だった。なお、同社は25年4月、「ヴェルサーチェ」をプラダ グループ(PRADA GROUP)に売却している。
「ヴェルサーチェ」売却の背景
ここ数年、業績が芳しくなかったカプリは23年8月、「コーチ(COACH)」などを傘下に持つタペストリー(TAPESTRY)に85億ドル(約1兆2070億円)で事業を売却することに合意した。しかし、両社が保有するブランド間の競争がなくなることで独占状態になるとし、米連邦取引委員会(FTC)が介入したことから、24年11月に取引は白紙に。自力での業績回復を余儀なくされたカプリは、「マイケル・コース」の再建に注力するべく、「ヴェルサーチェ」と「ジミー チュウ」の売却に本格的に着手。買い手の有力候補として浮上していたプラダ グループが、前述の通り、25年4月に「ヴェルサーチェ」を13億7500万ドル(約1952億円)で買収した。取引は25年下半期中に完了する予定。
なお、当初は「ジミー チュウ」もプラダ グループが獲得して後日売却するのではないかとの臆測が流れていたが、それは実現しなかった。情報筋によれば、「ジミー チュウ」の共同創業者で、11年にブランドを離れたタマラ・メロン(Tamara Mellon)が買収に関心を示しているという。
25年度の見通しは?
ジョン・アイドル(John Idol)会長兼最高経営責任者(CEO)は、アナリスト向けの決算説明会で、「ヴェルサーチェ」の売却によって債務が減るなど財務状況が改善し、将来的には自社株買いによる株主還元も検討していると語った。「マイケル・コース」の再建策としては、店舗の統廃合や卸先の整理を推進しているほか、今後3年で半数程度の店舗を「モダンでぬくもりのあるレジデンス」のような雰囲気に改装する予定だという。また、3月には米アマゾン(AMAZON)に公式オンラインストアをオープンした。
なお、「ヴェルサーチェ」を含まない25年度の売上高は全体で33億~34億ドル(約4686億〜4828億円)と、24年度と比べて10億ドル(約1420億円)程度減少する見込み。内訳は「マイケル・コース」が27億5000万~28億5000万ドル(約3905億〜4047億円)、「ジミー チュウ」は5億4000万~5億5000万ドル(約766億〜781億円)。
トランプ関税の影響について
ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領政権による関税引き上げの影響について、トーマス・エドワーズ(Thomas Edwards)最高財務兼最高執行責任者(CFO兼COO)は、「『マイケル・コース』は生産の大半をベトナム、カンボジア、インドネシアで行っているため、影響は比較的小さい」と説明。また、サプライチェーンを調整し、さらなるコスト削減に取り組むと話した。なお、およそ8年前にカプリに加わった同氏は、「ヴェルサーチェ」や「ジミー チュウ」の買収および買収後の社内システム統合などを先導。しかし6月にはカプリを離れ、米百貨店メイシーズ(MACY'S)のCFO兼COOに就任することが明らかとなっている。